『M−1グランプリ』の絶対的審査員として、視聴者だけでなく、芸人からも一目置かれる漫才師・オール巨人。今年3月には『漫才論:僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス)を上梓、まさに漫才界のご意見番だ。そんなオール巨人が、M−1審査員やこれまで歩んできた漫才道についてインタビューに応えた。

「分からへんのに審査したらアカン」

M−1審査員の去就について、上沼恵美子とオール巨人は常に話題の中心にいる。誰もが認める実力派でありながら、若い漫才にもそれなりの一家言があり、さまざまなスタイルの漫才に対しても博識。しかし、その2人はすでに審査員からの引退を表明している。

「なんで審査員を辞めるかって言ったら、ホンマに疲れるんですよ。もう、メッチャしんどい。それに『M−1』って、審査員も審査されるっていうところがあるでしょ。でも最近、ゲームのネタとか出てきたり、分からない話題になるときがあって。それがもうダメなんですよ。自分が分からへんのに審査したらアカンでしょ」

「ほんならお前、ゲームのことを勉強してから審査したらええやん、ってわけでしょ。いやもうね、70才にもなってそれはようせんわと。それを考えるとね、(明石家)さんまはなんでも知ってて偉いなあって思いますわ」

「まぁ、間違った認識ですね」

若手漫才師にとって審査員のコメントはまさに緊張の一瞬。ましてや数々の功績を残してきた大ベテラン・オール巨人なら、なおのことだ。しかし、そんな彼も若かりし頃、夢路いとし・こいしや中田ダイマル・ラケットといった巨匠たちの漫才はあまり面白いと思わなかったと著書『漫才論』で告白している。

「この世界に入ったときは、そうおもろいと思わへんかったですよ。上手さもわからない。やっぱりね、自分の方がおもろい、上手いとか思ってたんかな。まぁ、間違った認識ですね。ああいう漫才じゃなく、まだ見えない理想を求めてたかも」

「今の若手とかNSCの学生とか、いとこい先生の漫才がおもろい言う子はいてないと思いますよ、たぶん。あの面白さ、上手さを理解できない。昔の人はホンマ、上手かったです。『こんなん俺らもできるわ』って思ってたけど、全然できない」

そして、「漫才作家さんが原稿用紙に書いたものを自分の漫才にするというのは、これもまた難しい」とも言う。

「人が書いたものをやるって、めちゃめちゃ難しいんですよ。自分で書いたものはやりやすいんですけど。だからデビューして3本目くらいはおもろいんですけど、4本目からね、全然おもろない。自分の引き出しを全部出してしもうてるから。その後が勝負。要は、人が書いた台本をどんだけ演じられるか、どうか」

「お客さんは年寄りと思って見てないね」

デビューから47年。押しも押されもせぬ大ベテランとなったオール巨人だが、著書では「引退の日に一花咲かす」とも綴っている。

「いつどうやって辞めようかなって考えてますね。漫才師の『終活』みたいな。漫才師に、『今日で終わろう』っていう引退は無い。僕も今年で71歳になるけど、西川きよし師匠はまだまだ現役やし、上を見たらナンボでもいてはるし」

「そもそもお客さんはオール阪神・巨人を年寄りと思って見てないね。お客さんが漫才をしてる僕らを見て、『歳いったなぁ』とか『悲壮感が出てきたなぁ』と思ったら、それはすぐ辞めます。まだ、そこは大丈夫かと思う」

劇場を大爆笑に包むオール阪神・巨人の漫才は、まだまだ終わりそうにない。

聞き手/ミルクマン斉藤 写真/渡邉一生