SciShowはHank Green(ハンク・グリーン)たちがサイエンスに関する話題をわかりやすく解説するYouTubeチャンネルです。
生活習慣や遺伝子によって数年の差はあるものの、50歳くらいで閉経が訪れると言われています。もしも遺伝子を残すことが種としての最優先事項であるならば、高齢でも出産できるほうが子孫繁栄には有利なはずですが、一体なぜ更年期や閉経といったものが存在するのでしょうか。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、哺乳類のなかでもシャチとコビレゴンドウと人間の3種に限られるという閉経について、進化生物学の見地から説明します。

更年期障害がある哺乳類はわずか3種類

ハンク・グリーン氏:みなさんは、鏡で見た自分の見た目や、靴のサイズ、ストレスを感じた時に起こる煩わしい頭痛など、自分の体のことはよく知っていると思っているでしょう。しかし、人間の体は謎に満ちています。そのなかでも更年期障害は、ほとんど理解されていない現象の中の1つです。

更年期障害は、生活習慣や遺伝子によって数年の差はあるものの、50歳くらいで月経が終わり、人生が終わる何年も前に子供を作る能力を失うことをいいますが、神様を崇拝する遺伝子の観点から言っても、あまり有益とは思えません。

事実、このような更年期障害があると知られている哺乳類は3種類しかいないのですが、人間もその中の1つなのです。これは、進化生物学者が更年期障害がなぜ起こるのかという原因を解明するのをより困難にしていますが、いくつかの推論はあります。

卵巣を持って生まれる人は、その中には100万近い卵母細胞と呼ばれる未熟な卵を持っています。そして、思春期を過ぎると1ヶ月に1度、卵母細胞が成熟し子宮へと移動します。精子との接触がないと見なされると、卵母細胞は他の組織と血液と共に体の外へと流されて行きます。

それが月経であり、この毎月のサイクルは、卵母細胞を成熟させるように脳下垂体から出されるFSH(卵胞刺激ホルモン)を含むホルモンによって調整され、エストロゲンと黄体ホルモンが卵巣から分泌されます。

35歳あたりから、妊娠する可能性は低くなり、妊娠の継続も難しくなります。また、染色体異常などの多くの合併症を伴う可能性があります。卵母細胞とエストロゲンの減少によって、ホルモンのサイクルが不安定になり、脳下垂体がそれを補うためにより多くのFSHを出し始めます。そして、ついに50歳近くになると月経が不定期になり、やがて閉経します。卵子は成熟しなくなり、その後の妊娠は望めないのが更年期障害なのです。

思春期を経験した誰もが知っているように、ホルモンが変化すると多くの副作用を引き起こします。更年期障害の場合は、生殖能力が断ち切られますが、人は大抵その後も何年も生きていきます。人の命の自然の段階ですが、他の哺乳類にはその段階はなく、シャチとコビレゴンドウだけに当てはまります。

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象やシャチから生まれた“おばあちゃん仮説”

長年に渡って進化生物学者は、更年期障害がなぜ存在するのかを解明しようとしてきました。

比較的初期の頃の意見は、更年期障害は人の寿命が突然長くなったことで起こり、おそらく私たちの体には生殖能力の限界が組み込まれているのだろうと考えられていました。更年期障害は自然淘汰によって起こったのではなく、ただ起こったという推論であったので、この意見は非適応の理論と見なされていました。

今日の人間の平均寿命が以前よりも長いことは事実ですが、それでも全体像をしっかりと説明できてはいません。この2種族のクジラが飛沫を上げている写真を含む全体像です。彼らは急速に寿命を延ばしたわけではないのに、私たちと同じような更年期障害を持っていることの説明がつきません。

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また母仮説と呼ばれる推論では、更年期障害は年老いた母になる危険性を避けるために、順応性によって起こるのだと言われています。

先ほど、高齢妊娠では合併症の危険性が増すと述べましたが、高齢者は以前のように食べ物を見つけられなかったり、病気に感染しやすく死んでしまう可能性が高いという事実も避けられません。もし、彼らに赤ん坊がいれば、その子供も生き残れないかもしれません。しかし危険性が増すからと言って、遺伝子を残すことを一切諦めてしまうことは、私たちの知る進化論の理論に合致しませんし、この仮説は象を見て見ぬふりをすることになってしまいます。

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象は、何十年も生きる哺乳類ですが、高齢になっても合併症を起こすことなく赤ちゃんを産むことができます。ここで一番有力なのは、おばあちゃん仮説であり、それは子供が成長してから群れを離れるのかどうかという、家族内の力関係と関わりがあるようです。

科学者たちは、シャチ、象、原始人の3つの寿命の長い動物の社会性を比べました。この3つのグループすべてで、年長の動物が食べ物の確保や危険に関してなど、生涯その知識で群れを助けていますが、このうちの2つのグループだけに更年期障害があります。

シャチの群れでは、メスもオスも両方の子供が群れに残る傾向にあります。年長のシャチはより家族との結びつきを深めていくことになります。年上の母シャチと娘シャチが同時に妊娠して、娘シャチの子供がよりよく育つことも確認されています。

年長の雌のシャチが自分の子供を助けるよりも、多くの孫の生存を助けることで、遺伝的遺産を後押ししているのかもしれません。そして、それをおばあちゃん仮説と呼んでいるのです。

一方で、象は母権制社会です。息子は群れを離れて新しい群れへと合流するので、家族の結びつきはシャチほど強くありません。年長のメス象は世話をしなければならい子孫が近くにいないので、遺伝子を残すために繁殖し続けるのかもしれません。

最後に、多くの人類学者たちは、原始人の女性たちはおおむね新しい家族に加わって子供を産んだのだろうと考えています。シャチのように徐々に新しいグループの一員としての関わりを深めていったのです。もし繁殖を続けるより、子供たちの世話を優先したことが原因なのだとしたら、なぜ私たちとシャチの両方の種族に更年期障害があるのかを一応、説明することができます。

この推論は、決定的な結論ではありませんし、これらの要因がいくつか重なったものがその答えなのかもしれません。私たちはいまだに、どのように人間の体が変化し、いつ頃から更年期障害を持つようになったのかも知りません。

しかし、おそらく何にしてもおばあちゃんを称賛するのはよいことなのではないでしょうか。おばあちゃん、ありがとう。私のおばあちゃんや世の中の全てのおばあちゃん、あなたは素晴らしいと思います。