あらゆる仕事がメール連絡で進められるようになり、メールを端的にわかりやすく、かつ失礼なく書けることが必須になっています。また、メールの本数がふえるにつれ、メール仕事にかかる時間が膨らんでおり、ムダのない書き方や管理方法にも工夫が必要になってきました。(「はじめに」より)

『気のきいた短いメールが書ける本』(中川路亜紀著、ダイヤモンド社)の著者がいうように、いまやメールなしに仕事を進めることはできません。しかし現実的に、簡潔で失礼のないメールを書くのは難しいものでもあります。そこで本書では、出版社勤務を経て独立し、長らくビジネスコミュニケーション関連の著述・講演活動を行っているという著者が、実用的なメールの書き方を紹介しているわけです。

インターネット上には、「メールの掟」があふれています。

その中には、正しい知識を根拠とした良識的なアドバイスもありますが、まったく根拠のない自分流の考えや「言葉狩り」、古いビジネス文書マナーの転用なども見られます。ネットを調べれば調べるほど、何が本当なのかわからず、時間を浪費することも多いものです。(「はじめに」より)

だからこそ、本書には利用価値があるということ。第1部「気のきいたメール仕事 15のポイント」から、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。

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メール仕事をコンパクトに

著者はメールの受信箱のことを、仕事がわき出してくる「玉手箱」だと表現しています。開けてびっくり、ややこしい要件が飛び出してきて、その対応に追われているうちに時間が経過してしまうということ。そして、そんなメール仕事をコンパクトにするために、次の3つをやってみることを提案しています。

1. メール処理は固めてやる

2. メールは仕分けて対応

3. メールから派生する仕事も仕分ける

(10ページより)

まずは「メール処理は固めてやる」。つまりメールチェックは、決まった時間に固めてやると効果的だということ。急ぎの連絡を待っているのでない限り、だらだらメールチェックをするのは時間の無駄だというわけです。たしかに頻繁にメールチェックをすると、そのつど予定外の時間をとられたり、他の仕事に紛れて重要な返信を忘れてしまったりする危険があるかもしれません。

次の「メールは仕分けて対応」は、メールを開いたら、次のどれかに仕分けて処理すべきだということ。

1. 簡単な返信ですむとき

了解したことを伝えるだけの場合、ひとことお礼を言えばすむ場合は、簡潔なメールを即返信。

2. 相手が一刻も早い返事を求めているとき

YES・NO・保留のいずれかを即返信。保留する場合は、いつまでに返事するか明記し、確実に返信できるよう必要な手を打ちます。

3. 返信に確認・検討のための時間が必要なとき

相手がそれほど急いでいなければ、返事に1日程度の時間をとることは失礼ではありません。きちんと調べて後で返信。

4. 特別にていねいな返信が必要なとき

相手がVIPだったり要件がデリケートだったりして、返信をじっくり練りたい場合は、後で返信。

(11ページより)

そして3つ目は、「メールから派生する仕事も仕分ける」。メールの多くには、小さな確認依頼、送付依頼などが含まれているもの。メールを開くたび、そこに書かれている仕事を片づけようとすると、その仕事からまた新たな仕事が派生したりして、収拾がつかなくなることもあります。そこで、上記のメールの仕分け同様、派生する仕事も「すぐにできるもの」と「時間がかかるもの」に分け、後者は忘れないようにリスト化。ひととおりメール処理をしたあとに、時間をとって対応すべきだということです。(10ページより)

件名は目立てばいいのか?

相手に用件を明確に知らせるというだけでなく、過去のやりとりを検索する際にも、件名は大きな手がかりになるもの。それくらい重要なものだというわけですが、かといって目立てばいいというわけではないとも著者は主張しています。相手が助かるように考えられた件名こそが、「よい件名」だというのです。

そこで件名をつけるときは、相手の受信箱を想像することが大切。たとえば経理担当者宛のメールに「請求書をお願いします」という件名をつけるとしたらどうでしょうか? 当然、相手の受信箱は同じような用件であふれているはずなので、せめて、

請求書のお願い(○○社)

(16ページより)

というような配慮をすることが大切だということ。件名に日時や社名、製品名、事業名などを入れるだけで、格段にわかりやすくなるわけです。ただし、長くなると全体が表示されなくなるため注意が必要。また、「お願い」「お礼」など具体性のない件名も×だそうです。

つまりまとめると、気の利いた件名の条件は次の3つになります。

・相手の受信箱の中で他のメールと区別がつく

・長すぎない(重要な部分が隠れてしまわない長さ)

・具体的で、わかりやすい

(17ページより)

他に、「できる工夫」として次のような手段も紹介されています。

ヘッドを入れる

【○○商事】打合せのお願い

【訂正】販売店会議の資料

【要返信】○○委員会出席のお願い

【再送信】子育てアンケートご協力のお願い

【お詫び】メルマガ誤配信がありました

【ご案内】介護用品展を開催します

【ご報告】○○研修会を実施しました

*【至急】や【緊急】は本当に緊急事態のときだけにします。

【重要】はPRメールのように見えます。

補足をつける

3月イベント企画(素案)

3月イベント企画(案1/20)

3月イベント企画(最終案)

移動のご挨拶(鈴木花子)

○○法の改正について(情報提供)

中堅研修会の在り方について(長文)

* 同じテーマでやりとりしている間は、件名は変えないのが原則ですが、経過がわかるように補足を変えるのはOKです。(情報提供)は、情報を提供するだけなので返事は不要という意味、(長文)は、長いので読むのに時間がかかるという注意喚起です。

(以上17ページより)

書きすぎのメール、どこがだめ?

ビジネスメールは、全体の長さを短くし、文章も簡潔にすべき。ただし短くても内容がくどかったり、先取りしすぎていたりすると、相手に思わぬ不快感を与えてしまうことも。その例として著者はまず、強調語が多すぎることの弊害を取り上げています。

[×]

先日は、とても貴重なお話をたくさんお聞きできて、非常に勉強になりました。

特に、研究チームの皆様のたいへん献身的で粘り強いご努力によって、この非常に素晴らしい結果が生み出されたということを知り、とても感動致しました。

(26ページより)

このように強調語や修飾語が多い文章は、流れが悪く、場合によっては感情的すぎる印象を相手に与えてしまうもの。そこで、自分のメールを読み返してみてしっくりこないときは、思い切って強調語や修飾語をダイエットしてみるといいそうです。

[○]

先日は、とても貴重なお話をお聞きでき、勉強になりました。

特に、研究チームの皆様の粘り強いご努力によって、このような結果が生み出されたということを知り、感動致しました。

(26ページより)

そしてもうひとつの注意点は、先回りしすぎたり、こと細かすぎること。承諾してもらえるかどうかわからない仕事や、協力を打診する場合は、段階を踏んで話を進めたほうがスムーズだということです。たとえば、

・ まずは面会のポイントをお願いし、会ってから条件などの詳細な交渉をする

・ メールで打診する場合も、最初の打診でおおむねの承諾をもらった上で、細かい依頼をする

など。メールはどんどん先のことまでかけてしまいますが、あまり先回りせず、相手の出方を見て返信を調整することも必要だという考え方です。(26ページより)

このように、目的ごとに簡潔にまとめられているため、とても実用的。すぐに役立てることができるだけに、デスクサイドに置いておいて役立てたい1冊です。

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