魂の奥深くに入り込むような稀有な歌声と、透明感のある美しさで「歌の妖精」とも呼ばれ、宝塚歌劇団月組トップスターとして活躍後、女優・歌手・声優としてオリジナルな輝きを放つ涼風真世。

今年デビュー40周年を迎え、記念アルバム『Fairy 〜A・I〜 愛』を9月8日にリリースする。小池修一郎×SUGIZOという斬新なコラボレーションの新曲をはじめ全14曲、男女の両パートやコーラスまで歌い切った今アルバムについて、そしてこれまでの道のりで芽生えた想いまで、Lmaga.jpの読者に向けて語ってくれた。

取材・文/小野寺亜紀

「新曲は何度もチャレンジし完成させた渾身の1曲」

──宝塚歌劇団で初舞台を踏まれてから今年で40周年を迎えられましたが、振りかえるといかがですか?

今日までの日々、ただただ必死に、前だけを向いて歩いてきました。涼風真世を必要としてくださる方や、涼風真世の歌が聴きたいと思ってくださる方がいる限り、これからもベストを尽くし、仕事を続けていきたいと思っています。

──男役時代、『ベルサイユのばら』のオスカルや『PUCK』の妖精パックといったフェアリーな役柄から、悪魔のメフィストフェレスなど色濃い役まで、幅広く演じられましたね。

男役、女役、妖精、悪魔など、さまざまな役柄を演じ、すべてが私の血となり肉となり、現在の涼風真世を形成しています。宝塚は私の原点です。宝塚歌劇団で感性を養い、研究心、努力そして新鮮さを忘れずに、緊張感を持ちながら集中して舞台に立つことを学びました。今もそれを心に留めています。

──1993年に退団後、女優としてもミュージカルやお芝居、NHK大河ドラマなどさまざまな作品に出演されましたが、特に忘れられないものは?

今年上演の『ポーの一族』で演じた二役、老ハンナとブラヴァツキーは、姿、髪型、風貌、声など試行錯誤しながら創り上げました。40年、さまざまな作品でご一緒させていただいた小池修一郎先生の舞台で、印象深いです。

──ヴァンパネラの老ハンナ、霊能者のブラヴァツキーとも、とても存在感のある演技と歌声でした。ところで涼風さんは、『るろうに剣心』のアニメ版では緋村剣心の声も演じられましたが、声優の仕事についてはどのようにお考えですか?

声優とは・・・画=絵に「魂」を吹き込む仕事と考えています。緋村剣心の「声」のトーンや、息だけで、彼の生き様や感情を表現し、言葉に想いのすべてを投入することを大切にしていました。監督の指示に従い、『るろうに剣心』の収録では三ツ矢雄二さんに、画を観ながら台本に忠実になるよう、秒数や息声、戦いのシーンの叫び声などを、細かく教えていただきました。

──あの緋村剣心の声は、そうやって生み出されたのですね。涼風さんにとって、さまざまな役を「演じる」ことの醍醐味とは?

「演じる」ことはすなわち、役柄や人物を私自身が体感することなのかもしれません。その役を分析し、考え、研究し、感情、姿形(すがたかたち)を私自身の身体で表現する。ミュージカルでは、特に声のトーンも想像し研究します。人物を疑似体験し、別人格の人生を生きる。これ以上の醍醐味はないかもしれない・・・と考えています。

──では、涼風さんにとって「歌う」こととは?

「歌う」ことは私の人生そのものです。音符に声を乗せ、言葉、言霊を伝える。感情の昂(たかぶ)りや、歌の「詩」に込められた意味を深く、濃く、探求します。コンサートやミュージカル、レコーディングなど、そのときの自分が何を伝えたいのか、自分自身と向き合い、嘘なく、聴いていただく方に想いを届けることを大切にしています。

──やはり幼い頃から音楽に触れていたのですか?

そうですね、姉が奏でるグランドピアノの音と共に過ごした幼少時代からこんにちまで、音楽は私の人生と切っても切り離せないものになっています。

──退団後もミュージカルやコンサートで歌い続けられ、今年5年ぶりのニューアルバム『Fairy 〜A・I〜 愛』をリリースされます。冒頭の新曲「地球の涙」は、宝塚の演出家・小池修一郎さんの作詞、SUGIZOさん作曲の豪華な書き下ろしとなっています。

小池修一郎先生とは、初舞台の頃から現在まで大変お世話になっています。40年の年月をご一緒させていただき、私の節目の40周年記念アルバムで作詞をお願いできないかと熱望し、オファーいたしました。

SUGIZOさんは以前、LUNA SEAのコンサートを観に行ったときにお会いし、そのロックの世界観に魅了されました。世界情勢へのメッセージや大自然に対する思いなど、共感できることが多々あり、作曲を依頼させていただきました。

──その新曲は導入部から驚きがあり、ドラマティックに盛り上がるメロディと壮大な歌詞の世界観に圧倒されました。小池さんが「地球への愛」をテーマに書かれたそうですが、レコーディングはいかがでしたか?

歌詞に込められた言霊を音符に乗せて、納得できる楽曲に至る過程でとても苦慮しました。(編曲の)三枝伸太郎さんをはじめスタッフの力をお借りし、さまざまな歌い方を試し、声のトーンも変えて何度もチャレンジし完成させた、渾身の1曲になっています。

「私は潜在的にトートを演じたいと切望していたのかもしれない」

──今回のアルバムにはほかにも、これまでの道のりを振りかえり、ご自身が作詞されたオリジナル曲「A-YU-MI(歩み)」から、「Forever Love」「マイ・ウェイ」などのカバー曲、ミュージカルの名曲まで全14曲収録されています。

思い出の曲、歌ってみたい曲、もう一度レコーディングしたかった曲など、私の願望をかなえた選曲になっています。昔読んだ本を今読みかえすと、当時とは違う感情や想いがあふれてきますが、アルバムに収録されている楽曲も、長く愛される音楽になってほしいと願っています。

──ミュージカル『エリザベート』からは、トートとルドルフのデュエット「闇が広がる」を一人二役で歌われていて、トートの迫ってくるような低音ヴォイス、ルドルフの繊細な声色、それらが合わさった深い世界観に魂が吸い寄せられるようでした。

「闇が広がる」を歌い・・・私は潜在的にトートを演じたいと切望していたのかもしれない、と改めて気づきました。1993年に出演した『ロスト・エンジェル』(メフィストフェレスを演じた小池修一郎作品)で、『エリザベート』の楽曲(原曲)に巡り合ったときから・・・。今回レコーディングでは、トート閣下とルドルフの気持ちを体感し、今は演じることが許されない男役という「神の域」に引き込まれました。

──今も充分、歌声で男役を表現されていて素晴らしかったです。『ロミオ&ジュリエット』の名曲「愛(エメ)」では、男女の両パートをこなされていますね。

ロミオとジュリエットのピュアな情熱を、2人のハーモニーとして届けられたら、と臨み、コーラスには2人の想いを見守る気持ちも込めました。歌いながら、淡い初恋の思い出が、美しく懐かしく、鮮やかによみがえりました。

──それは素敵ですね! そして、タイトルロールを演じられたミュージカル『マリー・アントワネット』からは、これもデュエット曲「愛したことだけが」を歌われています。

マリー・アントワネットとしては、捕らわれて絶望感に苛まれている現実や、フェルセンに対する愛の深さを歌いました。また、フェルセンのパートには、許されない愛の深さと、ジレンマに陥った彼の想いを込めました。

──男役を含め、色々な役を演じ、歌に真摯に向き合ってこられた涼風さんならではのアルバムになっているように思います。

これまでのすべての想いを込め、魂を注いで出来上がった渾身の作品です。アルバムを手に取り、聴いてくださる皆さまに、メッセージが届くよう願っています。

──今回、通常盤のCDに加え、今年1月の京都芸術劇場 春秋座でのコンサートを収めたDVDや、スペシャルフォトブックがセットになった生産限定盤も同時発売となりますね。

フォトブックは初舞台から40年の涼風真世の歴史を振りかえる、永久保存版になっています。制作にあたり、細かく過去をたどるなかで色々な場面や思い出があふれ、感情が昂(たかぶ)りました。また、京都は父の故郷で私の本籍地であり、ご先祖様の力も感じると言いますか・・・。表現が難しいですが、パワースポットで見守られながら、お客さまとの心の交信が生まれた素敵なコンサートとなりました。

──9月11日の誕生日には、涼風さんにとって初のオンラインイベント『涼風真世 バースデーLIVE』も予定されていますが、今のお気持ちは?

初の生配信、しかもバースデーイベントなので、何が起きるか分からないドキドキ感もあるのですが、配信を観ていただく皆さまに、楽しく「生・涼風真世」を味わっていただきたいと思います(笑)。

──最後に、今後の活動への意気込みを伺えますか。

11月に「宝塚歌劇 花組・月組100th anniversary『Greatest Moment』」に出演します。この先も、涼風真世らしく歩いていきますので、よろしくお願いします。