悩みと対峙したとき、“いちばんいい答え”を出すために四苦八苦することは少なくありません。ところが『一番いい答え - 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -』(太田龍樹 著、ワニブックス)の著者によれば、“筋のよい答えを出せるシンプルな技”があるのだそうです。
“一番いい答え”を出すには、明確なメカニズムが存在する。
それは、「トゥールミンモデル」にしたがって、あなたに合った“一番いい答え”を出す方法である。
「トゥールミンモデル」というシンプルな思考の型を使えば、あなたが抱える悩みに対する“現状の中での最良の答え”が見つかる。(「はじめに “ばくぜんとした考え”がその悩みを解決する『一番いい答え』に変わる」より)
トゥールミンモデルは、イギリスの哲学者で教育者のスティーヴン・トゥールミンが考え出したシンプルな思考法。
その公式は次のようになるそうです。
最適解=「あなたの意見」+「根拠となる事実」+「意見と事実をつなぐ理由」(「はじめに “ばくぜんとした考え”がその悩みを解決する『一番いい答え』に変わる」より)
この公式に自分の考え、自分が持つ情報を当てはめるだけで、限りなく正解に近い答えが見つかるというのです。
なお著者はディベートの第一人者ですが、ディベート自体が「トゥルーミンモデル」そのものなのだとか。また、ディベートでやり取りする議論は、「トゥールミンモデル」に基づいてつくらねばならないのだともいいます。
第1章「“ばくぜんとした考え”が『最適解に変わる』ちょっとした下準備を見てみましょう。
ここで著者が訴えているのは、下準備の重要性。具体的には、トゥルーミンモデルの型に、何度も自分の考えを当てはめて実践することが大きな意味を持つというのです。
ちなみに最適解とはメリットのある、論理的な答えのこと。
「クレイム(主張・結論)」「データ(事実)」「ワラント(論拠)」がつながり、成り立つ答えを出すことで、最も正しい答えに近づけるのだそうです。
一番いい答え - 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -1,540円
「なんとなく」の考えを論理でまとめる3ステップ
対峙している問題や悩みについて考えるとき、曖昧な答えにしかたどりつかないことはよくあるもの。そういった曖昧な考えを明確にするためには、次の3ステップを実践するといいそうです。
ステップ① 自分の「言いたいこと」「結論」を40文字で箇条書きにする
文字どおり、自分の主張や結論(クレイム)を40文字程度で表現してみるということ。
ステップ② 「主張・結論に至った理由」を考えてみる
自分のいいたいこと、結論に至った理由、つまりデータとなることがらを考えてみるということ。
なお、できれば2つ以上の理由を出すといいそうです。なぜなら、そのぶん多様性が増すから。
ステップ③ 隠れた理由をあぶり出す
主張や結論とデータを結ぶ、「架け橋となるような隠れた理由(ワラント)」を浮き彫りにする。
この工程を行うだけで、「なんとなく、こんなことを考えているんだけど」というような曖昧な思考が明確になり、かつ論理的にもなるそうです。(33ページより)
悩むことは、3種類のテーマに限定する
著者は、人が抱える悩みのテーマは3種類あると主張しています。
それはどのようなものか、ひとつひとつを確認してみましょう。
1 事実論題――「あり得るのではないか」を考える
事実論題とは、論理的に考えてあり得るのではないか(あり得たのではないか)と推定するものを論題にすること。
トゥールミンモデルに当てはめた場合、クレイムに当たるのがこの部分。いいたいことを明確にしていくうえで、まずはじめに取りかかるべき論題だといいます。
2 価値論題――「比較」を考える
価値論題とは、ある価値と、他の異なる価値とを対比させ、比較する論題。
「人は見かけか、内面(心)か?」といった悩みは、人それぞれの判断基準(価値観)をあらわにする興味深いテーマだと著者は記しています。
そして、こうしたテーマをひもとくにあたって、トゥルーミンモデルは欠かせないのだそうです。
3 政策論題――「するべきか否か」を考える
政策論題は、現状の政策や制度の変革についてのプランをめぐり、改革推進派(肯定側)と現状維持派(否定側)が議論を戦わせる論題。
たとえば「日本は首相公選制にすべきである」といったテーマはもちろん、「わが社は、週3日テレワークにすべきである」など、日常生活における判断にも応用することが可能。
このように、私たちが日常生活で抱える問題や悩みのテーマは、「1 事実論題」「2 価値論題」「3 政策論題」の3分類で整理できるということです。(39ページより)
一番いい答え - 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -(Kindle版)1,430円
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短い時間で、いちばんいい答え(最適解)を導き出すのに、ディベートの技術を使わない手はないと著者はいいます。
そうすれば説明、プレゼン、議論、交渉の能力も高まるのだとも。だからこそ、本書を活用して「トゥルーミンモデル」を活かしてみるといいかもしれません。
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Photo: 印南敦史