2015年に公開され、大ヒットを記録した劇場版オリジナルアニメ『心が叫びたがってるんだ。』。その実写版映画(7月22日公開)には、Sexy Zoneの中島健人、朝ドラヒロインの芳根京子、演技力に定評のある石井杏奈(E-girls)らが出演しているが、そのなかで、注目の新人俳優がひとり名を連ねている。野球部の元エース・田崎大樹を演じた寛一郎だ。祖父は三國連太郎、父は佐藤浩市という、いわば俳優界のサラブレッド。2017年、役者の道を歩み始めたばかりの寛一郎に、話を訊いた。

写真/木村正史

「自分を見つめ直したときに、俳優をやりたいと」(寛一郎)

──原作は完全オリジナルのアニメーション映画です。その実写版ということで、意識したことなどはありますか?

やっぱりアニメと同じようにならないようには意識しました。同じところもありながら、そこに実写ならではのオリジナリティをどうやって入れていこうかというのは、難しかったですね。それこそプレッシャーでしたし、また楽しみでもありましたね。

──オファーをもらってから、原作のアニメを観たんですか?

そうですね。オファーをいただいた後ですね。でも、アニメを観たときに一番共感できるというか、一番好きなキャラクターが僕がやった田崎という役だったので、プレッシャーもありましたけど、楽しみの方が強かったですね。

──寛一郎さんは今年から俳優としての活動をスタートさせました。これまでも散々言われてきたことだと思いますが、俳優という職業を選択した大きな理由というのは何でしょうか。

それはオヤジ(佐藤浩市)が役者だというのが一番大きな部分で、それはみなさんもう、分かってることだと思うんですけど、きっかけはやっぱりそこですね。小さい頃から一番近くにあった職業ですし、一番意識していた職業だったんですけど、本当はやりたくはなかったので。でも、やるってなったのは、それこそ、この映画じゃないですけど、思春期を終わったあたり、自分を見つめ直したときに、俳優をやりたいという感情が芽生え始めました。

──「やりたくなかった」という職業を選ぶ、そこに至るまでの覚悟や葛藤というのはすごくあったと思うんですが、今回映画を観させていただいて、年相応以上に、その覚悟を背負ったというか、内に秘めたる強さみたいなものを表情から感じられまして。

あ、本当ですか。あんまり口に出すタイプではないんですけども、秘めたるものはあると思います。

──寛一郎さんが演じられた、肘の故障で挫折した野球部の元エース・田崎という役も、普段は後輩に強い口調で指示を出したりするんですけど、それでもやっぱり言えない想いがあったりして。

そうですね。内に秘めるタイプはまた違いますけど、言葉に出せない、やっぱり心に抱えているものを出せないというのは大きくありましたね。

──最初に登場したときの、自分に苛立ってモヤモヤしたものを抱えている空虚な目、自分を肯定できるようになった後半の目の強さ、その違いも印象的だったんですが、そのあたり、どういう心情で演じられていたんですか?

自分が田崎という役を考えたときに、前半部分の田崎はなんとなく理解できたんですけど、後半部分の田崎というのは僕にとって未知で。やっぱりみんなと触れあってみないと分からないところがあって、撮影前はそこが心配だったんですけど、今回の現場はそんな心配をするヒマもなく仲良くなったので、そこらへんは助かりましたね。自然に出せました。

──主演の中島健人さんをはじめ、芳根京子さん、石井杏奈さん、同世代だからこそのチームワークに支えられましたか。

そうですね。中島くんが引っ張ってくれて、あともう、それぞれみんな心のやさしい方たちだったので、そこに飛び込めば大丈夫でした。と同時に、同世代の役者さんがお芝居しているのを生で観られるというのは、僕にはあまりない経験でしたので、感化されるところはありましたね。

──特に印象に残っているシーンなどはありますか?

やっぱりラストのミュージカル・シーンです。基本的に4人が中心に物語は進んでいくんですが、クラスメイトは27人いるんですね。その全員が役者さんで、自分より全然芝居ができる人ばかりなんです。そのなかで、僕がメインどころに立たせてもらうということは、すごく怖かったんです。でも、やらなきゃなという想いも強くあって、そこらへんが僕をすごく成長させてくれましたし、ミュージカル・シーンはクラスメイト全員が頑張って練習して、それこそ自主練もしてましたし。すごく印象に残っています。

「楽しいことじゃないので、この仕事は」(寛一郎)

──なるほど。そんななか、演じることの面白さも日ごとに感じられていると思うんですが、俳優という職業のなかで、見えてきたもの、気づいたものとかあったりしますか?

う〜ん、見えてきたもの・・・見えないです、まだ全然。何にも見えないです、真っ暗ですね。でも、真っ暗だからこそ、そこに役者の面白さがあるんじゃないかなと、最近思い始めています。

──では、その積み上げていくなかで、自分自身について気づいたこともあったのでは。

自分自身・・・いや、あんまりないかもしれないです。僕自身、頑固で自我が強いので、そこは意地でも曲げないんじゃないですかね(苦笑)。いいように変わっていけばいいですけど、まだ丸くなりたくもないですし、今の自分のままで戦っていければと思います。

──たとえば、今後どういった役者になりたいとかありますか?

いい役者になりたいですね。なにがいい役者なんだ?とよく聞かれるんですけど、僕はまだ真っ暗なんで、なにも分からないんです。ただそれを生涯にわたって探していかなければいけないと思っていて。そうですね、いい役者になりたいです。

──今はリミッターを考えずに、いろんなことをやっていたい、と。

はい、そうですね。

──それがたとえ苦しくても、そこに挑んでいきたいという強い決意がどこかしらうかがえます。

そうですね。苦しい方がたぶんいいと思います。

──普通はその苦しさが足を踏み出すことを躊躇させるわけですが、なぜそっちを?

たぶん、そっちの方が自分を成長させてくれると思うので。この映画の現場はすごく充実してましたけど、個人的にはまだ充実感はないですし、まだ感じられなくていいと思います。苦しんで、苦しんで、やっていければ。楽しいことじゃないので、この仕事は。

──俳優の苦しさを知っているからこその覚悟ですね。あと、もうひとつお聞きしてもいいですか。出演作を観るというのは、普段映画やドラマを見ているのとは違うスタンスになると思うんですが、この『心が叫びたがってるんだ。』はどうでしたか?

できるだけ客観視して観ようと思ったんですが、僕は自分の作品を観たことがあんまりないですし、それこそ、出演作を観るというのは2回目ぐらいなので、自分が出てくる場面のときは手汗が止まりませんでした。普段あんまり汗かかない方なんですが、めちゃくちゃ汗かきます。やっぱり欠点ばかり見えちゃいます(苦笑)。

──欠点とは?

大まかにはできてるかもしれないですけど、細かいところがあり過ぎて。荒削りというか、見せ方も自分自身よく分かっていないところもあるでしょうし、ツッコミどころは多かったですね。

──逆に強みは見つかりましたか。

強み・・・。なんですかね。ないんじゃないですかね。わかんないです。顔がうるさいところぐらいじゃないですか(笑)。

──うるさいという表現はあれですけど(笑)、存在感は間違いなくありますよね。それって、いわゆる見た目とは違って、抱えているものであったり、積み重ねてきたものがにじみ出てくるところだと思うんです。そのあたりは強みですよね。

そう言っていただけるとありがたいです。

──そういうところが今後に繋がっていくわけですから。次作も楽しみにしています。

はい、がんばります!