Inc.:時代にはそれぞれのアイコンがあります。60年代と70年代にはロックスターとビート世代の詩人がアイコンでした。80年代と90年代、ウォールストリートのトレーダーたちは、『ウォール街』の主人公ゴードン・ゲッコーを崇拝し「Greed Is Good(貪欲は善だ)」をマントラとしました。近年でいえば、スティーブ・ジョブズが「とてつもなく素晴らしい」製品をつくることに徹底的にこだわり、時代精神を体現しました。

このすべてに共通する原則は、並外れたレベルの業績を達成するためには、ある種の無慈悲さ、あるいは、少なくとも創造的な狂気が必要となるというものです。だからこそ、私が自著のための調査で、真逆のことを発見したときには、本当に驚きました。

偉大な企業をつくりあげた人たちだけでなく、がんの新たな治療法や、新しいコンピューティング・アーキテクチャー、エネルギー貯蔵の新技術を開発した人びとなどに共通していたのは、ほとんどの人があたたかく、おだやかなであるということです。あまりにショックだったので、私は追加の調査を行いました。そして、神話と現実がこれほどかけ離れているのには理由があることを発見しました。

OK、ボス、私は何をすればいいですか?

投資家・エンジニアとして知られるDanny Hillis氏は、MIT人工知能研究所の大学院生だったとき、新しいタイプの並列コンピューターを設計しました。同氏が「コネクションマシン」と呼んでいたそれは、従来のアーキテクチャーよりはるかに強力なコンピューターになる可能性を秘めていました。そして、Hillis氏は新しい企業のThinking Machinesを立ち上げるための資金を募りました。

創業初日、珍しい人物の訪問を受け、Hillis氏は腰を抜かします。ノーベル賞も受賞した物理学者でクラスメイトの父でもあったリチャード・ファインマン氏が現れ「OK、ボス、私は何をすればいいですか?」と言ってきたのです。Hillis氏はあまりに驚いて、どう対応すればいいかわからず、とりあえず、事務用品を買いに行くように指示しました。ファインマン氏は喜んで出かけていきました。

その後も、この誰もが憧れるノーベル賞受賞者は、ルーターやアルゴリズムの設計、ランチの買い出し、回路基板のはんだ付けなど、あらゆる仕事をうれしそうにこなしていきました。ファインマン氏にとっては、いかなるタスクも、レベルが高すぎるということはなく、また、低すぎることもありませんでした。ファインマン氏は、なによりもチームの一員としてよろこんで取り組みました。

本を書くための調査で私が出会った人たちの多くにも、同じことがあてはまりました。まず驚いたのは、彼らのように驚異的な偉業を成し遂げた人たちが、私が彼らの仕事に興味を抱いているのと同じく、私の仕事に関心を示してくれたことです。事実確認のために原稿を送ったとき、彼らは有益なアドバイスをくれただけでなく、タイプミスを訂正してくれさえしました。彼らにとっては、どんな仕事も崇高すぎるということはなく、また、退屈すぎるということもないのです。

こうしたことが、あまりにも頻繁にあったので、私は、寛大さこそが、重要なイノベーションスキルなのではないかと考え始めました。

多様なネットワークにアクセスする

1990年代に、カーネギーメロン大学の研究者らが、「スターエンジニア」とほかの人たちとでは、何が違うのかを探る研究を行いました。研究者らはのっけから難問に直面します。「困ったことに、2年後に私たちが集めたデータを見てみても、スターエンジニアとそれ以外の人たちの間に認知的、個人的、心理的、社会的、あるいは職業的、組織的な面において、はっきりそれとわかる差異が見つからなかった」と研究者たちは書いています。

しかし、掘り下げていくにつれ、いくつかの発見もありました。スターエンジニアは「誰が知っているかを知っている」あるいは、誰が問題を解決するのに一番役立つ情報を持っていそうかをわかっているらしいことがわかってきたのです。

デザイン企業IDEOが同様の調査をしたところ、偉大なイノベーターは、さまざまな分野を横断しながら、価値ある情報源にアクセスできる「ブローカー」としての役割を演じていることがわかりました。

ノースウェスタン大学の研究では、「知識の仲介がなぜこれほど重要なのか」を説明しています。研究者らは1790万の論文を分析し、最も多く引用されている研究は、1つの伝統的な研究分野に根ざしながら、ほんのわずかだけ新奇な分野からの発見を組み合わせたものであることがわかったのです。ブレークスルーをもたらすような創造は、伝統と新規性が結合することで生まれていたのです。

これは、偉大なイノベーターがなぜあれほど楽しそうにしているのかを説明する大きなヒントになります。他者に対して寛大になり、好奇心を抱くことで、彼らは多様なネットワークを築きます。そして、そうしたネットワークを持つことで、ブレークスルーにつながる奇抜な情報に出会う可能性が高くなるのです。つまり、イノベーションにはコンビネーションが必要だということです。

アイデアを広める

革新的なアイデアを思いつくことも大切ですが、それを世に広めることも重要です。それこそが、イグナーツ・センメルヴェイス氏が直面した問題でした。彼は、ウィーン総合病院で手洗いを奨励することで、出産後の産褥熱の発生をほとんどゼロにし、無数の命を救いました。しかし、そのアイデアを医学界に受け入れさせることができず、病原菌による感染という学説が広く受け入れられるまでに、10年の歳月がかかりました。

外科医のSherwin Nuland氏が自身の著書で、上記の問題の大半はセンメルヴェイス氏自身にあったと説明しています。センメルヴェイス氏は論文を発表したり、データを集めて自身のアイデアを受け入れてもらおうと努力するかわりに、医学界にケンカを売り、強い反発を受けることになります。人は喧嘩腰でくる人の考えをなかなか受け入れようとはしないものです。

最近の事例では、「ウォール街を占拠せよ」運動があります。「We are the 99%(私たちは99%だ)」をスローガンに、世界中の同志たちを奮いたたせ、82カ国の1,000近くの都市で同様の抗議活動が行われました。しかし、熱狂したのは一部の人たちだけであり、その他大勢の関心を引くこともなく、運動はわずか数カ月で終息します。

セルビアで起こった「オトポール!」運動は対照的です。対決的で、いささか低俗ですらあった「ウォール街を占拠せよ」とは違い、主催者たちは友好的で陽気な雰囲気を醸し出すこと、抗議活動で人びとに問題行動を起こさせないことを心がけました。2年後、オトポール!の活動は、鉄の手で国を支配していたスロボダン・ミロシェヴィッチの退陣をもたらします。

現在、オトポール!運動は、世界中の活動家を訓練する組織「非暴力行為と戦略のためのセンター(CANVAS)」に形を変えて生き続けています。ここで学んだ生徒たちが、ジョージア共和国のKmara、ウクライナのPora、また「アラブの春」で重要な役割を演じたエジプトの4月6日運動など、各地の民主化運動において、重要な役割を果たすことになります。

つながりの総合計

私はまた、どんなイノベーションでも、それが誰の功績であるかを特定するのが、大変に難しいことに気づきました。たとえば、Macintoshを例に取れば、スティーブ・ジョブズはアイデアの大半をXeroxの研究者から得ていることがわかります。そして、Xeroxの研究者らは、ダグラス・エンゲルバートの研究を基礎としており、エンゲルバートは、1945年に書かれたヴァネヴァー・ブッシュの論文からインスピレーションを受けとっています。

Sun Microsystemsの共同創設者であるビル・ジョイ氏はかつて「いちばん優秀な奴らは、たいていよそにいる」と語りました。これは真実です。今日の世界で、競争力を持つためには、自分の組織をはるかに超えたところにある才能、情報、技術のエコシステムにアクセスできる必要があります。実際、ベストなもののほとんどは、どこか別の場所にあるのです。

良いニュースは、デジタル技術のおかげで、私たちはより広大な範囲にアクセスできるようになったことです。とはいえ、自ら手を差し伸べる努力はやはり必要です。すべてがつながるネットワーク時代では、競争力の源泉は、効率の総合計でなく、つながりの総合計です。ですので、私たちは自分たちの組織を、つながりをより広くより深くするように設計しなければなりません。逆のことをしてはいけません。

それは基本的な寛大さと善意から始まります。パワーは勝者にではなく、ネットワークの中心に宿ります。ライバルを打倒することではなく、友人関係を培うことで、そこへ到達することができます。

Want to Be a High Achiever? Be More Generous|Inc.

Image: oatawa/Shutterstock.com

Source: Inc., The Long Now Foundation, UCSD VLSI CAD Laboratory, Andrew Hargadon, North Western University, CANVAS, The Atlantic

Reference: Wikipedia 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8