仕事で成果を上げているビジネスパーソンほど、オンとオフのメリハリがはっきりしています。私はこうした人たちを「力の入れどころと抜きどころがうまい人=最善主義で仕事をする人」と呼んでいます。一方、最善では物足りず完璧を求めてしまうと、いつまでも仕事が終わらず多残業の毎日に陥ります。

それでは、完璧主義から脱却し、最善主義で仕事をするにはどうすればよいのでしょうか?3つの観点から解説します。

古川武士(ふるかわ たけし)/習慣化コンサルタント

関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約3万人のビジネスパーソンの育成と約500人の個人コンサルティングの現場から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、オリジナルの習慣化理論・技術をもとに個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援を行っている。主な著書に「続ける習慣」「やめる習慣」「早起きの技術」などがあり、全16冊、計70万部を超え、中国・韓国・台湾など海外でも広く翻訳され読まれている。公式サイト

1. 最善主義の人のパラダイム

まず、大前提として重要なことは、最善主義と完璧主義の人では、パラダイム(物事のとらえ方・世界観)が違うといことです。

パラダイム1.完璧はない、最善があるだけだと考える

最善主義の人は、この世の中には、そもそも完璧というものは存在しない。つまり、完璧は幻想で、良かった点と改善点の連続だと現実的に考えています。

誤解がないように言っておくと、完璧を目指さない=いい加減にやる・手を抜くのではありません。限られた時間に知恵を出し、人を巻き込んで、最高の結果を常に探求し続けるのが最善主義です。しかし、その最善の追求には終わりはなく、常に改善点があるだけです。

完璧主義はその逆で0点か100点、白か黒をはっきりと区分けします。結果、100点でなければ0点と考え、自分が考える100点を目指さなければ、不安になったり自己嫌悪になります。

最善主義の発想は、常にうまくいったこと、反省点、次への改善行動があると考えて、前回よりさらに上を目指し飽くなき追求を続けること。完璧という幻想を持たず、限られた時間と現状のスキルで精一杯やることに集中します。このマインドセットを持つことで、自らの成長を承認でき、課題に向き合うことができるわけです。

パラダイム2.リスク領域で仕事をする

いつも通りのパターンで仕事をすることは安全領域、工夫して違うやり方を試すことは、リスク領域で働くことを意味します。

完璧主義の人は、安全領域で、いつも通りのやり方、手順、フォーマットで仕事を進めたくなります。成果を出すのにリスクを避けたいからです。0点か100点しかない考え方では、そう選択せざるを得ません。

一方、最善主義の人は、常に改善や最上を目指す考え方なので、既存のやり方に限界を感じると、失敗を恐れずにリスク領域で仕事をする発想が湧いてきます。結果として、抜本的に仕事のやり方を変えて、最善の効率や生産性を手に入れることができます。

2. 最善主義の人の思考習慣

さて、上記のパラダイムを基に、最善主義の人はどのように考えて仕事をしているのでしょうか? どうすれば、限られた時間で多くの成果を出せるのでしょうか? そこには共通する2つの思考習慣があります。

思考習慣1. 目的や相手のニーズにこだわる

最善主義は、仕事の力の入れどころと抜きどころを明確にして、メリハリをつけて仕事をすることを意味します。では、力の入れどころはどこなのか? 一番の本質は、仕事の目的や依頼主のニーズに忠実であることです。自分のこだわりから生まれる完璧主義は自己満足にすぎません。

ただ、「相手が求めていないこと、こだわらないことは手放して、求めることに時間をかける」というと、当たり前のように聞こえますが、実はそう簡単ではありません。自分のこだわり、不安を解消するために多くの時間を使っているケースもあります。「自分の安心・満足」が完璧主義に陥りやすい基準だったりします。

「目的や相手のニーズにフォーカスする」と言い聞かせ、仕事のやり方を再定義する習慣を取り入れてみてください。

思考習慣2. 80:20の法則を適用する

パレートの法則として有名な「80:20の法則」。ビジネスでは会社の売り上げの80%は20%の顧客から生まれるという意味でも使われます。

最善主義の人は、極端にいうと結果の80%は重要な20%の行動から生まれるという発想をします。すべての職種でこの数字は当てはまりませんが、結果を導くために重要な行動に注力して、それ以外は減らすか、捨てることがポイントです。

完璧主義の人はすべてを網羅しようと、メリハリをつけずに全力投球するため、作業時間が均等配分され、成果を握る行動の最大化が図れません。

最善主義の人は、20%の最も重要な行動が何かを直感的、身体的に理解しており、そこに注力することで、より少ない時間で成果を出しています。80%の部分は効率化を図り、人に任せたり、戦略的に妥協したりしています。

この2つの思考習慣は一朝一夕では身につきません。日々のひとつひとつの業務に適用することで、少しずつ考え方の習慣が変わっていきます。職場で最も最善主義だと思える人と話をしてください。 

3. 最善主義の人の行動習慣

最後に、最善主義に向けた具体的な行動習慣を紹介します。

私がおすすめするのは、最善主義になる最大の要因でもある、制限を設けることです。大きく言えば、働く時間を決めること、小さく言うと、1つのタスクにかける時間を決めることです。

制限時間があり、タスクや工程が溢れている状況下でこそ最善主義で考えるモチベーションが生まれるので、締切り間際の集中力と段取り力をすべての仕事に持ち込むわけです。そのためには、しっかりとした睡眠時間を確保しながら、制限を設けて仕事の内容を見直すことが重要です。

制限時間を習慣化するためには、退社時間をコミットすること、1つの作業にかける時間を決めて必ず終わるように仕事のプロセスを再構成することです。

カウントダウンタイマーを活用したり、退社時間の間際に予定を入れたりして、自分を追い込みましょう。制限から最善が生まれてくることを実感できるように、1つの業務、1日の仕事に制限を設けて、最善を尽くす行動習慣を繰り返してみてください。

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