歌手・布施明のデビュー55周年を記念したライブ『AKIRA FUSE 55th ANNIVERSARY LIVE TOUR 〜陽はまた君を照らすよ〜』の模様が、8月15日にWOWOWで放送される。

1965年に『君と涙とほほえみを』でデビューした布施は、『霧の摩周湖』『愛は不死鳥』『シクラメンのかほり』『君は薔薇よりも美しい』といったヒット曲を連発。年末のNHK紅白歌合戦に常連出演するなど、人気・実力ともに日本を代表する男性シンガーとして揺るぎないポジションを確立した。

布施明の魅力といえば、やはりドラマチックな情景を喚起させるパワフルで伸びやかな歌声に尽きる。日本人離れした甘いマスクで白のタキシードやヒラヒラのフリンジの衣装を纏い、フルオーケストラのゴージャスで躍動感あふれるサウンドを巧みに乗りこなし、全身全霊でシャウトする。

そんな和製エルビスかシナトラか──といったパフォーマンスで「歌の帝王」と呼ばれた彼だが、確かに、あれほどの胸のすくようなスケール感と濃密な色気を持つシンガーは、日本の歌謡曲/ポップス史においてほかにいないだろう。そして今、動画サイトなどで布施のパフォーマンスに驚いた10〜20代が、「声量おばけ」と再評価しているのも見逃せない(中国のSNSでもバズっていた)。

サウンド面へのこだわりも一通りでない布施明

60〜70年代にはアイドル的人気を博した彼だが、そのサウンド面へのこだわりも並々ならないものだった。まだブレイク前のゴダイゴのメンバーを作詞作曲・演奏に迎えた1979年のシングル『君は薔薇よりも美しい』の素晴らしさは周知の通りだが、すでに1971年の時点で稀代のシンガーソングライターだったバート・バカラックの牙城であるA&Mスタジオに赴いて、当時としては豪華&マニアックすぎるアルバム『布施明がバカラックに会った時』を発表。

同年3月にはチト河内、水谷公生、柳田ヒロといった日本のニューロックのキーパーソンをメンバーに迎え、バカラックをはじめとする洋楽カバーを織り交ぜたライブを「日生劇場」で敢行。その模様を収録したライブアルバム『日生劇場の布施明』は近年復刻され、これもまた若いロックリスナーの間で熱い支持を集めている。

今回放送されるのは、デビュー55周年を記念したコンサートツアーの追加公演としておこなわれた2021年6月6日の「東京国際フォーラム ホールA」でのステージ。公演に際して「トニー・ベネットなんて90代になってもレディー・ガガと共演しているし、僕だってまだ『この道は良かったな』と振りかえるのは早いかな、もう少し先に行きたいな」と語っていた彼。

日本の音楽史のレジェンドでありながら、いまだ貪欲な進化を続ける「帝王」布施明のドラマチックな歌世界をたっぷりと味わいたい。放送は8月15日・夜6時からWOWOWライブ・WOWOWオンデマンドにて。1カ月間はアーカイブ配信あり。

文/井口啓子