色即是 空(しきそくぜくう)

「色即是空」は、あまりにも有名なフレーズです。仏教にことさら関心のない方でも、一度は聞いたことがあるでしょう。

すぐれた表現であり、存在感のある言葉ですが、般若心経のなかでの位置づけは、先の「五蘊皆空」の内容説明にすぎません。かつ、意味としては、すぐ前の「色不異空、空不異色」を強調して、「色は空である」とくり返しているだけです。

しかし、くり返すのは、それだけ「空」という概念が重要だからです。「空」についての話を続けることにしましょう。

スペースがあるから水が入り、両者は不可分

インドの宗教史上、仏教が掲げた最もユニークな概念が、「空」です。もっとも、空という言葉自体は、もともとインドではありふれた語の一つでした。インド人は、この言葉から、数学史上、最大の発見といわれる数字の「ゼロ」を導き出しました。一方、インド仏教は、瞑想の極地のヴィジョンとして、「空」を再発見したのです。

前項で、「空は空性(空であるという性質)を意味し、スペースと理解してもよい」と述べました。ならば「色(物質すべて)=スペース」とはどういう意味でしょうか。

先ほどの例でいうと、コップに空性(スペース)がなければ、水が入る余地はありませんから、コップにおいて水と空性は不可分の関係にあります。

そこに空性なくして水はありえず、水なくして空性は意味をなしません。物質と空性の、このような関係性をいい表したのが、「色即是空」なのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 般若心経』
著:宮坂宥洪 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
真言宗の僧、仏教学者。1950年、長野県岡谷市生まれ。高野山大学仏教学科卒。名古屋大学大学院在学中、文部省国際交流制度でインド・プネー大学に留学し、哲学博士の学位取得。岡谷市の真言宗智山派照光寺住職。

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