宝塚歌劇団星組公演『シラノ・ド・ベルジュラック』が、12月4日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で開幕。雪組トップスターを経て専科に属する轟悠(とどろき ゆう)が、端正な顔に大きな鼻の特殊メイクをほどこし、純愛を演じ切った。

100年以上にわたり世界中で上演されてきた、エドモン・ロスタンの戯曲を、ミュージカル化。17世紀フランスに実在の剣豪詩人をモデルにしたシラノ・ド・ベルジュラックを演じる轟は、登場場面から押し出しのある演技で、剣客ぶりとシラノの言葉のセンスを強く印象づける。

一転、愛するロクサアヌへの想いを胸に秘めるいじらしさを、ときに軽やかにときに深く表現。豪傑で繊細という、相反する魅力のシラノを生み出した。

満月の夜、同じガスコン青年隊に配属となった口下手なクリスチャンに代わり、シラノがバルコニーのロクサアヌに詩情溢れる言葉を届ける名場面は、いつしか彼女とのドラマティックな二重唱に。ロクサアヌの目線の先にはクリスチャンがいて…という、複雑なトライアングルの演出が、1枚の絵のように美しかった。

恋に盲目な女の子から包容力のある女性へと変化するロクサアヌを、優美さと芝居心を生かして演じた小桜(こざくら)ほのか。金髪をなびかせる美男子ながら、出てくる言葉は滑稽で笑いを誘うクリスチャン役の男役スター・瀬央(せお)ゆりあ。彼の優しさが垣間見える場面が胸に響いた。

ほかに、ロクサアヌに執心するド・ギッシュ伯爵に悪の匂いを漂わせた天寿光希(てんじゅ みつき)、明るいシラノの友人・ラグノオで作品に弾みを与えた極美 慎(きわみ しん)らも存在感を放つ。

本来なら6月〜7月に同劇場と「TBS赤坂ACTシアター」で上演予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が約6カ月遅れ、大阪でのみの公演となった同作。フィナーレではミラーボールの光に照らされるなか、ガスコン青年隊を思わせる瀬央中心のワイルドな群舞や、轟と小桜とのデュエットダンスが繰り広げられ、不朽の名作が華麗に完結した。

公演は12月12日まで。なお、12日15時開演の千秋楽公演が、「Rakuten TV」および「U−NEXT」にて全編ライブ配信される。視聴料は3500円。

取材・文/小野寺亜紀