京都出身のバンド・10−FEETのボーカル&ギターとして、数多のライブキッズたちを熱狂させてきたTAKUMA。今回、漫画家の友人のたっての希望から、ソロ名義「卓真」として現在公開中の映画『軍艦少年』(佐藤寛太主演)の主題歌を書き下ろした。

長崎の軍艦島を舞台に「喪失と再生」が描かれた作品を軸に、ソロプロジェクトに臨む心境や、長年のバンド人生で培われた卓真の人生観、歌詞に込められた想いを訊いた。

取材・文/つちだ四郎

■「10−FEETでやりたいことは一切変わってない」(卓真)

──ソロの「卓真」としての楽曲リリースは、映画『軍艦少年』の原作者である柳内大樹さんから直接オファーがあったということですが。

そうですね。個人的に付き合いがある柳内くんが、「TAKUMAの声が好きやし、やってくれへんか」と電話をくれて。これまでも「10−FEETのTAKUMA」として弾き語りはしてたんですけど、「卓真」として曲を作るのは今回のオファーがきっかけです。

曲は、2020年の4月に僕のYouTubeチャンネルで『何処かに』という名前で公開していて。当時は情報解禁前だったので仮題だったんですが、タイトルは『軍艦少年』にしたいなと考えてました。

──漫画家という違ったフィールドで活躍する柳内さんとは、どういうきっかけで知り合ったのでしょうか。

『京都大作戦』(10−FEETが主催する夏フェス)で、俳優のやべきょうすけさんが柳内くんを連れてきてくれたのが初対面でした。今振りかえると、彼は知らない相手に話しかけたりする男じゃないんですけどね。でも僕に興味を抱いてくれたらしくて、話をしているうちに意気投合しました。

──友人直々に連絡があったということで、プレッシャーは感じませんでしたか?

あったかもしれないです。でも、ソロ名義初の曲作りということもあり、楽しさや面白さからガッと進められましたね。

柳内くんとは何度も飲んだ仲ですが、意外と音楽や漫画の話はそんなにしなくて。そんななか、初めてお互いが本職として取り組んでいるものでコラボレーションをおこなうことになりました。かなり重い気持ちがあったんだろうけど、なるべく軽く聞こえるように話をしてくれたんだと感じたので、一緒に作品を作るような気持ちで楽曲に取り組みましたね。

──「一緒に作品を作るような気持ち」というと、やはり原作のイメージを重点に置きつつ制作に取り組んだのでしょうか。

「作品への思い」と「自分の歌いたいこと」、半分ずつ考えながらですね。作曲に入ると、特定の場面を思い浮かべるわけじゃなく「どんなメロディーがいいかな」みたいな思考に入り、作品について忘れている瞬間もあります。結局、僕の心のなかにあるものを曲や詞にしていくことが、1番柳内くんの期待にこたえることになるのかなと。

──ソロでの曲と、10−FEETとしての曲。制作にあたって、異なる部分はありましたか。

うーん、改めて考えるとけっこう別モノかもしれない。曲調自体は、バンドと大差ないんですよ。僕としても「10−FEETと差別化しよう」みたいな意識もなくて。

でも、バンドの場合、ギターが僕だけなので「自分が必ず弾く」ということが前提にあります。ソロの場合、仲間のミュージシャンもギターとして入ってくれているので、ライブで自分が必ずしもギターを弾いてなきゃいけないわけでもない。編成に違いがあるだけで、曲作りも違ってくるんだなと感じました。

──ソロ活動について、バンドメンバーであるNAOKIさんとKOUICHIさんと何か話はされましたか?

バンドで集まって各々の活動の話をする機会も増えていて、そのとき「ソロ活動を始めたけど、バンドが嫌とか、ソロでしか表現できないことがあるわけじゃない」みたいなことを、そのまま伝えました。10−FEETでやりたいことは一切変わってないし、まだ全然達成できてないと思ってますから。

付き合いが長いと、思っていることはある程度伝わっていくじゃないですか。照れくさかったり、慣れた関係だからこそ言わないことの方が多い。でも、あえて気持ちを言っておいた方がいいこともあるなって。だって、口にすること自体は造作もないことでしょ?

■「みんな、もっと余計なお世話したらいいのに」(卓真)

──映画で主人公一家の良き理解者である巌(赤井英和)のことを、卓真さんは「あんな友だちが居たらいいなと思います」とコメントされています。でも、10−FEETのライブを観ていると、むしろ卓真さんが巌に近い人物なのではと感じますが。

僕はあんなに無骨で男らしい人間じゃないですけどね。例えば、仲間がバンドを辞めようとしているとき、僕は「バンドも本人も好きで、辞めてほしくない」って気持ちで引き止めますけど、結果は変わらないかもしれないし、本人たちにしか分からない事情もある。外野が首を突っ込むことではないかもしれないです。

でも「外野」って、野球でいうなら「客席」ほど他人ではないでしょ。黙っているだけなら誰でもできますけど、「あれは悔しかったよな」みたいな話をするだけで思い直せるかもしれないし。

──卓真さんご自身も、周囲から言葉をかけてもらった経験があるからこそ至った境地でしょうか。

「バンド辞める」云々じゃなくても、似た状況になったことはあります。そのときは、僕も友だちから電話をもらっても応えられなかったりして。

精神的に状態がよくないときって、周囲は気遣いから「なるべくそっとしておこう」となることが多くないですか? 「どうせ電話しても出ないやろ、重荷になるんちゃうか」とかね。でも、そういうときにかけられた言葉は、心のなかにすごく残る。

──そのときは向き合えなくても、後になってかけてもらった言葉が響くこともありますよね。

そうですね。それに、いくら仲間からの言葉でも、本当に決断をした場合は揺らがないと思うんです。それでも辞めなかったのは、心の底にまだ「やりたい」という気持ちもあったわけだろうし。「人生」という物語において、巌みたいな存在がいなかったら、チャプターが1章減ると思うんですよ。だからみんな、もっと「余計なお世話」をしたら良いのになって思いますけどね。

──なるほど。

映画でも似た描写がありますけど、最後に何かを決めるのは結局、その人自身で。本人が立ち直らないとどうにもならないこともあります。それは分かったうえで、お互いに好き合っている関係なら、何かしら口出ししてもいんじゃないかと僕は思います。

■ 映画『軍艦少年』はしんどい状況の人にも刺さる作品(卓真)

──同じくリリース時のコメントに、「過去の後悔を乗り越える力は、後悔が生み出す」とあります。こちらも、卓真さんご自身の経験から出た言葉なのでしょうか。

そう感じた経験は、これまで何度もありました。沈むこともあれば、ネガティブだった状態から前向きなものに持っていけたこともある。人って、うまくいってるときは自分の気持ちの持ちようを改めて学んだり、基本的な部分を見返したりしませんよね。

──やはり、音楽活動を通してのことですか?

それもありますし、家族や過去の恋路とか、仲間とか、すべてです。ミスや過ちがなくても、ネガティブな事柄を事前に想像しながら学べる人はいます。でも僕は、そういうタイプじゃなくてパッパラパーな人間で。だからずっこけながらかさぶたを作って、皮膚を分厚くして生きてくしかないと思ってます。

──卓真さんの人生観をうかがうと、歌詞に登場する「見つからないモノを探して」というフレーズがより印象的です。この少しほろ苦いフレーズには、どのような意味が込められているのでしょうか。

人って、何かを失ったらそれとまったく同じものが欲しくなるもの。でも、現実はそんなわけにもいかないですよね。それなら、似たものでもいいからそれをぶら下げて、元気でいて欲しいっていう思いがあって。

二度と戻らないものを望んでいるときって、一般的にいえばネガティブな状態です。でも、少なくとも無感情ではないはず。そんな思いをせめて歌にして、つらい現状を酒のあてにして。1日をなんとか楽しくやってけたら、みんなもそうであったらいいなって思います。 

──今作では、登場人物が苦しみから再生しようともがく姿が描かれています。そこで『軍艦少年』が流れるタイミングがまた、絶妙ですよね。

いいタイミングで曲を使ってもらって、僕もうれしかったです。ネガティブなときって、どうしても性格がひん曲がってしまって。そんなとき、完璧な人から「ポジティブに!強く!」と言われても、響かないし。そういうときは、自分と似た状況の人に「無理やんな、しんどいよな」とか言われた方が頑張れたりしません?

きっと、自分にとって「いい状態」を保っていた方が、ハッピーやラッキーが舞い込むやろうから。誰かにとって、そうなれるような曲になってたらいいですね。

──最後に、卓真さんから見て映画『軍艦少年』はどのような人に観てほしい作品だと思いますか?

楽曲って、いくら美しい詞であっても歌詞を必要としない人には届きません。そういう人に届けるには、リズムやメロディー、曲自体がよくないといけない。

そういう意味では映画『軍艦少年』は、出演者のカッコよさや殺陣の迫力とか、普段は見られないエリアの軍艦島とか・・・。いろんな人が楽しめる要素があるし、しんどい状況の人にも刺さる作品です。なにせ原作者の柳内くん自ら「原作越えしてる!」って太鼓判を押すほどなので。

カップリング曲『アゲハ』も収録のデジタルシングル『軍艦少年』は11月24日リリース。映画『軍艦少年』は、12月10日より公開中。