山あいの傾斜地に広がる棚茶畑が美しい静岡茶発祥の地、足久保。歴史ある茶畑を守る活動を行いながら、新たなお茶の楽しみ方を提案し続ける「足久保ティーワークス」をLEXUS IS350とともに訪ねた。

山あいの傾斜地に広がる棚茶畑が美しい静岡茶発祥の地、足久保。歴史ある茶畑を守る活動を行いながら、新たなお茶の楽しみ方を提案し続ける「足久保ティーワークス」をLEXUS IS350とともに訪ねた。

棚茶畑の風景広がる足久保へ、鎌倉時代から続く緑茶を求めて

東京から高速で2時間、新東名・新静岡スマートICから5分ほど進むとすぐに茶畑が広がる山里にたどり着く。山あいの土地を利用した階段状の棚茶畑が並ぶ足久保は、日本のマチュピチュとも称される場所だ。曲がりくねった細い道を、LEXUS IS350はスムーズに走りを進める。スポーツセダンならではのエンジンレスポンスの良さ、ドライバーの意図を的確に捉える操縦性。高速道路走行時は力強くなめらかに、山あいの細い道ではブレのない安定感を発揮し、その乗り味はシーンが移り変わるごとにドライバーの気分を高揚させる。

棚茶畑が続く道を進むLEXUS IS350。新茶の季節、鮮やかなグリーンが日に照らされ輝いている

静岡市葵区足久保は、安倍川の支流である足久保川の流域に位置している。約800年前、駿河に生まれた禅僧の聖一国師が修行先の中国から持ち帰ったお茶の種を足久保で栽培したのが静岡茶の始まりだとされている。

足久保ティーワークス茶農業協同組合は、1997年に足久保の茶農家50軒が集まって発足した。高齢化や担い手不足によって茶畑が減少する危機にあるなかで、歴史ある足久保茶を絶やさず受け継ぎ、これからも発展していくために中堅農家が若手農家に育成や改植などを教えることで若い後継者の育成にも力を入れている。

組合では足久保のお茶をより多くの人に楽しんでもらうため、さまざまな活動を行っている。製茶工場前のカフェ「TEAWORKS CAFÉ」も、もっとお茶に親しんでほしいという気持ちからつくられた場所だ。こだわりの茶葉を贅沢に使った煎茶フローズンや抹茶フローズン、夏はブルーベリーや白桃、冬は柑橘類など季節のフルーツを使った鮮やかなドリンクをテイクアウトできる。茶畑前に設置された広々としたウッドテラスに座って飲むお茶は、格別のおいしさ。季節限定の茶氷もSNSなどで話題になっているようだ。

茶畑前のテラスに座ってのんびりお茶を。緑に囲まれて過ごす至福のひととき

足久保茶の継続を応援する、茶畑オーナー制度

お話を伺った足久保ティーワークスの石川茜氏は、小売り担当として店舗運営、オンラインショップ、SNS発信、茶畑オーナー制度などをまとめる、組合の広報的存在。奈良県出身で、結婚を機に静岡に移住した石川氏は、静岡出身のお母様がいれるお茶を飲んで育ったという。「たまたま母が静岡茶を切らした時に、適当なお茶を飲んだら味の違いに驚いて、今までおいしいお茶を飲んでいたことに気づきました」と静岡茶の特別なおいしさを実感した思い出を話す。静岡に移り住んではじめに就職したのがお茶屋さん。日本茶インストラクターの資格も取得し、お茶を学ぶ中で「静岡茶のおいしさを、茶畑に近いところから伝えたいと思い、自分と同世代の人々が頑張っている足久保ティーワークスの門を叩きました」

「TEAWORKS CAFÉ」では、各種ドリンクのテイクアウト、緑茶や和紅茶の販売もしている。足久保ティーワークスの石川茜氏(左)とカフェ担当の宇野明日真氏(右)

足久保ティーワークスが茶畑を守るために発足した「茶畑オーナー制度」の取り組みについても伺った。「近年、茶農家さんたちが茶畑を手放すスピード、担い手の減少がますます加速しています。これからも、地域の根幹産業として持続可能なお茶生産を続けるために、直接消費者とつながる方法が必要だと考え、足久保ティーワークスのお茶のファンづくりに取り組むことにしました」と話す。茶畑オーナー制度を発足することで、足久保茶のファンに応援を募り、オーナーとなった人たちがお茶に親しむ機会を得て、さらに茶畑に愛着を持ってもらえるという仕組みだ。

ティーワークスには、個人の農家さんが管理する茶畑と、ティーワークス全体で管理・所有している茶畑がある。ティーワークス全体で管理している茶畑から、オーナー制度にふさわしい場所を2カ所選定して、「茶畑オーナー制度」がスタートした。

「1畝(うね。お茶の木が並んでいる1列を1畝という)につき、5〜10人がオーナーとなっています。出資いただいたお金は、茶園管理の経費として足久保ティーワークスの活動を支える目的で使わせていただきます」と石川氏。オーナー特典としては、オーナー認定証の発行、茶畑への名前の掲示、年4回のお茶のお届け、茶摘み体験などのプログラムへの参加など。自分が支援した茶畑のお茶を、通年で飲めて、さらにお茶と触れ合うチャンスが増えるという魅力的な内容だ。

お茶を知らなかった若い人たちにも気軽に楽しんでもらいたい

足久保ティーワークス工場長の加藤貴彦氏は、若手生産者でもある。「祖父の代からの茶農家です。祖父が80代後半になって作業が思うように進まなくなってきたときに、このまま茶畑がなくなってしまうのは寂しいと思い、お茶づくりを始めることを決心しました」という。山が好きできこりの仕事をしたのちに28歳で入ったお茶の世界。しかし、現実は厳しかった。

足久保ティーワークスの若手生産者であり、工場長の加藤貴彦氏

「お茶を守っていきたいけれど、その気持ちとは裏腹に茶の市場価値が下がってきています。今までの売り方だけではなく、お茶を知らなかった若い人たちにも知ってもらうべきだと感じました」と、従来の方法ではいけないと痛感した加藤氏は、足久保ティーワークスの若手メンバーたちとともに、次々と新たなことに挑戦する。

「まず、足久保に住む知人のデザイナーに新しくロゴデザインの制作を依頼し、足久保ティーワークスのお茶のパッケージを一新しました。そして、コーヒーを飲むような感覚で気軽に立ち寄れるスタンドが作りたいという気持ちで工場前にカフェを開き、フローズンなど新しいメニューを増やしています。日本茶だけではなく、和紅茶を作ってみたり、イベントに出店してみたり。どうやったらもっとお茶がみなさんの身近な存在になれるのか、を仲間たちと常に模索しています」と加藤氏。

志を同じくする足久保ティーワークスの若い仲間たちと一緒に、アイデアを出し合って次世代へと足久保茶を広げていく。カフェやベント出店、オンラインショップや茶畑オーナー制度などお客様と直に接することができる機会を増やすことで、少しずつ新たなお客様が増えているそうだ。

足久保茶がなぜ特別においしいのか、とたずねると「足久保は日照時間が短く、朝夕の寒暖差が年平均で11.5度あります。お茶が育つのに最適な、夏涼しくて冬暖かい山あいの気候が、緑茶が持つ程よい苦味とコクを引き出してくれるのです」と加藤氏。「朝靄が立ちやすい地形なので、茶畑の上に天然の覆いができて、味が濃く香り高いお茶が育ちます」

製造への並々ならぬこだわりも。「製造工程で最も重要だとされる蒸し工程には専属の茶師をつけ、色、香り、葉の柔らかさなどを常にチェックしながら細かな調整を行っています。蒸した後の粗揉みの工程では必要最小限の風で茶葉を乾かし、しっとりとした風合いに揉んでいくことで艶のあるおいしいお茶に仕上がります」と話す。

新茶の季節、工場は多忙を極める。新芽を摘み、蒸し、揉む。全ての工程を丁寧かつ細やかに行うことで、今年も香り高いお茶が生み出されている

1694年5月、かの松尾芭蕉が駿河を訪れて「駿河路や花橘も茶の匂ひ(駿河路はさすがに茶どころ。香り高い橘の花でさえ、お茶の匂いにはかなわない)」と詠んだ。芭蕉が見たであろう足久保の茶畑を眺め、遥かな時の流れを感じる。

「TEAWORKS CAFÉ」で買ったドリンクとともに、足久保周辺をドライブ
山里の風景を進むLEXUS IS。緑に溶け込み、静寂の中をスムーズに走り抜ける心地よさ

足久保ティーワークスを後にして、足久保の奥の方へと走りを進めていく。山あいの風景、細い道。茶畑と青々とした新緑に囲まれながらのドライブは、心に清々しい風を運んでくれる。フロントガラスから広がる風景に癒やされながら、山間部へと進んだところに、古民家レストラン「音吉」がある。おいしいとろろ料理と絶品デザートが食べられる、と遠方から足を運ぶ客も多いそうだ。

古民家を改装した店は、窓から見える石垣の風景が圧巻。現代では見られない職人技が光る昔の建具や高い天井の梁、庭の白壁の蔵など、古さを生かした和モダンな空間に入るとタイムスリップしたような気分になる。ここでいただけるお茶は、足久保ティーワークスのお茶。香り高い緑茶と、体に優しい和の味。足久保の旅にかかせないスポットになりそうだ。

鎌倉時代から続く棚茶畑。歴史あるお茶を守りながら、新たな価値を見いだし広めようと進化し続けている足久保の若き茶農家たち。一杯のおいしいお茶があれば、人との間にあたたかな時間が流れることを気づかせてくれた今回の足久保ドライブ。コーヒーを飲むときとは違う、日本人だからこそ感じる豊かさとはこういうことか。目の前に広がる茶畑で採れたお茶を堪能しながら受け継がれていくお茶づくりの文化を考える。

江戸城への御用茶として献上され、徳川家御用達の高級ブランド茶として歴史に名を刻む足久保のお茶。朝靄が立ち込める奇跡のような茶畑の風景のなか、伝統と革新が生み出す香りに包まれる旅となった。

■足久保ティーワークス
https://www.ashikuboteaworks.com/

■古民家カフェ音吉
https://www.instagram.com/kominka_otokichi/?hl=ja

Text and Edit by Eri KoizumiPhotographs by Maruo Kono