今週火曜日(13日)、静岡県庁のエレベーターから現れたのは…。

根方ゆき乃記者:「JR東海の金子社長が知事室前に到着しました。これから2年ぶりのトップ会談が行われます」

川勝知事:「暑い中、ようこそ起こしいただきまして」
金子社長:「よろしくお願いします。ありがとうございます」

静岡県の川勝平太知事が出迎えたのは、リニアの建設工事を進めるJR東海の金子慎社長。

川勝知事:「どうぞおかけください」
金子社長:「どうもありがとうございます。よろしくお願いします」
川勝知事:「何年ぶり…」
金子社長:「前、お目にかかってから2年ちょっとですね。(前回は)2020年の6月でございました」
川勝知事:「あっという間ですね」
静岡県の職員:「すいません撮影やめてください。申し訳ないです」

2年ぶりとなる、川勝知事と金子社長のトップ会談。今回の会談はJR東海からの申し入れを知事が受け入れて実現しました。JR東海が会談を求めた理由。それはリニア問題をめぐる最近の川勝知事の発言を“憂慮”したからだといいます。

社長が『憂慮』した知事の発言とは

その発言というのが…。

静岡県 川勝平太知事(8月23日):「とにかくできるところからやっていくこと以外に、建設を促進する方法はないだろうと。(相模原市の)橋本あたりから甲府に行き交うことが、一種の暫定開業として唯一可能な場所であると私は今のところ思っている」

川勝知事が主張するリニア新幹線の神奈川−山梨間の部分開業です。この発言の2週間後、知事の姿は神奈川県駅の建設予定地にありました。

静岡県 川勝平太知事(7日):「(部分開業の)可能性を探りに来たわけだが、その可能性は8割方あると思った」

持論である神奈川−山梨間の部分開業に手ごたえを示した川勝知事。しかし、視察を終えて、その部分開業ですら実現が難しいと発言したのです。

静岡県 川勝平太知事(7日):「車両基地の問題は、これ私どもきょう発見したのでショックでしたね、ショックでした。仮に来年2023年に造成に入ったとするでしょう。(車両基地の完成まで)丸11年かかるから、2023年足す11は2034年になる。2034年にならないと、なんと山梨と神奈川すらできない。部分的な開業も、そもそもそこ(車両基地)ができない限り、絵に描いた餅になることを残念に思っている」

車両基地の用地取得が不十分だと指摘したのです。さらに視察翌日にも“川勝節”で、JR東海の対応を批判していました。

静岡県 川勝平太知事(8日):「(建設が)遅れている事情を静岡県だけに着せてきたところの一因は、JR東海社長以下のキャンペーンであったと同時に、そのままうのみにして2027年にできるということで、靴に足を合わせるのではなくて、足に靴を合わせるわけでしょ? ですから、現実に合わせないと靴は履けません。そういうのと同じで、現実がどうなっているか分からない限り2027年の開業、これを題目のように唱えても題目は実現しません。題目は題目でしかない」

知事の主張に対し、JR東海の金子社長は―

JR東海 金子慎社長(8日):「私たちは土地のだいたい半分ぐらいを取得している。用地を取得したところから工事を進めていくと、いろんな工程をパラレルに(並行して)行うとか、工程の短縮がきくから、短縮をして仕上げるつもり。2027年の開業は残念ながら静岡県の工事がまだ着手できていないので難しい状況だが、他の工事の工程は緩めずに、(神奈川に建設する)関東車両基地も含めてしっかり進めていきたい」

2年前のトップ会談は『平行線』

混沌とした局面の中で行われた、2年ぶり2回目となる川勝知事と金子社長のトップ会談。前回は2027年の開業に間に合わせるため、速やかに静岡工区で着工しなければならない差し迫ったタイミングでの会談でした。

しかし、会談は平行線をたどりました。

川勝知事(2020年):「社長がどういうことか知らないが、静岡県が2027年開業の足を引っ張っているかのごとき発言を繰り返しているのを聞いて…」

JR東海 金子慎社長:「それはどういうことでしょうか」

こんな一幕もありました。

川勝知事:「どうぞ。これは大井川の水で作られた牧之原台地のお茶で、しかも今年は牧之原台地のお茶を宮中に献上いたしました。そのお茶です」
JR東海 金子慎社長:「恐れ多くて飲んでいいのか…」

川勝知事:「牧之原の水は皆、大井川から得ている、その農業芸術品です、どうぞ」

今回の会談は『非公開』

前回のトップ会談はインターネットで生配信されましたが、電撃的に実現した今回の会談は非公開で行われ、1時間余りで終了しました。今回の会談について、2人はどう思ったのか。

JR東海 金子慎社長:「知事と直接コミュニケーションをとって、いろんなお話をさせていただいて良かったと思います」

川勝知事も…。

静岡県 川勝平太知事:「お目にかかって話して良かったと思いますね」

しかし、2人の見解が一致したのは、この点についてだけでした。

金子社長は静岡県がリニア建設促進期成同盟会に加盟したことを踏まえて、唯一未着工となっている静岡工区での早期着工を求めたといいます。

JR東海 金子慎社長:「やっぱり今、静岡工区が着工出来ていないということが、この先の名古屋開業の目途が立っていないことになっているわけで、是非私たちは水の問題、それから南アルプスの環境保全の問題、いろいろやらなくてはいけないことは重々承知していますけれども、それを前提に、それを一生懸命やるので、ぜひ知事からも静岡工区の着手についてご理解、ご協力をお願いしたいと申し上げました」

静岡県 川勝平太知事:「静岡工区、先進坑を掘ってから水を戻す。先進坑を掘る前に工事用トンネルを掘らなくちゃいけない。その土砂どうするんですかという問題がありますと。盛り土の問題がありますと申し上げて、これをクリアしなくちゃなりませんよと」

Q.早期着工の理解を求められたが、今の段階では解決すべき問題がたくさんあるので、すぐに応じることができないとお伝えした?

A.「早期着工のためにやるべき手続きをやっているわけですね。まだ生態系の問題もこれからですし、盛り土の問題も非常に大きいです。こうした事がクリアできていない」

川勝知事の持論「部分開業」については

会談では川勝知事の持論である神奈川−山梨間の部分開業も議論されました。

JR東海 金子慎社長:「私の方から部分開業という中間駅と中間駅を結んで開業するということは考えていないと」

静岡県 川勝平太知事:「私はできるところからやったほうがいいんじゃないかと」

先日、リニア新幹線の神奈川県駅の予定地を視察した川勝知事。同じ相模原市に建設する車両基地の建設の遅れによって、静岡工区の着工に関わらず2027年開業には間に合わないと指摘していました。

これについても…。

JR東海 金子慎社長:「(知事は)用地の取得が全然進んでいないという認識であったので、そうではなくて、ここはいろいろ問題があるけれども、だいたい半分、5割程度の用地の取得は進んでいると。工事の内容からして、できるところから進めると。全体の工程を遅らせるということにはならない。静岡工区について、やっぱりなかなか着手できないということが全体の工程、開業の目途を難しくしているということを何度か申し上げました」

静岡県 川勝平太知事:「社長のご説明では用地取得は半分ぐらい出来ていて、できたところから(工事を)やっていけば、何とか2027年に間に合わせられると、間に合わせたいと、そういう希望を言われました。私は資料をお見せして、(全工程で)11年かかるのに、用地買収なしにどのぐらいできるのか、ちょっと懸念を持った訳であります」

トップ会談はまたしても平行線、互いの認識の違いが鮮明になった形です。静岡工区をめぐる互いの溝は全く埋まる気配がありません。

トップ会談翌日、川勝知事が山梨県駅の建設予定地を視察

火曜日に行われたJR東海、金子社長とのトップ会談の翌日。川勝知事の姿は山梨県甲府市にありました。元々、山梨県で行われる「中央日本4県サミット」に出席する予定でしたが、それに先立ち、急きょリニア中央新幹線・山梨県駅の建設予定地を非公開で視察しました。

根方ゆき乃記者:「甲府市の南側に位置するこちらの田園地帯に山梨県駅が造られる予定です。現在まだ手は付けられておらず、あたりには田んぼや畑が広がっています」

山梨県駅の建設が予定されているのは甲府市南部にある大津町。中央自動車道が近くを通り、スマートインターの整備が予定されています。

山梨県民 30代:「遠出しやすくなっていいかな。関西とかあっちの方面に出やすくなるので、今は東京に出て新幹線で行くのが多いので、それが直通になるとすごく楽。なるべく早く開通するといいかなと思っている」

山梨県民 40代:「東京に行くことがたまにあるので、特急だと1時間半くらいかかるが、リニアだと数十分で着く。早く開通してもらいたいのが率直な感想」

川勝知事は近くにある建物3階から建設予定地を眺め、JR東海の担当者から説明を受けたということです。

川勝知事「期成同盟会副会長として使命感を持って、調査や研究に時間をとる」

視察後、取材に応じた川勝知事は―

静岡県 川勝平太知事:「きょうはリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の副会長として、こちらにまいりました。駅は4年ぐらいでできると。そして、(実験線から駅まで)6キロの延伸ですね。これを合わせると2027年が目途になっていて、それまでにほぼ確実にできるという説明を受け、また現場を見て、かなりJR東海の管理地も札がかかったりして田畑のところに、うまくいっているなと」

工事が順調に進んでいるとの認識を示しました。しかし、持論である部分開業について、記者に問われると…。

Q.知事が主張されている部分開業や2027年開業の考え方は、今回の視察で変化や影響を与えるようなものはあったか?

静岡県 川勝平太知事:「実はもうリニアは今の時代に合わないと、分散自立型のネットワークである時代に入っているのでいらないという意見が非常に強いわけですね。本当に今必要なのか、そういう危機感が、新しい生活様式というものが、今のリニアについての再考を迫っているという危機感が、きのうのJR東海の金子さんは、使命感はすごいんですよ。造っていかなくちゃならないんだと、名古屋までが開業だと。それを全線開通のごとくに言っておられますけど、それ自体が部分開業であり、大阪まで行くための暫定開業なんですね。従来のビジネスモデルと違うものを考える時期だと。私はそういう危機感を持って、同時に期成同盟会の副会長として使命感を持って、今こういう調査や研究にあえて時間をとってきていると、こういうことであります」