Inc.: Googleのサンダー・ピチャイCEOは先ごろ、2017年の同社開発者会議で、モバイルファーストの世界から「AIファースト」の世界へ移行するのに伴い、「自社の全製品を見直している」ことを明らかにしました。このときのピチャイCEOのプレゼンテーションは、従来のプレゼンテーションスタイルとはひと味違うものでもありました。

Googleのシニアマネージャーや上級幹部によると、視覚的なストーリーテリングは、メッセージを伝えるうえで重要な役割を果たすそうです。そのため、Googleは、より大胆で新鮮なスタイル、すなわちテキストが少なくビジュアルの豊富なプレゼンテーションを行うトレーニングを受けています。

「ストーリーをもっとも良く伝えるのは、画像や写真です。そのためGoogleでは、箇条書きやテキストを多用したスライドを避けるようになっています」と、ピチャイCEOは開発者会議で語りました。実際、ピチャイCEOのスライドは驚くほどすっきりとしていました。ピチャイCEOのプレゼンテーションで真っ先に目につくのは、各スライドに広い余白がとられていることです。プロの広告デザイナーがページ全体をテキストで埋めるのを避けるように、ピチャイCEOも、スライドに余計な言葉や数字を詰め込んだりはしていません。

あるBrain Rulesに掲載されている研究によると、PowerPointのスライド1枚には、平均で約40語が含まれるそうです。ピチャイCEOのプレゼンテーションでは、最初のスライドから数えて約12枚目でようやく40語に達します。スライドの大半は写真とアニメーションです。テキストが入っている場合も、少ない語数で画像を説明するだけにとどまっていました。

たとえば、ピチャイCEOの1枚目のスライドは、Googleの主要製品(検索、YouTube、Androidなど)のロゴが7つと、「1 Billion+ Users(10億人を超えるユーザー)」というテキストで構成されています。このスライドの要点は、Googleの各製品が、毎月10億人を超えるユーザーを引き寄せていると示すことにあります。

脳は2つのことを同時にできない

ピチャイCEOとGoogleのスライドデザイナーは、「脳にやさしい」プレゼンテーションを作成しているといえます。認知科学者によると、人間は自分たちが思っているほどマルチタスクが得意ではないのだそうです。人間の脳は、2つのことを同時に、同じくらいうまく処理することはできません。プレゼンテーションのデザインに関していえば、私たちはスクリーン上のテキストを読みながら話者の話に耳を傾け、そのすべての情報を覚えていることはできません。それは不可能なのです。

ワシントン大学の生物学者で、説得術や脳の情報処理について幅広い研究を行っているジョン・メディナ氏は、これまでのPowerPointのスライドをほとんどボツにして、もっと文字が少なく絵や写真が多いものに作り直すように提言しています。メディナ氏の著書『ブレイン・ルール』には、次のように書かれています。

人間の絵や写真の記憶力は、驚くほど優れています。耳で聞いた情報は、3日後には10%しか覚えていませんが、そこに視覚情報を加えると、65%を覚えていられます。

視覚的に興味を引くスライドを作成したいのなら、「少ないほど効果的」が鉄則です。スライドデザインの第一人者ナンシー・デュアルテ氏は「3秒ルール」を推奨しています。見る人がスライドの要旨を3秒で理解できないのなら、そのスライドは複雑すぎるというのです。デュアルテ氏はこう説明しています。

スライドを広告掲示板だと考えてみてください。車を運転している人は、注意を向けている道路から一瞬だけ目を離して、広告の情報を処理します。同じように、プレゼンの聴衆が主に注意を向けるべきは、あくまで話し手の言葉であって、スライドは表示されたときにちらっと目を向けるだけのものにすぎません。

最近、箇条書きを並べた広告掲示板を目にしたことがあるでしょうか? 箇条書きは、PowerPointのスライドでもっとも簡単に作れるデザインですが、もっとも小さな効果しか得られません。

クリス・アンダーソン(Chris Anderson)氏は著書『TED TALKS』のなかで、次のように書いています。

見出しのあとに、いくつもの箇条書きで長い文章が並ぶ典型的なPowerPointのスライド資料は、聴衆の興味を完全に失わせる、もっとも確実な方法です。(中略)講演者がこの手のスライド資料を持ってTEDに来たら、まずは飲み物を用意し、コンピューター・モニターの前に一緒に座って、丁寧に許可を求めながら、削って、削って、ひたすら削ります。

アンダーソン氏によれば、箇条書きのひとつひとつの項目は、独立した1枚のスライドになります。そして箇条書きの内容はスライドに1文で示すか、丸ごと1枚の写真に置き換えます。GoogleのピチャイCEOのAIに関するプレゼンテーションでは、5枚目にそのようなスライドが見られました。そこには、「Mobile first to A.I. first.(モバイルファーストからAIファーストへ)」という5つの単語が書かれているのみです。

ピチャイCEOのスライドは、「削って、削って、ひたすら削る」というTEDのルールに沿っています。Googleで効果を上げているこの方法は、きっとあなたにも役立つはずです。

Google's CEO Doesn't Use Bullet Points and Neither Should You | Inc.

Image: Rawpixel.com/shutterstock

Source: Brain Rules, Amazon1, 2, 3

Reference: YouTube, NHK出版