さぼる目的で、ChatGPTに大学のレポートを書かせようとしたのをきっかけに、生成AIに開眼。

ChatGPTの手を借りながら、1日1本のアプリ作成を100日間続けたら、学会発表、大手IT企業に就職、その後開業と、どんどん道が開けていくサプライズな人生を体験。

そして先般『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』(日経BP)を上梓された、大塚あみさん。

今回は大塚さんにエキスパートの視点からChatGPTを使いこなすヒントを教えていただきました。

SE、研究者、著述家の三足の草鞋

――現在はご自身の会社を立ち上げ、主にIT企業から仕事を受注しているのですね?

はい、ソフトウェアを設計し、様々な言語でプログラムを書く日々を送っています。くわえて、情報工学の博士課程に入り、博士号を取ることも目標にしています。

前回の国際会議で発表したことについて、論文修正し、学会誌に投稿しようとしています。あと、次の本の計画も立てています。

朝から晩までプログラミング漬けというわけではないですね。

とても賢いChatGPT Pro

――大学4年生のときに出合ったChatGPTは、今も活用されているのですか?

社会人になってもChatGPTはずっと使っています。1日あたり80回前後はアクセスしています。

利用法は、プログラミングの実務だけにとどまりません。

メールなどの文章を書く、校正する、アイデアをまとめる、英語のコミュニケーションのために翻訳するなど、あらゆるタスクで活用しています。

ChatGPTといっても何種類かありますが、私はProを契約しています。毎月3万円ほどかかる最上位モデルです。

ここまでくると、明らかに賢くなっているのを実感します。アウトプットされるもののクオリティがグッと上がります。

たとえて言うと、4oは学部生くらいでしたが、o1 は大学院生を相手にやり取りしている感じ。Proを使うともう少し品質は上がります。

ただ、読み込み時間があまりにも長いので、o1を繰り返し使いながら、私の修正を入れる方が効率は良いのが現状です。

私は無制限にo1を使いたいのでProを契約していますが、プログラミングの仕事を伴わないビジネスパーソンであれば、Proまでは要らないかなと思います。

機能特化したサービスよりも優れる

――自分は仕事柄、英語の文献を読み、インタビュー原稿を書き起こすことが頻繁にあります。翻訳ツールとしてDeep L、書き起こしにはNottaというサービスを使っています。こうした機能特化したものとChatGPTを比べて、優劣はつきますか?

翻訳分野にもよりますが、DeepLよりも、ChatGPTのほうが翻訳精度は高いです。

Deep LよりもChatGPTの方が修正箇所がかなり少なくて済む。それで今は英文メールも論文も、翻訳はChatGPTに全部任せています。

Nottaについては、音声の読み込みは優れていますが、要約などの機能はまだまだまだ弱いと思います。

これに限らず機能特化したサービスは、ChatGPTにもできるものが多い印象。その逆はあまりないので、手間を考えるとChatGPTに集約したほうがよさそうです。

自分の個性をChatGPTの文章に宿らせる4ステップ

――文章作成の面ではChatGPTの使い勝手はいかがでしょうか?

noteに記事を毎日のように書いていて、これもChatGPTを活用しています。

完全に自分だけで書いた記事もありますが、半分以上はChatGPTを使って効率化をはかっています。

おかげで、3,000字ぐらいの記事でも、長くても2時間で書き終わります。

書き方は、まずテーマを決めます。それは私が考えます。

そのテーマから何となく思いついたキーワードをもとに「文章を書いてほしい」とChatGPTに指示します。

それだけですと、私という人間が書いたような個性は出てこないので、独自に考えた「スピリット・インジェクション・メソッド」を使います。

詳しくはnoteの記事を読んでほしいのですが、ステップ1〜4の手順があります。

日頃からアイデアを蓄積していてテキストにしています。それをもとにどんな切り口で話を展開したいのかを書き出します。これがステップ1。

ステップ2で、想定読者と私のペルソナを作成します。どのような読み手に、どんな目線で書いていくかを決めるのです。

ステップ3でプロンプトを作成し、ステップ4で生成された文章の校正をします。

おかしな部分を修正し、言い回しを自分らしく微調整していきます。この過程でもChatGPTに修正すべき点などを聞いて微調整に反映します。

こうして、自分の個性が文章に宿るのです。

使う人の能力以上のことはできない!

――聞いていて、AIが文章をゼロから書く日が到来しそうな気がしました。

多くの人は、人間よりAIの方が賢いと感じていますね。でも、私はそうは思っていなくて、AIよりも人間の方が賢いはずです。

私は本を書きましたが、堅物なAIには同じことはできません。

もう1つのポイントは、ChatGPTは「使う人の能力以上のことはできない」ということです。

おそらく一般の人たちは、ChatGPTに与えるプロンプトを魔法の呪文のように考えています。でも実際には、魔法の呪文なんてものは存在しません

むしろ、ChatGPTは、ユーザーが努力を続けて、さらなる努力の必要性をタイムリープさせるツールだと思います。

たとえば、ChatGPTなしだと100時間の努力が必要だったのが、ChatGPTのおかげで10時間でできるというツールです。

なので、その人ができないことはChatGPTといえども、つくれない

一方で、ChatGPTを使えば手を抜けるところは抜けます

今までつくった成果物をちゃんと保存して、なぜその成果物になったのかを、しっかり意識することが重要かなと思っています。

たとえば、メールへの返信文については、保存してあった既存の文章をテンプレートに状況を変えた返信文をChatGPTを用いてつくっています。

よくできた文章は再利用できるよう保存しておくのです。

――ホワイトカラーの日常的な業務でもChatGPTは力を発揮しますか?

はい、役に立つと思います。

多くの人ができない理由は「ChatGPTにはひと言しか伝えないから」。ChatGPTはエスパーではありません。

部下や同僚に仕事を頼むときのように、丁寧な説明をすることが必要です。

たとえば、PowerPointをつくる場合、まずは書く内容を決め、パラグラフ・ライティングで文章を作成します。

次に、この文章のスライドの分け方をChatGPTに提案してもらいます。

この2つの工程に分ければ、ChatGPTと協力してつくることができるようになります。

学習内容を文章化する癖をつけよ

――これからのAI時代を生き抜くための、心構えを教えてください。

巷では、ツールがたくさん並べられて、このツールがおすすめといった情報がありますが、そうした情報は基本的にはあまり役に立たないです。

ChatGPTでもなんでも、使い方がうまくなりたいのであれば、その分野についてよく学習をしたうえで、徹底的に学習内容を文章化する癖をつけるべき

その文章化のプロセスは、ChatGPTを使って時短化してかまいませんし、そうするうちに自然に必要な知識は全部身に付いていきます。

この学習プロセスを進めることで、相当時間を短縮できるはずです。

これらの文書はプロンプトとしても利用できるため、自分だけのプロンプト集となります。

ただ、最初は試行錯誤が多くて短縮はできないですが、2〜3カ月続けていくうちに、段違いの実力の差が出てきます。

仕事の成果を出しながら、手を抜くためには手を抜く方法自体を知ることはとても有益だと思います。

大塚あみさん プロフィール

2023年4月、中央大学経済学部に在学中、ChatGPTに触れたことをきっかけにプログラミングをはじめる。

授業中にChatGPTを使ってゲームアプリを内職で作った経験を、電子情報通信学会・ネットワークソフトウェア研究会にて発表。その発表が評価され、電子情報通信学会・情報ネットワーク研究会における招待講演を依頼される。

10月28日から翌年2月4日まで、毎日プログラミング作品をXに投稿する「#100日チャレンジ」を実施。その成果を、電子情報通信学会・情報ネットワーク研究会、および電子情報通信学会・ネットワークソフトウェア研究会、さらに国際学会Eurocast2024にて発表。

2024年3月、大学卒業後、大手SIerに就職する。2025年合同会社Hundredsを設立。

Source: note