Inc. :数カ月前、ジェフ・ベゾス氏は破壊的なイノベーションに関するある秘密を打ち明けました。それは、画期的なプロダクトやサービスを生み出すことが重要なのではなく、人びとが本当に買いたいと思うプロダクトやサービスを生み出すことが重要なのだということでした。

「Amazonには、社内では最高に盛り上がっていたのに、カスタマーにはすっかり無視されてしまった発明が山ほどあります」と、ベゾス氏はコロラドで開かれたイベントで語っています。「本当なんです、こうした発明はいかなる意味においても破壊的ではありません。破壊的とは、カスタマーに受け入れられたものだけを言うのです」

Amazonのような企業なら、大きな失敗や誤算を許すだけの体力があります。しかし、スタートアップや中小企業など多くの組織にとっては、市場に投入する前にそのプロダクトがイノベーションを起こせるのか見分けなければいけません。だからこそ、多くの企業がフォーカスグループや市場調査に、研究開発予算のかなりの部分を費やしているのです。問題は、意思決定者がデータの波に飲まれてしまい、前に進めなくなることがよくあることです。また、競合他社もみな似たような調査を行っており、差別化したアイデアを生み出すことが難しくなっています。

新しい組織においても成熟した組織においても、頭の良い経営幹部たちはこの課題を理解しています。その対策として、イノベーションのプロセスを加速、強化できる低コストの戦略を実践しています。以下に、大企業でなくとも、新しいアイデアの可能性やニーズを実証し、破産することなくイノベーションに取り組める5つのアプローチを紹介します。

1)クリック数を計測する

イノベーションの鍵はプロセスの反復にあります。アイデアを世界に投げかけ、その反応を見て手直しをしたり磨きをかけたりする作業を繰り返すのです。この反復をいかに効率的に回せるかが課題となります。うまくいかないアイデアを放棄しながら、最良のアイデアを発展させ続けなければなりません。

Adobe社は「Kickbox」イノベーション・ツールキットという取り組みをしています。従業員に10万円のプリペイドカードを渡し、まだこの世に存在しないプロダクトやサービスのオンライン広告を打てるようにしました。なお、この広告でAdobeブランドを謳うことは許されません。広告リンクをクリックしてもどこへも飛ばないからです。新しいプロダクトのタグラインや説明が優れていれば、それに見合ったクリック数を獲得することができます。このプロセスを繰り返すことで、最良のアイデアが自ずとあぶり出されてきます。

1つの実験に10万円を出せる企業は多くないかもしれませんが、小規模に広告を打つだけでもさまざまな手がかりを得ることが可能です。ちなみに、AdobeのKickboxはオープンソースになっていて、どんな組織も自分のニーズに合わせてカスタマイズして使えます。

2)できるだけ早い段階でアイデアをテストする

アイデアのバリュー・プロポジション(顧客にとっての価値と他社に対する優位性)を測るもう1つの戦略は、開発サイクルの早い段階でベータ版のウェブサイトを制作し、どれだけの人がサインアップしてくれるかをシンプルに数えることです。サイトを訪れた人のかなりの割合がプロダクトテストに協力してくれるようなら、市場ニーズを確かに捉えていると自信を持っていいでしょう。

Zapposの創設者であるNick Swinmurn氏は、地元のシューズショップで商品の写真を撮ってきて、自分のネットショップに掲載することからビジネスをスタートしました。注文が入ったら急いでシューズショップに行き、市販価格でそのシューズを買って注文者に発送していたのです。同氏がやろうとしていたことは、在庫を持たない低予算のウェブサイトを立ち上げ、人びとはインターネットでシューズを買うのだろうかという疑問をテストすることでした。たとえ利益は1ドルも得られなかったとしても、いくらか赤字を出していたとしても、この試みによりNick Swinmurn氏は将来10億ドル企業にまで成長する、新しいアイデアの実証実験を行うことができたのです。

3)ビジネスプランを1ページにまとめる

私のお気に入りのイノベーション・プロジェクトは、Kimberly-Clark社の「Huggies MomInspired Grant Program」です。同社は、大志を抱くママプレナーたち(母親起業家)から、1ページのビジネスプランを提出してもらうことで、資金を提供してきました。ビジネスプランを1ページに限定するのは、審査員が時間を節約するためだけではありません。AdobeのKickboxプログラムと同様に、スペースが限られることで、誰にでもわかりやすいものになるまでアイデアを結晶化させることができます。最も重要なことはそうすることで、フィードバックをもらったりコラボレーションが生まれたりしやすくなることです。大勢の人に詳細なビジネスプランを読んでもらうのは困難ですが、1ページだけなら誰でも数分で目を通せます。信頼できる同僚やメンター、家族に、簡単なメールを1本送るだけで貴重なフィードバックをもらうことができるのです。

4)データの量ではなく質を重視する

優れたデータは大変重要な役割を果たしますが、イノベーションプロセスの早い段階ではサンプルの数が少ないほうが、膨大なデータで定量的な傾向を見るよりも優れた洞察が得られることがあります。Chuck Templeton氏はある夜、同氏の妻が、家族で出かけるレストランをスマートフォンから予約しようと何時間も悪戦苦闘しているのを見た後、『OpenTable』のアイデアを思いつきました。もはや、市場ニーズを実証する必要はありませんでした。自宅のリビングルームで確かなニーズをリアルタイムで目撃したのですから!

ここから学べるレッスンは、あなたの身近にいる人たちの意見や考えを過小評価してはいけないということです。彼らが、ターゲット市場を代表している1人なら、なおさらです。自分のアイデアが世界に受け入れられるか知りたい? ならば、そのアイデアが友人や家族、同僚たちに受け入れられるかをまず確かめてください。それから、その外側の世界へ目を向けるようにします。

5)潜在的な競争相手を研究し、利用する

真にユニークなアイデアを思いつくことは、まず不可能です。競合が必ず表れます。最もイノベーティブな企業でさえ、肩を並べるベンチャーが必ず登場するものです。とはいえ、それは必ずしも悪いことではありません。競合他社は、アイデアを実証するという、最も困難なパートを自分たちの代わりやってくれているのだと考えることができます。

Airbnbは、投資家たちに対する最初のプレゼンで、couchsurfing.comやCraigslistを引き合いに出すことで、ホームシェアリング市場の潜在的な規模を示しました。また、こうした競合に対するより良い代替策を提供することにより、マーケットシェアを獲得できると訴えたのです。他にも、Nick Swinmurn氏は、Zapposを立ち上げる時に、カタログによる通販ビジネスを大いに参考にしました。当時、シューズ全体の5%がカタログ通販で販売されており、その売上は20億ドルにも達していました。Nick Swinmurn氏は、これだけ多くのカスタマーがわざわざハガキを書いて注文してくれるのだから、オンラインプラットフォームを使えば、さらに大きな市場が獲得できると考えたのです。

今日の世界では、より速く、より安くが、より良いプロダクトをつくる鍵となっています。不完全なアイデアを迅速に発展させる完璧なプロセスを持っている企業が、人びとが本当に受け入れてくれるプロダクトやサービスを生み出し、市場を破壊するチャンスを手にすることになるのです。

5 Ways That Companies With Small Budgets Can Test Out New Ideas Before Bringing Them to Market|Inc.

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Source: Inc.