ゴミ箱に捨てられた空き缶、束ねた古雑誌…。なんとこれ、陶でできた彫刻作品なんです。「京都国立近代美術館」(京都市左京区)で3月7日まで展示中の三島喜美代さんの作品に「お茶目すぎる」とツイートした大岡寛典さんに、4万人が「いいね」と共感。

大岡さんのご職業は、美術展のアートディレクター。アート作品を見慣れている大岡さんが「凄くてのけぞった」ポイントとは? 実は、ツイート内での三島さんのお名前に間違いがあり「お名前を間違えたままでバズらせたマンとして、お詫びの気持ちで取材を受けます」とのお申し出。ありがたく、じっくり解説いただきました。

「超絶技巧系の工芸作品って、モチーフの『らしさ』を異素材に写し取る作業ですよね。それが象牙、だったり石だったり、価値を納得できる骨董的マテリアルで、ほほ〜みたいな。三島さんの場合はゴミや日用品、マンガ雑誌など、ありふれた大量生産品、消えてしまう消費財をモチーフにして、それをめっちゃ丁寧に質感まで再現されている…。しかも廃品回収に出される時のように積み重なったりゴミ箱に入ったりしている状態で展示されてて。『偉ぶり』がゼロに感じたんですね」(大岡さん)。

「空き缶の作品は、デザインのディテールも丁寧に写し取られてるんですが、消費財ゆえにトレンドの移り変わりも早くて。もう廃盤商品だったり、同じ商品でもロゴが古かったり、パッケージデザインが微妙に懐かしい。でもよく見たら、ゴミ箱の一番上のほうにノンアル飲料の「オールフリー」の缶が入っててwここまだ最近!最新版もアップデートされてる〜〜〜!と。お歳を重ねられつつ、偉ぶらず、ユーモアの心を持ち続けていらっしゃって、軽やか。お茶目さを感じるのは、そのあたりですね」(大岡さん)。

三島喜美代さんは、1932年大阪生まれで、1960年代から現在まで、十三(大阪市淀川区)と岐阜県土岐市を拠点に制作するアーティスト。1971年から、ゴミや新聞紙、雑誌を細密に再現した陶による彫刻作品を制作。そのそっくりぶりで世間を驚かせつつ、「割れるゴミ作品」「割れる情報」というコンセプトで現代の消費社会、情報社会に警鐘をならす。

近年、国内外で注目度急上昇中で、2021年4月には「森美術館」(東京都港区)での『アナザーエナジー展』、10月には「パリ市立近代美術館」でのグループ展『The Flames. The Age of Ceramics』に出展する予定。

御歳89歳。「命がけで遊んでいます」と語る三島さん。どうやらご本人も相当にお茶目であることが、SNS上で伝わってきた。

「ちょっと面白かったのが、検索していたら、三島さんの十三のアトリエのご近所に住んでいらっしゃる方がいて、その方の過去ツイートがええ話だったので繋げておいたんですね」(大岡さん)。

「そしたら、そのツイートもRTが伸びたので、ツイ主さんが驚いて『最近三島さんが「森美術館の館長さんが作品取りにくるっていうから、慌てて家を綺麗にしてる」ってボヤいてた』というエピソードを追記でツイートされてたんです」。

「わ!それ片岡館長!そうか『アナザーエナジー展』(世界の女性アーティスト16人を選出する展覧会、森美術館で2021年4月21日より開催)に出品されるんか…!と。片岡さんが着目されてるポイントが自分のなかで重なって、それを偶然にご近所さんのツイッターで知る…。SNS面白いなあ…と感じたエピソードでした」(大岡さん)。

三島喜美代さんの作品は、「京都国立近代美術館」で3月7日まで開催中の『2020第4回コレクション展』に作品が展示されているほか、ギャラリー「艸居アネックス」(京都市中京区)でも、2月27日まで個展を開催中。こちらでは、初期の貴重な作品から2020年の新作までが展示されている。

取材・写真/沢田眉香子