『最高のパフォーマンスを引き出す習慣術』(大塚邦明 著、フォレスト出版)の著者は、循環器内科学、高齢者総合内科学、睡眠医学、時間医学を専門とする東京女子医科大学名誉教授。

本書の序章では、まず人間の「適応能力」を引き合いに出しています。

人が地球を支配することができた理由は、適応能力の高さにあったというのです。それは、脳を大きくして知力を獲得したことによって得られたのだとも。

その知力の源は、脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)にある「体内時計」と、1000億個もある脳神経細胞(ニューロン)間で機能的な連繋網を作って知力を生み出し、状況に応じてコミュニケーションを組み直す「脳の機能的ネットワーク」にあります。

機能的ネットワークの代表が、「デフォルト・モード・ネットワーク」です。

デフォルト・モード・ネットワークとは、体内外からの情報を受け取る頭頂葉、その情報を整理して決断を下す前頭葉、さらに、それを記憶する側頭葉による広域コミュニケーション・ネットワークのことです。

この3つの新皮質は、情動や自律神経・ホルモンの働きを増幅する旧皮質(大脳辺縁系)と連絡し合いながら、喜びや充実感、達成感を感じつつ、観察力(頭頂葉)と価値観力(前頭葉)と記憶力(側頭葉)を駆使して新しい環境に応答し順応していく助けをします。(「序章」より)

やや専門的ではありますが、つまり人はそのようにして文明を開花させてきたということなのでしょう。

そこで本書では、体内時計とデフォルト・モード・ネットワーク、夜の脳の主役である「グリア」、そして穏やかな毎日と仕事の能力を高めるために重要な「ジャンクDNA」に注目しつつ、ビジネスパーソンがパフォーマンスを上げるためのコツを解説しています。

きょうは、第2章「仕事の効率が上がる時間の使い方」のなかから、「時間」に関するトピックスを抜き出してみたいと思います。

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朝起きて一番にすべきこと

1日の仕事の効率を上げるためには、「起床後1時間をどのように過ごすか」が重要。

起床とともにストレスホルモンのコーチゾル(副腎脂質ホルモン)が上昇し、1日(24時間)のリズムが決まります。

起床の時間帯は、眠りを采配していた90分時計から、腸と脳の活動を高めるための90分時計に切り替わるタイミングに当たります。

さらに、7時間前後の眠りから、覚醒モードに切り替える血管収縮ホルモンが活躍し、8時間リズムが始まる時間帯でもあります。(61ページより)

つまり起床後の1時間は、90分時計、8時間時計、24時間時計が協同して働き始める重要な時間帯だというのです。

では、生体リズムの乱れを整え、きょう1日の仕事の効率を上げるためには、朝起きて一番にすべきこと(起床後1時間のルーティン)はなんなのでしょうか?

1つ目は、太陽の日差しを浴びること

コップ1杯の水を飲み、排尿は時間をかけてゆっくりと済ませたら、背伸びをして硬くなった筋肉と腱を伸ばし、窓のカーテンを開けて日差しを浴びます。

重要なのは、光の強さ(照度)と、その持続時間。朝の明るい日差しを、時間をかけてゆっくりと浴びること。

人の体内時間は、生体リズムの長さを約25時間に設定しているのだそう。つまり地球の自転と1時間ずれてしまっているため、このずれを毎日補正することが必要になってくるわけです。

そこで重要な意味を持つのが、朝にたっぷりと明るい日差しを浴びること。そうすれば、補正がうまくいくというのです。

なお、時間は朝の11時までに最初の光を浴びることが大切。夕刻から夜間にかけて光を浴びると、体内時計の針は、逆に1時間遅れてしまうからです。

それを繰り返すとリズムはどんどんずれていき、やがて生活習慣病を呼び起こす原因になってしまうのだとか。いってみればそれほど、朝に日差しを浴びるのは大切なことだというのです。

とはいえ、「毎日太陽光を浴びることなんてできない」と思われるかもしれません。しかし、必ずしも太陽光でなくとも、蛍光灯でもその効果は得られるというので記憶にとどめておきたいところ。

なかでも青のスペクトルを含んだ光が有効だそうです。

2つ目は、マインドフルネス

マインドフルネスは“いま、ここ”に意識を向けた状態を指しますが、著者は、ここで瞑想することを指しているようです。

椅子に座って心静かに大きな深呼吸を数回したら、目を閉じて1〜2分間瞑想。交感神経と副交感神経をバランスよく働かせることによって、昨日の疲れを切り離せば、きょう1日の仕事の効率が上がることになるのだそう。

3つ目は、軽い運動

起床後には、髪を梳かして頭皮の血流をよくしてから散歩に出かけるといいそうです。新鮮な空気を味わいながら、からだに無理のない短い散歩をするのが最適。

また、ラジオ体操やテレビ体操も体内時計のリセットに有効です。

4つ目は、食事

体内時計は複数あり、親時計だけでなく、子時計も25時間のサイクルで動いているため、朝食をとることによって胃腸や肝臓にある子時計の針を合わせる必要があるといいます。

そして三食のなかでは、朝食が最も大切。

空腹の時間が長いほど、時計を合わせる食事の効力が強くなるからです。前日の夕食と朝食の間は最も長く時間が空くので、朝食の効果が大きいということ。(61ページより)

仕事がはかどるゴールデンタイムは1日に何度ある?

仕事をするのに最適な時間帯は、午前10時〜11時過ぎまで。

体内時計が整えられて、自律神経やホルモンの働きが活性化されるから。知力が高まるため、企画を立てたり、アイデアを練ったりするなど、想像力を発揮する仕事がはかどるわけです。

また、昼食後の短い昼寝は、午後のパフォーマンスを上げるために有効。12時過ぎの昼食後に眠気を感じたら、30分以内の短い昼寝をするといいということです。

その後、仕事を再開したら、13〜15時くらいは精神活動も体力も最大になり、仕事の効率が最もよくなるはず。

ちなみに効率よく仕事をするためには、90分のリズムを意識することがポイント。私たちは90分周期で、昼夜を通して休息と活動をしているからです。

そのため、90分ごとに短い休息を心がけるべきだということ。それ以上続けると集中力が途切れやすくなり、自律神経の働きも乱れるというので注意が必要です。

仕事にとりかかって、だいたい90分経つと、お茶やお菓子がほしくなることがあるのではないでしょうか。

また、新しいアイデアを思いつくタイミング、神経を使う仕事をしているときの作業効率の波、認知・行動機能が活性化する周期も約90分なのだそうです。

つまり90分は、環境に適応する、生命を維持し続けるために不可欠なリズムだということです。(66ページより)

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このようにすぐ実行できるアイデア満載。できそうなことから試してみるだけでも、パフォーマンスの向上を実現できるかもしれません。

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Source: フォレスト出版

Photo: 印南敦史