5月5日まで大阪と東京で上演の『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』。4月9日・10日の「梅田芸術劇場メインホール」には、元花組トップスター・明日海りおを中心とする「フルコスチューム’14花組バージョン」が登場したが、到着したその舞台写真とともに公演レポートを紹介する。

宝塚歌劇団の大ヒット作『エリザベート』の25周年を記念し、歴代の出演者が数々のバージョンで競演、宝塚の大劇場公演に劣らない迫力で観客を陶酔の世界へ誘っている同コンサート。フルコスチュームバージョンではキャスト全員が扮装し、冒頭からエピローグまで歌い切る。

明日海は2014年にお披露目公演として主役の「トート=死」を演じ、その後5年半にわたってトップスターを務めた。当時も妖艶で魅力的なトートを生み出したが、そこから7年のキャリアを経て、黄泉の帝王としての凄みが増し、「不幸の始まり」や「ミルク」など他の出演者と掛け合うナンバーで、一層世界を支配しているのを感じさせた。

「最後のダンス」のゆったりとした始まりは、ベルベットボイスでブレスにまで妖しさを漂わせ、曲後半はボルテージを最大級に上げて歌い切り、拍手がしばらく鳴りやまない。

舞台上のオーケストラ演奏との阿吽の呼吸も感じさせる歌唱は、コンサートという名のステージに相応しく、全編通し少数精鋭メンバーの熱演とコーラス力もあいまって、『エリザベート』の素晴らしい旋律を堪能させてくれた。

エリザベート役は、2014年に同役で宝塚を卒業した元トップ娘役の蘭乃はな。現役当時よりどこか脆く繊細な皇后像を表現した。生と自我に芽生えた輝きを「私だけに」の熱唱に込めつつ、歳を重ねるごとに死へと傾いていく様を声色にもにじませた。

トートを崇拝し、暗殺犯でありながら語り部となるルキーニ役は、明日海が月組時代にトート役で主演した新人公演で、同じくルキーニを演じた宇月颯。ロックのグルーヴ感を身体にしみ込ませたような歌声には、余裕さえ感じる。

フランツを演じた北翔海莉の優しい眼差しと巧みな歌唱、皇太子ルドルフを演じた澄輝さやとの凛々しさと孤独な響きの歌声にも惹きつけられる。さらに10日におこなわれたライブ配信では、鳳真由の温かい包容力にあふれたフランツ、七海ひろきの麗しさ際立つルドルフも鑑賞できた。

やはりフルコスチュームでは、当時の衣装とともに華やかな舞台が瞬時に蘇ってくる。吸い込まれるような明日海トートの美の造形をはじめ、キャストたちはどの場面も完璧に役そのもので隙がない。改めて25年という宝塚の名作の歴史を感じた。

9日に、7年ぶりのトートを演じ終えた明日海は晴れ晴れとした表情。挨拶では観客の健康に気づかいつつ、「のちに、黄泉の世界で待っています!」と、「黄泉の帝王」から愛あるメッセージを投げかけ、会場は大いに沸いた。

なお、明日海は東京では望海風斗のトートを相手にエリザベートも演じる。東京公演は4月17日から5月5日、「東急シアターオーブ」にて。ライブ・ビューイング、ライブ配信も複数回予定されている。

取材・文/小野寺亜紀