どんな分野で働いている人でも、「そうだったのか!」とひらめく瞬間を待ちわびています。でも、インスピレーションは気まぐれで、とらえどころがありません。

とはいえ、完全なコントロールは無理でもその背景にある科学を知ることで、インスピレーションが浮かびやすいように脳を導くことはできます。その方法をご紹介しましょう。

インスピレーションに影響するのは「神経可塑性」「脳波」「睡眠」

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クリエイティビティの仕組みを過去に紹介したことがあります。その中で、もっともクリエイティブになれる瞬間は、実はベストなコンディションのときではないと説明しました。むしろ、リラックスしているとき、グロッキーなとき、あるいはちょっと酔っぱらっているときのほうが、クリエイティビティは高まるのです。その主な理由は、神経可塑性と呼ばれる概念にあります。

神経可塑性をかんたんに言えば、大人になってからでも脳が新たな結びつきや神経経路を形成し続けられることを意味します(ちなみに、1970年代ごろまでは不可能と考えられていました)。2つのアイデアを結びつけるという表現は、比喩ではありません。文字通り、脳がその構造を変えて新しいプロセスに適応しているのです。情報どうしの関係に基づいて順番を入れ替えたり結び付けたりと、記憶は連携しています。よって、脳が「可塑」であるほど、クリエイティブな思考やインスピレーションが浮かびやすくなるのです。

ところが、脳内で新たな経路を作るプロセスは、常に最高の効率で起こるわけではありません。何かに集中しているとき、脳内ではベータ波が発生しています。これは、すでに学習済みのタスクを実行するためのパワーを供給している状態です。ところが寝る時間が近づくと、脳波がだんだん遅くなります。リラックスすると脳波はアルファ波を出し、眠りに落ちる直前にはシータ波が出ます。そして、もっとも遅い脳波であるデルタ波はレム睡眠直前の深い眠りの間にしか発生しません。

もちろん、上記の話はかなり単純化しています。たとえば、「今の脳の状態はこれ!」と一概に言えるわけではありません。とはいえ、基本的な原理は変わりません。脳が新しい結びつきを形成できる、あるいは好ましくない結びつきを弱められる状態ほど、すなわち脳が可塑であるほど、インスピレーションが訪れやすいのです。

神経可塑性を高めてインスピレーションを促す

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脳の可塑性を全体的に高めることは可能です。以下に紹介する方法は、すでにやっていることかもしれませんが、まだならばぜひお試しを。脳の力を強化するにはもってこいの方法です。

運動:研究により、運動するだけで特定の脳構造における可塑性が高まることが示されています。読書:読むことで、脳における神経結合の構築が促され、可塑性の向上につながります。瞑想:以前も紹介したように、瞑想には不安解消、クリエイティビティや同情心の向上、記憶力改善といったポジティブな効果がたくさんあります。ビデオゲーム:ゲームは悪いことばかりではありません。複数の研究で、ビデオゲームは中枢神経系にある灰白質を増加させることが示されています。他にも、ビデオゲームにはたくさんのメリットがあります。

これ以外にも、神経可塑性を高める方法はたくさんあります。すべてに共通するテーマが、脳に運動をさせること。負担をかけないかぎり、脳が自ら新たな経路を築くことはありません。もちろん楽ではないし、他の筋肉と同様、脳も疲れます。それでも、魔法を起こすチャンスを増やすには、負担をかけることが必要なのです。

ところで、これは長期的な話です。では、今すぐにインスピレーションが必要な場合、どうしたらいいのでしょうか。

今すぐインスピレーションがほしいとき

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今まさに進行中のプロジェクトで画期的なアイデアが必要だというのに、何も思い浮かばない。そんなときは、以下のステップを試してみてください。

まずはインプット

白紙から素晴らしいアイデアは生まれません。それでは方向性も目的も定まらず、ただフラストレーションがたまるだけです。達成すべき明確な目標があるのであれば、いろいろな人に質問をして、できるだけ多くの情報を集めてから考えることを始めましょう。無から何かを創り出す必要があるなら、悪いアイデアも受け入れること。すべての可能性を追求するのです。即座に天才的なひらめきを得る必要はありません。まずは何かをインプットすることから始めましょう。このように蓄積された情報が、アルファ波やシータ波の状態になったときに処理されるのです。

類似作品を見る

クリエイティブ系の仕事なら、類似した作品を見てから始めるのも効果的。たとえば私は、様々な動画のタイトルバックについて解説している「Art of the Title」を見てから、Photoshopでの作業に着手します。お好みのプレイリストがある人もいるでしょう。Netflixで最初に出てきた動画をランダムに見るのが好きな人もいるでしょう。どんな分野であれ、インスピレーションが不要な仕事はありません。

アイデアを残しやすくしておく

せっかくインスピレーションが降りてきた瞬間に、ペンのインクがなかったり、ソフトがなかなか立ち上がらなかったりでは台無しになってしまいます。人によってアイデアを書き留める方法は様々ですが、そのときが来たら即座に行動に移せるようにしておきましょう。特に重要なのが、ベッドの中で何かを思いついたとき。メモの用意にお金はかかりませんが、逃したアイデアは回復不能です。

怠けることを許す

常にアクセルONの状態を良しとするアクティブなライフスタイルでは、自分の先延ばしや怠け癖にどうしようもない罪悪感を感じてしまうでしょう。でも、それはいいことではありません。アクティブで生産的な状態を自らに強要することは、クリエイティビティを妨げるだけでなく、そもそもうまく行かないのです。クリエイティビティもインスピレーションも、鞭を打って出てくるものではなく、じっくりと繰り返し考えることで浮かぶもの。毎日ちょっと立ち止まって、心の中を満たしているものを振り返り、心をさまよわせる時間を取るように心がけましょう。

フィードバックをもらう

アイデアを思いつくことができるのは脳だけです。ここで紹介した方法すべてを試しても、あなたが自分の意思で思いつくことはできないのです。

でも、他者とアイデアを交換することでさらにアイデアが生まれるというポジティブ・フィードバックが生まれます。話す相手は、あなたのやろうとしていることを理解している人でなくても構いません。サイト「The Oatmeal」は、たとえそのままでは使えないアイデアでも、それがきっかけでもっと明確に使いやすいアイデアに到達できることがあると述べています。

インスピレーションは、そうかんたんに得られるものではありません。でも、その他のいろいろなことと同様、練習で得やすくすることはできます。幸いにも脳は静的ではないので、今すぐ素晴らしいアイデアを思いつくことができなくても心配は無用です。特訓によって素晴らしいアイデアを捕まえる準備を整えておけば、あとは脳が仕事をこなしてくれるでしょう。

The Science of Inspiration (and How to Make It Work for You) | Lifehacker US

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Source: ScienceDirect, American Psychological Association, PsychCentral, NCBI, CLTL, Lifehacker US 1, 2, 3, 4, 5, 6, Art Of The Time, The Oatmeal