道具を使うことを覚え、知的能力を獲得

4本足の動物の多くは、前足と後ろ足で多少の違いはあるものの、機能には大差がありません。

しかし、ヒトの場合は違います。二足歩行をするようになったことで、手と足の役割が明確に分かれたのです。

手は、親指を発達させたことで、物をつかむなどの細かい動作ができるようになりました。腕とつながっていることで、物を動かせるようにもなりました。それだけではありません。道具を使うことを覚えたことで、脳の発達を促し、知的能力を獲得することができたのです。

見た目の構造は違っても骨格はほとんど同じ

では、足はどうでしょう。足は体を支えるとともに、歩行や走行などの運動機能を持っています。二足で立つために踵(かかと)から足先までを地面につけました。また、足底(そくてい)をアーチ状の土踏(つちふ)まずにすることで、体重を分散し、衝撃を和らげる形へと発達しました。その結果、足の指(趾骨(しこつ)は手の指(指骨(しこつ)よりも短く、甲が長くなっています。

見た目と役割こそ異なるものの、骨格を比べてみると手の骨は片手で27 個、足の骨は片足で26個であり、似たような構造をしています。これらの骨はバラバラにならないよう、靱帯で関節をつないでおり、指が長くなっている点では同じです。

もとは同じ「足」だったものの、役割が分業化されたことで、脳の発達が促され、人類の進化にひと役買うことになったのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 解剖学の話』
著:坂井建雄 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
順天堂大学保健医療学部特任教授、日本医史学会理事長。1953 年、大阪府生まれ。1978 年、東京大学医学部卒業後、ドイツのハイデルベルグ大学に留学。帰国後、東京大学医学部助教授、順天堂大学医学部教授を歴任。医学博士。専門は解剖学、細胞生物学、医学史。専門書だけでなく一般向け書籍まで、著書、監修書を多数刊行。近著書は、『医学全史』(ちくま新書)、『図説医学の歴史』(医学書院)など。