コロナ禍の影響をもっとも受けたと言っても過言ではないエンタメ業界。コンサート・ライブにおける市場規模が前年比88%減(ぴあ総研調べ)となるなか、関西ライブシーンの現状とこれからについて、『OTODAMA〜音泉魂〜』を主催する「清水温泉」清水裕氏と、『RUSH BALL』のプロデューサーである「グリーンズ」力竹総明氏が24日、「インテックス大阪」(大阪市住之江区)でトークセッションをおこなった。

関西のコンサートプロモーターが一丸となり対策を模索する日々

2020年2月中頃の時点では「当事者意識はまだ薄かった」と話す2人。しかし、15日と16日に大阪の計4会場でライブハウスクラスターが発生し、26日に政府からの自粛要請が出たことで状況は一変したという。

大阪府は直後に、独自の感染防止ガイドラインを発表。しかし「原則着席、できない場合は客同士の距離を一定程度(2m程度)離す」「ステージと客席の間は一定以上確保するか、アクリル板などで遮蔽」など、条件の多くが物理的にも実現不可能なものだった。

「実際にライブハウスに行っていない行政の人とズレが生じていた」と感じたことから、ライブハウスクラスターについて調査した結果、ライブそのものが感染経路ではなく、公演後、物販所やロビーでの長時間のおしゃべりなどが原因と判明したという。

全国のライブ関係者が対策を模索するなか、6月には新しいライブ鑑賞の提案として、大阪府主催の無観客ライブ配信『−ACCESS CODE OSAKA!−』を開催。以降、感染リスクヘッジした有観客イベントへの扉を開けたのだった。

コロナ禍以降、世界的にも初となる野外フェスを大阪で実施

8月末には、全国で野外フェスや音楽イベントが軒並み中止となるなか、コロナ禍以降、世界的にも初めてとなった野外音楽フェス『RUSH BALL 2020』を「泉大津フェニックス」(大阪府泉大津市)で開催。

参加を関西圏在住者に限定し、1日の入場者数は5000人まで(例年の最大キャパは3万人)。WEB問診票の記入や大阪コロナ追跡システムの登録、入場時の検温など、ガイドラインに沿った感染対策を徹底した。「現場で修正しながら作った」(力竹氏)という立ち位置指定のリボンや柵が張り巡らされたスタンディングエリアは、当時SNSでも「運営の本気度を感じる」など注目を集めた。

力竹氏は「昨年に関してはこれ『が』良かったと思うのではなく、これ『で』良かったと。こういう形が今後のフォーマットになるのは非常に嫌だったので、アーティストやお客さんには一旦これでやらせてくださいと伝えました」と話す。

参加していた「FM802」の大抜卓人は、「このフェスはヤンチャなバンドが多く出演するので、いつもは前の方はもみくちゃになる。もしそうなったら、出演アーティストは演奏を止めようと覚悟していたけど、観客は誰ひとり動かないし、歌わなかった。みんな驚いていましたね」と振りかえる。

イベントをサポートしていた清水氏も、「お客さんの意識がすごかったですね。力竹さんたち主催者の本気が伝わったんだと思います」と、観客の音楽を楽しみたい気持ちが、感染対策への意識を高めていると話した。

フェス開催から2週間後に実施報告書が公開され、イベントによるクラスターもなく、参加者が実行した大阪コロナ追跡システム導入による関係機関からの問い合わせはなかったと報告した。

第2波、第3波、そして再びライブ業界に試練が降りかかる

入場に必要な『WEB問診』の送信、前方ブロックでの鑑賞予約といったウェブ上で「混雑防止」をおこなうアプリを導入するなど、試行錯誤しながらさまざまな感染対策を取り入れ、徐々に公演が増えだした頃に再び発令された今年1月の緊急事態宣言。

力竹氏は「また振り出しに戻った感じでした。でも昨年の6月から関西のコンサートプロモーター8社で状況を良くしていくという段階を踏めていたので、ゼロに戻ったわけでなく、スタート地点はより高いところから進められると思いました」とコメント。

清水氏も「ミュージシャンやお客さん、そして会場を守るために、エンタメを止めてはいけない。ライブは危ないものじゃないと伝え続けて、この状況でできることはないか考えていきたい」と前を向く。

今後も「普段はライバル同士ですが、困ったときは協力して打破するべき」と、関西のコンサートプロモーター8社はともに前に進んでいく決意だ。

3月30日、31日にはFM802主催のイベント『START UP!!−ロックの春2021』が、「インテックス大阪」で開催予定。清水氏、力竹氏ともに「演者や観客、会場、スタッフなどその場に集まる全員が同じ方向を向かないとイベントは成立しない」と呼びかけた。エンタメの火を消さないために。