『大阪・関西万博』に向けて、12月から自動運転バスの実証実験が大阪市のベイエリアでスタートした。その一方でバス運転手の一部からは、「自動運転の普及で職がなくなるのでは?」という不安の声も上がる。

2020年1月19日まで自動運転バスの実証実験をおこなっている「大阪シティバス」(本社:大阪市西区)。同社では2020年度に湾岸部4路線で自動運転バスを運行し、市内を走る自動運転バスの本数を2024年度までに20路線へ拡大する目標がある。

その一方で、バス運転手にとって自動運転は死活問題。「自動運転バスに最初に取り組みだした際、社内では『運転手の仕事がなくなるのか?』という声もあった」と、同社の山野内部長は打ち明ける。

実際、自動運転にはレベル1〜5までの定義があり、レベル5の完全自動運転が普及すれば運転手は不要。しかし現状は、ハンドル操作やアクセル・ブレーキなどがシステム制御されたレベル2までは実用化されているものの、レベル5へとステップアップするにはまだまだ法整備も含めて課題は山積みだ。

そんななか、2019年末に法改正がおこなわれたことで2020年には普及に拍車のかかるレベル3。こちらは一定条件下で、運転手が補佐的な役割を担う必要がある自動運転だ。

「自動運転バスはセンサー類で危険を検知でき、人の目が加わることでさらに安全度が上がる。運転の補助的な存在になることで余裕ができ、よりお客さまへのサービス向上という可能性を秘めている」と前出の山野内部長。

「自動運転が普及することで、もっとバスという移動手段を前向きにとらえることができる」と、運転手はただ運転するだけだなく、サービス業としての一面を担うために必要不可欠であると語った。

なかでも同社では2021年度までにオンデマンドバスを運行予定。事前予約すると、好きな時間に最寄りの停留所にバスが到着し、予約状況に合わせたルートで運行する便利な移動手段だ。狭い道も走行できる小さなバスで、より細かな移動ニーズに対応するという。

しかし同社広報の永澤さんは、「現在も全国的な運転手不足」と業界の現状も訴えかける。高齢者の運転免許返納が進み、交通手段として公共交通機関へのニーズはさらに高まるなか、運転手は職を失うよりも、常に募集している状況が続いているのだという。

永澤さんは、「自動運転の普及は、少子高齢化によってさらに労働力不足が深刻化していく、近い将来への対応策でもあります」と切実な思いも打ち明けたが、今後さらに多様化する「移動」ニーズに対応していくため、まだまだ運転手は安泰なようだ。

取材・文・写真/岡田由佳子