お笑いコンビ・ラニーノーズの洲崎貴郁と山田健人の2人が、ギター&ボーカルを務める4人組バンド・Runny Noize(ラニーノイズ)。2019年の賞レース『歌ネタ王決定戦』(MBS)でチャンピオンに輝き、お笑いの場で活躍するラニーノーズだが、お笑いよりも、バンド結成時期の方が早いという事実は、意外にも知られていない。 

2013年に現メンバーのテツヤ(Vo/Ba)と児玉(Dr)での体制となって以降、関西のライブハウスやイベントを中心に活動してきた彼ら。12月1日にリリースされる初のフルアルバム『HAKKIYOI!!!!!』では、椎名林檎率いるバンド・東京事変のメンバーで、音楽プロデューサーとしても活躍する亀田誠治を迎え、実験的な曲にも挑戦。そんな彼らに、新アルバム完成までのエピソードや意気込み、曲作りついて訊いた。

取材・文/つちだ四郎

「納得できるまで演奏、という甘えの部分がなかった」(テツヤ)

──今作のアルバムのタイトルが『HAKKIYOI!!!!!』ということですが、この由来は?

山田:毎度CDのジャケットを描いてくれる僕の兄にお願いしたときに、相撲を題材にした作品に携わっていた影響で、今回の絵を描いてきたんですよ。世界に向けて活動したいとも思っているし、外国の方の印象に残りやすいんかなってことで、絵が先行でタイトルも決まりました。

洲崎:相撲が始まる合図ということで、勢いがあっていいかなと。

──しかも今回は、あの亀田誠治さんがプロデュースに参加されているんですよね。その4曲(『Love & Peace』『Star Betray』『音の鳴る方へ』『The Name』)は、どのように制作されたんでしょうか。

山田:僕と洲崎、テツヤで何曲か作り、そこから亀田さんがピックアップするという流れでした。

テツヤ:普段のレコーディングでは1曲で何十テイクって重ねるんですけど、今回は4回くらいで終わりました。納得いくまで演奏できるっていう甘えの部分がなかったから、すごく緊張しましたね。

山田:いつもはグロッキー状態になるまで録っていたから、亀田さんにOKをもらったときは「いいんですか!?」って驚きました。全員で顔見合わせたもんなぁ。

テツヤ:僕は本当に昔から大ファンで。中学のときからバンドでコピーをして、亀田さん尽くしの音楽生活だったんで、神みたいな存在。実際にお会いしてアレンジしてもらうときに、元の曲やバンドのカラーを大改造をするわけじゃなく、「曲にえくぼをつけるんだ」って言ってくれたのが刺さりましたね。

山田:僕らの演奏に合わせて、指を鳴らしながら乗ってくれました。毎日音楽をやってるはずやのにこんな純粋に、子どもみたいに音楽を楽しめるんだって、感動しました。

洲崎:音楽をほんまに楽しんでる人やったなぁ・・・。

児玉:いいね!ってシンプルに褒めてくれたし、プレイヤーをやる気にさせる力もすごくて、場を盛り上げてくださいました。

──作詞作曲は、洲崎さん、山田さん、テツヤさんが担当されているんですよね。お互いの曲作りについて、どう感じていますか?

テツヤ:(山田)健人の作る曲は、映画やドラマに近いです。だから音楽的なところから外れることもあるけど独創性が高くて、なかなか出てこない発想で・・・。洲崎の曲はなんていうか、曲のタネから花咲くように出来上がるっていう感じですね。洲崎らしくてバンドぽい曲づくりだなって思います。

山田:僕と洲崎は感覚派なんですけど、音楽理論がしっかりしてるテツヤが形にしてくれます。

洲崎:テツヤの曲は「ベーシストとしての曲」という意味でも好きです。最近も練習で「あの曲のベース弾いて」って言うほど、ベースに聞き入りますね。

──児玉さんはドラマーの立場から見て、いかがでしょう。

児玉:僕自身は、基本的に曲を作れないので。3人それぞれの曲のタネがあって、そこに僕がどういうドラミングをするかっていうのを相談し作り上げていきます。テツヤも洲崎も、きれいな作り方だけど、山田は・・・例えるならジャングル。どういう構造をしているのか、想像できなくて面白いです。

──それぞれの個性が表れているんですね。 メンバー間でぶつかり合うことはないですか?

洲崎:山田がパッションタイプなので、ぶつかることも当然あります。でも、ヒートアップしたあとも終わればただの友だちにスッと戻ります。

児玉:ぶつかり合いで、より良いものができますしね。

山田:洲崎は、誰にも怒らないタイプなんです。でもたまに僕がブチギレさせてしまって大説教をくらう。それに洲崎が全体を見てバランスを調整してくれるのに対して、僕はすぐ破壊しそうになるので、洲崎がどう丸め込むかが正直楽しみになってます(笑)。

「芸人とバンド、分けているつもりはない」(山田)

──山田さんと洲崎さんは、お笑いコンビ・ラニーノーズとしても、「破壊とバランス」という役割なのでしょうか?

山田:考えてみたら、同世代でやっていない音曲漫才で芸人として始まっているんで。お笑いでもそこから破壊が始まってるのかも。単独ライブでも、僕のアイデアがぶっ飛んでしまうのを、洲崎が安定志向で収めてくれます。

──バンドマンと芸人、切り替えは難しくないですか?

山田:個人的には分けてるつもりはなくて。MCでは芸人全開で喋っても演奏が始まったら暴れたりするし、スッと切り替えているつもりです。

洲崎:でも、他人からの見られ方は変わっているかもしれません。やっぱりやってることは違いますしね。

山田:機材トラブルがあったときいくらでもトークで繋げられたので、そこは強みかもしれないです。でもやっぱりスケジュール調整が難しいかな。漫才を何本かしてからワンマンライブ、みたいな日もありました。児玉とテツヤがリハをしてくれて、僕らはお笑いの仕事が終わって飛び込みでライブハウスってこともあります。

洲崎:よく芸人とバンドマンを『両立してる』って言っていただけますけど。でもリハーサルはできてないし、これって両立って言っていいんかなって最近思い始めました。2019年とかは、全国のライブハウスにも行けたりしたんですけど、本来はもっといろんなところに行きたいんです。

山田:全国ツアーはやったことないし、そこが2つのことをやる難しさなんかな。

──芸人さんならではですね。でもこうやってお話をうかがっていると、テツヤさんと児玉さんも負けずに個性的だなと感じます。

山田:僕と洲崎よりもしゃべりますよ、2人は。僕らが黙って聞いてるくらいです。

児玉:ずーっと喋ってるしボケてます。

テツヤ:バンドマンって意外とおしゃべりなんですよ。

「何かひとつ、いつもと違うことを」(洲崎)

──洲崎さんが制作された『The Name』は、ご家族について歌った曲だとか。結成当時は、そんな曲を作る自分を想像していましたか?

洲崎:してませんでしたね・・・。でも、結婚して子どもが生まれるってなったときは「作るやろな」と、どこかで思いました。基本的に曲作りはメロディーが先にできて、後から歌詞を乗せるスタイルなんですけど、この曲は「家族の曲を作ろう」という思いから作りました。

──表題曲の『音の鳴る方へ』は、山田さんが「歌詞が思いつかない」という気持ちをそのまま歌詞にしたと伺いましたが、バンドや音楽について歌っているようにも思えました。

山田:亀田さんプロデュースということで、ハードルも上がって。でも嘘をつくのは違うし。だから歌詞に苦戦したことを、そのまま歌いました。でもサビのはじまり以外は僕らが置かれている状態についても書いているので、どんな解釈でもアリです!

テツヤ:俺は音曲漫才のことだと思ってたけどな。亀田さんが山田に「それぞれのパートを歌うメンバーのことを思って書いてほしい」ってオーダーしたので、色々な解釈ができますね。

──とある曲では、それぞれの楽器を入れ替えた部分があるとか。

テツヤ:下手に演奏してみたい、って発想から始まり「お酒飲んでベロベロになって演奏しよう」となったけど、時間がなくて。そこで楽器チェンジすることになり、健人がドラム、洲崎がベース、僕と児玉がギターを弾きました。

──そうなんですね。今作は挑戦的な要素が多いように感じますが、何か意識されたことは。

洲崎:やっぱり亀田さんのプロデュースが、影響として大きいですよね。何かひとつ、いつもと違うことをしたいと思ったんです。僕の場合は「家族」を歌った『The Name』でした。

山田:僕はずっと作りたいなと思っていたホラーパンクな曲、『I fell in love with a ZOMBIE〜俺はゾンビに恋をした〜』です。アホなんですよ、基本的にホラーパンクって。そこをちょっとドラマチックにしています。叫び声とか銃声とか入ってて、スタッフさんも『ほんまに入れるの?』って感じでしたけど、そのまま入れました。ゾンビの声は某テーマパークでゾンビ役経験のある児玉が(笑)。

児玉:ここで経験が生きるんやって(笑)。

テツヤ:これまでやってないことを、各々でチャレンジしていくというアルバムになりましたね。ブックレットもページごとに自分たちでデザインしたので、これまでより人間味が出せたと思います。

──最後に、バンド初となる「なんばHatch」(大阪市浪速区)でのワンマンライブの意気込みを聞かせてください。

山田:「芸人やりながら音楽もやっていこう」って頃、四星球さんのライブを「なんばHatch」に観に行かせてもらってました。まだ当時はNSC生で、「ここに立ちたいな」って話してた場所で、芸歴9年目にしてライブができるのが感無量です。そういう意味でもいいワンマンライブにしたい。

洲崎:あんなでっかいところでやるのもはじめて。僕はメンバーのなかで誰よりも緊張するから、その景色を見てより緊張が高まってしまうんじゃないかなって。でもそれ以上に興奮して楽しめるだろうし、むしろ緊張さえ楽しみたいです。年末だけど、ぜひ来てほしいです!

Runny Noize初のフルアルバム『HAKKIYOI!!!!!』は、12月1日発売。リリースを記念したワンマンライブは12月28日に「なんばHatch」にて開催する。チケットは3500円、現在発売中。