カーボンニュートラル社会の実現と、多様化するお客様のニーズに寄り添うクルマづくりを進める次世代LEXUS。その根底には、30年以上におよぶ歴史のなかで加速する、「もっといいクルマづくり」への想いが息づいている。そんなLEXUSの過去・現在・未来に触れるべく、日本有数の自動車博物館「トヨタ博物館」と、LEXUS車の最新モデルを展示している「トヨタ会館」で見た。

カーボンニュートラル社会の実現と、多様化するお客様のニーズに寄り添うクルマづくりを進める次世代LEXUS。その根底には、30年以上におよぶ歴史のなかで加速する、「もっといいクルマづくり」への想いが息づいている。そんなLEXUSの過去・現在・未来に触れるべく、日本有数の自動車博物館「トヨタ博物館」と、LEXUS車の最新モデルを展示している「トヨタ会館」で見た。

LEXUSのフラッグシップセダンとして新たなる高級車市場を切り開いた初代LS

愛知県長久手市の「トヨタ博物館」には、LEXUSの歴史を伝える3台が展示されている(22年6月取材時)。1989年に発表され、静粛性や快適性の高さで世界中を驚嘆させたフラッグシップセダン、初代「LS」。オンロードとオフロード車をクロスオーバーさせた斬新なコンセプトで1998年に登場し、高級クロスオーバーSUVという新たなるジャンルを開拓した初代「RX」。そして、ニュルブルクリンクで鍛え上げた“走り”の性能でLEXUSのクルマづくり変えるきっかけとなったLFA(2009年)。

トヨタ自動車創立50周年記念事業のひとつとして1989年4月に設立された「トヨタ博物館」。自動車の歴史を象徴する世界の代表的な車両約140台が展示されている

いずれもがLEXUSの歴史においてエポックメイキングなモデルである。3台とも、いまでも現役として通用する実力をもったモデルだ。博物館において、過去から現在に通じるLEXUSの一貫した歴史を体現している。

右手前が初代LS(1990年製)、その奥が初代RX(2000年製)、そして左がLFA(プロトタイプ 2009年製)。この3台はトヨタ博物館に常設展示されている

初代LSは、欧州メーカーの牙城であった高級ブランドマーケットに参入すべく、1989年1月にデトロイトで開催された北米自動車ショーでベールを脱いだ。高次元でハンドリングと乗り心地を両立する新設計の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションに高出力と超高精度加工による静粛性を実現した新開発の4リッターV型8気筒エンジン、新開発のホイールストローク感応伝声制御エアサスペンションとピエズTEMSを搭載した同車は、新たに登場したプレミアムブランド・LEXUSのフラッグシップモデルとして注目を集めた。

1989年の北米自動車ショーでLEXUSのフラッグシップセダンとして発表された初代LS

初代LSが抜きんでていたのは、静粛性と低振動性。フードの上に広口クープグラスでいわゆるシャンパンタワーを組み上げたデモストレーションが、当時、話題になった。近くを人が歩いただけで崩れそうな繊細なタワーを載せたまま、4リッターV型8気筒エンジンを始動させても、クープグラスのタワーはそのままなのだ。

駆動系の加工精度を徹底的に向上し、駆動時にアンバランスが原因の振動性を極限と思えるまで低減した結果だ。エンジンと変速機をはじめとするドライブトレーンの直線配置を追求し、さらに、油圧モーターを使った冷却ファンや、ボディ各所に制振鋼板を使うなどで、超静粛性を実現している。

初代LSのために新開発された4リッターV型8気筒「1UZ-FE型」エンジン。最高速度250km/hを実現するハイパワーと優れた低燃費性能を両立させていた

それでいて、パワフルで、かつハンドリングに優れるというクルマの基本性能も、同時に追求されていた。

現在、Lexus Internationalのプレジデントを務める佐藤恒治は、今も、初代LSの出来の良さをよく口にする。エンジニアのバックグラウンドを持つ佐藤は、以前に、次世代車を開発するにあたって、初代LSを徹底的に研究しなおすよう、担当エンジニアに指示を出したほどだ。

レザーやウッドパネルがふんだんに用いられた上質なインテリア。イグニッションをオンにすると針や表示が浮かび上がるオプティトロンメーター(自発光式メーター)をはじめ、多くの先進技術も投入された
フラッグシップセダンならではの広々としたトランクルーム

過去の優れたモデルを再評価。エポックメイキングだったLEXUS車を改めて今の視点で検証することで、これからのクルマづくりに役立てていこうというのが、LEXUSのクルマづくりなのだ。

“なぜあのとき、あのような、いいクルマができたのだろう”などという、偶発的なクルマづくりでは許されない。もっといいクルマづくりのためには、現在の最善を追求しなくてはならない。同時に、ヘリテージを振り返るのは、継続するブランドの価値を守るために重要なことだ。

最新モデルへと受け継がれる初代RXのクルマづくり

初代RXの特徴は、モノコックによるボディ構造ながらも、ロードクリアランス185mmを確保し、都市型SUVとして充分な悪路走破性も備えた。高級クロスオーバーSUVの草分けとなった初代RXは、クロスカントリー的性格の強いSUVとは趣の異なる乗用車としても使うことのできるスタイリッシュかつルーミーなボディで、市場の評価も高かった。

高級クロスオーバーSUVの草分けとして1998年にデビューした初代RX
初代RXに搭載された3リッターV型6気筒「1MZ-FE型」エンジン

いわゆる“二律双生”という、達成がむずかしい要件をうまく両立させている性能が、次世代LEXUSとして発表されたばかりの最新のRXにつながっていく。


「クルマと一体となった気持ちの良い走りで、笑顔になってもらいたい。」

従来のクロスオーバーSUVとは異なる、高級乗用車のような上質感とスタイリッシュさを備えた初代RXのインテリア
SUVとしての高いユーティリティ性も備えていた

新型RXを担当した、大野貴明CEの言葉だ。もっといいクルマづくりへの理念はブランドの強みとなっている。

豊田章男とマスタードライバー成瀬弘の想いが結実したLFA

LFAは、スポーツカーとしてエポックメイキングなモデル。2009年に世界56カ国でわずか限定500台(日本には165台の割り当て)で発売された。

LFAが鍛えられたニュルブルクリンクは、ドイツ北西部にあるサーキットでプロドライバーでも恐怖を感じる環境だと言われている。サーキットというよりは、峠を走る一般道と形容したほうが近く、上下入力を含め過酷な道が20.8kmも続くため、世界でも唯一のコースとして、「車両開発の聖地」と呼ばれるため、さまざまな自動車メーカーがクルマを鍛えるために今なお、評価を繰り返している。

独自開発の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)キャビンや、412kWのハイパワーを誇る新開発の4.8リッターV型10気筒「1LR-GEU型」エンジン、車両の重量低減、重量配分の最適化を実施し、卓越したレベルのパワーウェイトレシオ(2.64kg/PS*2)とトラクション性能を実現。当時のLEXUSの最新技術が惜しげも無く投入されたスーパースポーツカーLFA。いわば“F”モデルの原点だ
フロントには6ピストンキャリパー、リヤに4ピストンキャリパーを備えたカーボンセラミック製(CCM)2ピースブレーキディスクが与えられる

この開発陣のなかで重要な位置を占めていたのが、当時マスタードライバーだった成瀬弘。現在、マスタードライバーの豊田章男も、成瀬の薫陶を受け、ドライバーとしての腕を磨き、クルマの評価能力を上げている。

LFAの開発の背景には、豊田章男や成瀬弘が当時抱いていたトヨタの未来への危機感があった。日本では、技術や技能の継承は伊勢神宮の“式年遷宮”にたとえられる。20年ごとに社殿を建て直す理由は、建物の老朽化だけではなく、建築技術を次世代に伝えていくという説があるからだ。

LFAでは、スポーツカーづくりで追求する“走る” “曲がる” “止まる”という技術を突き詰めたことが、上記“式年遷宮”にたとえられているのだ。20代でスポーツカー開発に携わった若手が、20年後は40代でクルマづくりの中心となって次の世代を育てれば、スポーツカーのみならず、一般のクルマづくりに必要な技術や技能を継承していける。

前後質量配分や重心高を最適化すべく、フロントミッドシップ(前輪車軸よりエンジン重心が後方配置)のより低い位置に搭載された4.8リッターV型10気筒「1LR-GEU型」エンジン。レッドライン(限界回転数)が9,000rpmに達する超高回転型ユニットだ

トヨタ2000GTが発表されたのが1967年。次が1993年のスープラ「80系」。このあと20年で、技術や技能の継承をするにはどうすべきか?
そこから、LFAの開発が始まった。

成瀬の最後の評価となってしまったLFAだが、彼はLFAを以下のように評価した。
「求めていたのはこれだ!という感じ。トヨタでもできるじゃないか!」
「これならどこの道でも、どんなクルマにも勝てる。長い間やってきた甲斐があったなぁ」
「これまでやってきたことをクルマは絶対に裏切らないぞ」

決してクルマに合格点を出さない成瀬が、満面の笑みで、最後に合格点をくれた。
成瀬からの褒め言葉をもらったことは開発チームにとって最高の勲章となった。

このようなクルマづくりは、未来への前進とされる。単に、快適なクルマ、エンジンパワーが大きなクルマ、ぜいたくなクルマというのでなく、デザインから走りに至るまで“LEXUSらしさ”を備えたクルマづくりこそが大事であり、何をもって目的達成と見極めるかは、ブランドに携わる者たちが決める。そうでなければ、競合他社との差別化すらむずかしくなる。

洗練されたインタフェースによりドライバーとマシンが一体化できるように設計されたコックピット
乗員の体をしっかりと支えるための設計がなされたレザーシートは、ドライバーが車両挙動の変化に直観的に対応することができるよう、ホイールベース中央に設置されている
ソフトレザーと炭素繊維強化プラスチックのコンビネーションとなるステアリングホイール
液晶ディスプレイパネルとカラーTFT、モーター作動の可動式リングが組み合わされたインストルメントパネル
トランスミッションが高レスポンス6速オートメーテッドシーケンシャルギヤボックス(ASG)のため2ペダルとなる
メーターナセルに設けられたドライブモードセレクター。「オート」「スポーツ」「ノーマル」「ウェット」の4つの運転モードを備える
センターコンソールにはコンピューターのマウスの原理で操作できるリモートタッチシステムが設置される
ステアリングホイールと同様、ソフトレザーと炭素繊維強化プラスチック(カーボン)で覆われたドアパネルは、上質感とレーシーさが融合
シートの背後にはコンパクトながらラゲッジスペースが

ところで、LEXUSが未来へと前進するうえで、その契機となったひとつのエピソードがある。2011年、北米カリフォルニア州ペブルビーチで開催された「GS」のプレミアイベントでのこと。豊田章男社長が、プレゼンテーション後のセッションで忌憚のない意見を求めたところ、あるジャーナリストから「LEXUSはいいクルマだけれど、“Boring(退屈)”だ」という発言があったのだ。この屈辱的な一言が、ブランドホルダー以下LEXUSに関わる全てのスタッフに奮起を促し、昨今のLEXUS車の起点となったLCへと結実していったのだ。

LEXUSのもっといいクルマづくり「NEXT CHAPTER」

そんなLEXUSが現在、佐藤恒治プレジデントによる旗振りのもと、チーム一丸となって取り組んでいるのが、「NEXT CHAPTER」だ。2021年11月の新型「NX」にはじまり、新型「LX」、22年4月に世界公開されたBEV(バッテリーEV)専用モデルである「RZ」、2そして、3モデルで培ってきた「もっといいクルマづくり」への想いが技術とともに、上記の新型「RX」に凝縮していく。

「トヨタ会館」ではLEXUSの最新モデルを見ることができる

もしクルマで出かけていたら、トヨタ博物館を訪れたあと、愛知県豊田市の「トヨタ会館」まで足を伸ばすのも一興かもしれない。「幸せの量産」を目指すトヨタ自動車の「今」が分かる企業展示館。地元では、最新の環境・安全技術やモビリティ、社会貢献活動などが分かる施設として知られる場所だが、ここには常に、新型NXや新型LXなど、NEXT CHAPTERを象徴するニューモデルが展示されている。

LEXUSのNEXT CHAPTER第1弾モデルである新型NX
NEXT CHAPTER第2弾モデルとしてデビューしたフラッグシップSUV「LX」
LEXUS初のBEV「UX300e」

トヨタ博物館
https://toyota-automobile-museum.jp/

トヨタ会館
https://www.toyota.co.jp/jp/about_toyota/facility/toyota_kaikan/

※実際の展示車両は記事取材時の展示車両と異なる場合があります。トヨタ博物館、トヨタ会館ともに最新の展示車両情報をご確認の上、ご来場ください。

Photographs by Takayuki Kikuchi