企業がジェンダー的な多様性を尊重すべき理由は、数多くあります。顧客の共感を得られやすくなりますし、活用できる人材が増えるほか、フェアであることを重んじる企業になれる、といった点などが挙げられるでしょう。

今回は新たな研究によって明らかになった、さらなるメリットをご紹介します。これはかなり有力な根拠になりそうで、女性をトップに多く登用している企業は、そうでない企業と比べて、より多くの利益を上げているとのこと。

このPeterson Institute for International Economicsの研究(リンク先、PDF)は、EY(アーンスト・アンド・ヤング)と、ワシントンDCに拠点を置くシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所が共同で実施したもので、91カ国の21,980社を対象に調査が行われました。

まずは、想定内の結果から手短に説明しましょう:

調査対象となった企業のうちの半分以上で、経営幹部に女性は1人もいなかった。取締役に女性が全くいない企業の割合は60%近くに達した。女性がCEOを務めている企業は、全体の5%以下。

つまり、世界的に見て、大多数の企業ではいまだに著しい男女の不均衡が存在し、その傾向はトップに近づくほど顕著になるということです。

ここまでは予想の範囲内ですが、この研究結果が興味深くなってくるのはここからです。まず、女性取締役の数が多いと利益も大きいという相関関係の存在を示す研究結果は、ある程度は存在します。ただし、これはピーターソン研究所でこの調査の責任者を務めたMarcus Noland氏によれば、「統計学的には、そこまで確たる証拠ではない」とのことです。

また、女性がCEOを務める企業についても、男性をCEOに置く企業と比べて、業績はとりたてて良いわけでも、悪いわけでもない、という調査結果が出ています。では、有意の差をもたらす要素には、どんなものがあるのでしょうか?

実は、こうした要素は2つあります。1つ目は「C-suite」と呼ばれるCEO、CFO、COOなどの経営幹部レベルにおける女性の割合です。すでに利益を上げている企業のなかで、こうした幹部職に女性が占める割合が30%である企業を、女性幹部はいないものの、それ以外は同様の条件の企業と比較すると、前者の利益が15%大きいということが示されています。

つまり、取締役やCEOといった役職よりも、経営幹部レベルに女性を、しかもかなりの割合で置いているほうが、利益面ではずっと大きな影響があるようなのです。

2つ目の要素として、こうした幹部職につく女性が、何の問題なく家庭を持ち、維持できるような環境作りが挙げられます。例えば今回の研究では、母親になる女性に出産・育児に伴う休暇を義務付けても、幹部職に就く女性が増えるわけではないことが明らかになっています。ところが、父親に対してしっかりした育児休暇制度がある企業では、女性幹部が増えたというのです。これはなぜなのでしょうか?

父親が育児休暇を取れる家庭では、育児にかかる負担が、両親の間でより平等に分配されるからです。母親に6カ月、父親に3カ月の育児休暇を与える制度を設けている企業では、女性の幹部社員のほうが家で育児に専念する時間が長くなるでしょう。一方、両親のどちらも6カ月の休暇を取れるとしたら、母親となった幹部社員は父親に育児をまかせられるので、4カ月で仕事に復帰するかもしれません。

これは理屈で考えるとわかるのに見過ごされがちな、女性を幹部職に登用する上でのポイントの1つで、研究を行ったNoland氏はこう述べています。

父親の育休をセットにした支援策を設けることで、女性社員が子どもを持ちつつ、比較的中断が少ない形でキャリアを追求できるようにすれば、トップに登りつめる女性社員は増えるはずです。

実は、女性リーダーの増加を「望んで」いる人が多いことも、別の研究から明らかになっています。Pew Research Centerの調査によると、アメリカではかなりの割合の人が、ビジネスでも政治の世界でも、女性にリーダーとなる資質があると考えているようです。女性リーダーが少ない理由についても、女性のほうがより努力を強いられる環境によるものだと考えている人の割合が40%に達しました。

確かに社会の意識は変わりつつあるのかもしれません。とはいえ、今回の研究結果は、女性社員が上層部に食い込み、その地位を維持していくために必要な条件整備についても、現実的な取り組みが必要なことを示しています。この点についてNoland氏はこう指摘しています。

長期的に見ると、強制的に多様性を実現するよりも、教育や差別撤廃、保育制度といった、政策面での取り組みを強化することが重要です。

幹部職に就く女性を増やすには、女子学生や働く女性たちを育ててリーダーの地位に送り込む、確固としたルートの構築も必要になります。例えば、数学の成績が良い女子生徒の数が多い国では、企業の上層部で活躍する女性も多いとの結果が出ています。

それならば、やるべきことははっきりしています。女子学生に十分な教育を提供し、若い女性を積極的に雇い、幹部に登用すれば良いのです。さらに、こうしたルートを目指す女性を途切れさせないために、キャリア形成を支援する政策も必要です。トップを目指す女性の総数が多くなれば、実際に頂点にたどり着く人の数も増えるはずです。

しかも、幹部職に就いた女性は、企業の業績を向上させてくれるでしょう。これこそウィン=ウィンの関係というものです。

将来的には、女性リーダーはいなくなるでしょう。ただリーダーと呼ばれる存在だけになるのです。

--FacebookのCOO、シェリル・サンドバーグ氏の言葉

Science: Companies With Women in Top Management Are Much More Profitable | Inc.

Image: Vadim_Key/shutterstock

Source: Peterson Institute for International Economics, Pew Research Center

Reference: EY Japan, コトバンク, Wikipedia