社会現象にもなっている週刊少年ジャンプの漫画『鬼滅の刃』(集英社/著・吾峠呼世晴)の聖地として、奈良県内各所が報道され、全国のコスプレイヤーから注目を集めているのをご存じだろうか?

同作品は、主人公・竈門炭治郎(かまど たんじろう)が人喰い鬼に殺された親の仇をとり、鬼と化した妹を人間に戻すため、鬼狩り集団「鬼殺隊」剣士として生きる姿を描く大正ロマン奇譚だ。

奈良県といえば古代史というイメージが一般的だが、大正時代が舞台の同作で、いかに撮影を楽しめるのか? 県内在住のコスプレイヤー・銀とき子さんと、『鬼滅の刃』聖地となったエリアの観光協会担当者に訊いてみた。

炭治郎コスでの巨石斬りは、『一刀石』がある柳生で

第1巻の名シーンが再現できるのは「柳生の里」(奈良県奈良市)だ。鬼殺隊に入隊すべく修業をし、師(鱗滝左近次/うろこだきさこんじ)から、巨石を斬るよう言われた炭治郎。兄弟子との勝負で、見事この巨石を切るのだが、その名シーンを「再現できる」とコスプレイヤーから大人気なのが柳生の『一刀石』なのだ。

柳生は、徳川将軍家に兵法指南役として仕えた柳生但馬守宗矩(やぎゅうたじまのかみむねのり)が初代藩主として治めた地。宗矩の父・宗厳(石舟斎)は、柳生新陰流の兵法家で、この地は剣豪の里として知られている。

この石は、石舟斎(柳生宗厳)が天狗との試合で一刀両断したと伝わる巨石(高さ約2メートル、幅約7メートル)で、炭治郎コスだけでなく、天狗面をつけている鱗滝左近次コスで撮影する人もいる。

柳生観光協会の黒田さんは、「ツイッターで(一刀石が)似てるよねと話題になっていたんです。それで、コスプレイヤーの皆さまの問い合わせから、柳生全体でコスプレを受け入れる体制を整えました」と説明する。

実は同作品だけでなく、以前から柳生各地で、『刀剣乱舞』(日本刀を擬人化した大人気ゲーム)などさまざまな作品のコスプレ撮影を楽しむファンが増加。そのため、11カ所の撮影許可を協会経由でまとめて取れるようにし、民泊「奈良柳生邸」にて1人1000円で着替え場所の提供をおこなっている。

またコスプレイヤーからの提案で、公式ツイッターアカウント開設や「#やぎゅこす」のハッシュタグも制作。こうして柳生は、コスプレイヤーたちとの二人三脚により、コスプレの聖地として認知されるようになった。今も『一刀石』での撮影は変わらず人気だという。

宮司が聖地を発信!人気キャラ・我妻善逸の大技を再現

コスプレイヤーである銀とき子さんは、人気上位キャラ・我妻善逸や医者として人間界になじむ美貌のキャラ、珠代などのキャラクターとして奈良県内各所で撮影を楽しむ。その彼女が、善逸姿で、神社に許可を得て、新たな聖地として広めたのが「葛木坐火雷神社(かつらきにいますほのいかづちじんじゃ)」(奈良県葛城市)だ。

主祭神の一柱は、『火雷大神(ほのいかずちのおおかみ)』で、雷神であり火神。我妻が編み出した最終奥義「雷の呼吸漆ノ型火雷神」と名前が同じということで、社号前で技を繰り出すと、加工しなくても技名が浮き上がって漫画のシーンを再現できる。

「この神社の宮司様が『鬼滅の刃』のファンなんですよ」と銀さん。葛城市観光協会の西川さんも、「宮司様がSNSで鬼滅の刃コスプレで撮影したらおもしろいと発信されていて、そこにコスプレイヤーさん(銀さん)が実践してくれた。これがきっかけで葛城市内を知ってもらえて、ありがたいです」と好意的だ。

観光協会は、万全の体制でコスプレイヤーを受け入れ

コスプレイヤー発信で注目を集めはじめた奈良県の観光スポットだが、両観光協会とも「コスプレイヤーに好意的で協力的」という点が共通する。黒田さん(柳生観光協会)は、「今までの観光客は、歴史好きな高齢層が多かったが、注目されたおかげで、コスプレのため家族連れや友人同士で来てくれるなど年齢層が広がりました。季節を変えて何度も撮影に来てくれ、リピーターになってくれるんです」と話す。

また銀さんも、「葛城市内の當麻寺中之坊には、めずらしいイノシシの飾り瓦があるので、嘴平伊之助(はしびらいのすけ/主人公の同期の剣士で猪の被り物を着用)コスで撮影できますよ。今後は、時代劇の撮影にも使われた五條新町(五條市)や朝ドラ撮影に使われた今井町(橿原市)、鉄道の町・王寺町のSLなど、『鬼滅の刃』コスプレ撮影向きの場所をもっと探していきたい」とファンとして、県内の撮影スポットを開拓していくという。

お目当ての写真が撮れるように事前に許可を取って、マナーを守り、奈良県で『鬼滅の刃』の世界観にどっぷり浸る・・・新しい奈良の楽しみ方が広がりそうだ。

取材・写真/いずみゆか