蓼科には、食事をするためだけにわざわざ訪れたい本格派オーベルジュがある。この土地でしか出合えないジビエや信州食材を使った料理が味わえる「オーベルジュ・エスポワール」は宿泊もできるので、クルマで行ってもワインとともにゆっくりと食事が楽しめる。LEXUS ISで訪ね、シェフ藤木徳彦氏にジビエの真髄を聞いた。

蓼科には、食事をするためだけにわざわざ訪れたい本格派オーベルジュがある。この土地でしか出合えないジビエや信州食材を使った料理が味わえる「オーベルジュ・エスポワール」は宿泊もできるので、クルマで行ってもワインとともにゆっくりと食事が楽しめる。LEXUS ISで訪ね、シェフ藤木徳彦氏にジビエの真髄を聞いた。

大自然を望むワインディングロードでスポーティな走りを堪能

首都圏からクルマで約3時間でアクセスできる蓼科は、高原リゾート地としても人気のエリア。明治以降多くの文化人が別荘を構え、愛されてきた場所だ。北八ヶ岳を横断するメルヘン街道は、蓼科高原から佐久穂町を結ぶ全長38kmのドライブコース。美しい大自然と山々を望むワインディングロードが魅力で、全国からドライバーたちが集まる憧れのコース。秘境の温泉街が点在する奥蓼科温泉など立ち寄りスポットも多い。

御射鹿池を背景に軽快な走りをみせるIS
路面の悪い峠道でもサスペンションが上手にストロークして、なめらかな走りをかなえてくれる

ISが高原のワインディングロードを爽快に駆け抜ける。走り出しの加速感が期待を高め、コーナーを思い通りに曲がるスポーティな走りは運転の楽しさを味わわせてくれる。

東山魁夷の名画「緑響く」の舞台となった御射鹿池

静かな車内、木々を風が抜ける音や鳥のさえずりを楽しみながら、東山魁夷の名画「緑響く」の舞台となった御射鹿池へ。標高1500m付近にひっそりとたたずむ池の水面には木々の緑が鏡のように映り込み、まさに絵になる絶景だ。

感銘を受けたフランスのオーベルジュ

森の中のオーベルジュとスポーティで颯爽としたスタイルのIS

高原を抜け、今回の目的地「オーベルジュ・エスポワール」へと向かう。レストランに宿泊施設がついたフランス発祥のオーベルジュというスタイルは、日本ではまだまだ少なく、また本来のオーベルジュの姿である“その土地の食材を料理する”ことを大切にする店としては先駆け的存在だといえる。オーナーシェフの藤木徳彦氏に、オーベルジュをオープンするまでの道のりを伺った。

オーナーシェフの藤木徳彦氏

藤木氏が子ども時代を過ごしたのは東京。「母はジーンズショップを営み、父はジーンズメーカーに勤めていました。小学校の頃はバブル景気に沸き、ペンションブームの真っただ中。父は蓼科の土地の権利を買い、休みになると家族でこの辺りを旅する中で、いつかペンションを経営したいという夢を持っていました。それがいつしか私の夢にもなりました」と藤木氏。

その後、ペンションの料理人を目指して高校は食物科へ進学。高原リゾート地にあるオーベルジュで修業することになり長野に移住した。研修で20歳の時に行ったフランス・ブルゴーニュの星付きオーベルジュを訪れて衝撃を受け、それ以降の藤木シェフの店づくりに影響を与え続けているという。

「バブル当時の日本では、フランス料理は緊張しながら食べる高級料理というイメージがありました。店側の接待もメニューを伝える程度の必要最低限が良いとされて、お客様も食器の音を立てずに会話も静かにしていました。しかし、訪れたフランスのオーベルジュでは様子が全く違うんです。レストランは活気にあふれていて、みんなが笑顔で会話をしながら食事を楽しんでいる。総料理長はフランス語がわからない日本人の私たちにまでオススメ料理を熱心に説明し、ワインについても地元ブルゴーニュのワインを飲んでください、と一生懸命語ってくれる。地元の食材や文化を伝えるその姿勢に心を打たれ、オーベルジュのあり方を改めて考えるきっかけとなりました」

スタッフの皆さんで手造りした地下のワインセラーには、約2500本のワインが並ぶ。高級ヴィンテージから手頃な長野のワインまで種類も豊富なので、料理に合わせてシェフに相談したい

ブルゴーニュのブドウ畑が広がる田舎町にあるオーベルジュに、はるばる遠方から多くのお客さんがその店のフランス料理を食べることを目的に来ている。人々が土地の恵みをいただき、会話と食事を心から楽しんでいる様子を見て、「こんなオーベルジュを開きたい」と地産地消のオーベルジュを目指すこととなった。

イノシシの自家製生ハム

地産地消への第一歩は地元農家さんとのお付き合いから

感銘を受けたフランスの旅から帰ってきて店をスタートさせたのが24年前。初めは地元食材が集まらずに苦労したそうだが、生産者の方々を訪ね、信頼を得ることで地域と深くつながり、信州の食材が集まるようになった。

初めて地元の野菜を食べた時には「びっくりするくらいおいしかったんです。苦味、甘み、食感、香り。その全てがスーパーの野菜とは比べものにならない。本物を知らないと駄目だなと気づいて農家さんのもとを足しげく訪問することにしました」と藤木氏。高原野菜がそろい、さらに「この辺りは天然キノコが数多く採れます。毎年新種のキノコが出てくるほど。ポルチーニも自生していますよ」という。

しかし、冬は10月くらいになると農家さんは畑を片付け始める。冬はマイナス15度に下がり、辺りは真っ白な雪で覆われる。冬に出す信州の食材がない、と悩んでいた時に聞いたのがご近所さんの声だった。

「家族が鹿を捕ってくるけれどおいしくないと言っていたのでもらって調理してみたらおいしかったんです。強火で焼くと硬くなるし、独特の臭いも出るけれど、きちんと調理すれば信州ジビエとして提供できると発信したところ、遠方からもお客さんが来てくださるようになりました」

ガーデンには手造りの石窯と燻製小屋があり、パンや自家製のハム、ベーコンを作っている

ガーデンには三角屋根の小屋が2つある。一つは燻製小屋。標高1300mという高地ならではの乾燥した空気と寒さを活かして燻製作りをしている。朝食には手作りベーコンやソーセージなども提供される。石窯では、県内産小麦の「ゆめかおり」を使ってさまざまな種類のパンを焼いてレストランで提供。ふんわりとモチモチの食感で食事のおいしさを引き立てている。

鹿肉のポワレ ジン香るジビエの赤ワインソース
自家製シャルキュトリーと信州野菜の盛り合わせ

地域の食材を、フランスの伝統的な調理法で仕上げる藤木シェフの料理。鹿肉のポワレはじっくりと低温調理した肉がしっとりとやわらかく、滋味深いコクと歯応えが絶品。鹿の骨と筋を赤ワインで煮込み、ジンをプラスしたソースで味付けされてさっぱりとした味わいだ。自家製シャルキュトリー(肉の加工品)を盛り合わせたオードブルは、「エスポワール」で定番の品。旬の野菜のシャキシャキとした食感、素材を引き立てる品のあるソースは感動のおいしさだ。

有害鳥獣駆除とサステナブルな食

ここ信州は、木の実などの栄養価の高い食べ物を食べて育った野生の鳥獣が手に入る恵まれた土地。狩猟期間は11月15日からの3カ月間で、冬場には野ウサギをはじめ、キジ、山鳩、鴨などの鳥類が獲れる。有害鳥獣駆除対象のイノシシ、鹿は一年中食べられ、特に夏の信州の鹿はとてもおいしいといわれている。また、信州産のジビエは、生育環境や仕留めた時の状況なども分かるので品質的に安心でき、熟成のタイミングも計りやすいので、よりおいしいジビエ料理になるということだ。

日本ジビエ振興協会の代表理事としてジビエの普及活動も行っている藤木氏。増え過ぎた鹿を駆除しなければならない半面、動物愛護の観点から見た保護の意見もある。それらの折り合いをつけて持続可能な形でおいしいジビエが食べられるようにするための活動を行っている。

「ジビエの文化には、手に入れた食材は全部無駄なく使うという考え方があります。人間が生きるために、肉も骨も全てをありがたくいただく。鳥獣被害の問題は全国でありますが、長野の取り組みを全国で参考にしようという動きが見られています。持続可能な形でおいしいお肉が食べられればいいなと思っています」

肉も骨も全ての部位を無駄なく使いきり、生命に感謝を捧げるというジビエの考え方は、現代の私たちが心に留め大切にしたいことだと感じる。

おいしいジビエ肉のためには捕獲した動物を迅速に衛生的にさばくことが必要とのことで、ジビエをさばくための専用車の開発にも尽力した。

「長野トヨタ自動車さんに協力をいただいて、全国初のジビエカー(移動式解体処理車)が誕生しました。捕った後トラックの荷台で衛生的に内臓と皮を取り除くことができる画期的なクルマです。おいしく安全なジビエ肉を提供するために活躍しています」

わざわざ遠くまで訪れる価値がある場所

ジビエはコクが深く味わいが濃厚なので、ワインがよく合う。2階のゲストルームに泊まれるので、クルマで来ても心置きなくワインをいただけるのがうれしい。ゲストルームは3部屋。少ない客数なので静かに落ち着いたステイができる。もちろん、宿泊なしでもレストランでの食事を楽しめるので、シーンに合わせて選びたい。

ゲストルームは3部屋。ベッドは全てセミダブルでゆったりとした寝心地

食後にはガーデンを一望できるシガールームで大自然を眺めながら過ごすのもいい。食後酒とのペアリングで、より香りと味わいを楽しめるのもシガーの醍醐味。時間の流れをゆっくりと感じながら、ぜいたくな時間が流れていく。

ゆったりとシガーや食後酒を楽しめる専用の部屋

ジビエは、ヨーロッパでは古くから高貴なものとして人々を楽しませてきた料理。野生の命をいただき、その個性的な風味を余すことなく味わうことは、身も心も豊かにしてくれる。信州の土地だけで食べられる食材と、地産地消のシェフの思いを込めた料理の数々。大自然を目の前に、ここでしか体験できない食を感謝して味わった。命をいただき、その土地の文化を感じる場所に、季節の折に訪ねたい。

■オーベルジュ・エスポワール
https://www.auberge-espoir.com/

Text and Edit by Eri KoizumiPhotographs by Shu Okawara