2026年大会から出場枠が48に

 最悪の状況は脱したが、まだまだ予断を許さない。

 今年11月に開幕するサッカーW杯カタール大会。アジア最終予選グループBで、日本は2位につけている。

1位 サウジアラビア5勝1分け、勝ち点16
2位 日本4勝2敗、勝ち点12
3位 オーストラリア3勝1敗2分け、勝ち点11

 すんなり出場権を得られるのはグループ2位まで。3位だとプレーオフに回らなければならなくなる。

 このプレーオフの仕組みが厄介だ。まずは今年5月か6月に予定されているA組3位との一戦に勝ち、アジア5位の座を確保する必要がある。

 それから大陸間のプレーオフに移行する。アジア5位は南米5位と対戦し、勝利した国に出場権が与えられる。

 アジア最終予選をドキドキ、ハラハラしながら見守るのは今回が最後だろう。

 というのも、W杯はカナダ、メキシコ、米国の3カ国共同で開催される2026年大会から48カ国・地域の参加が決定しているからだ。

 32カ国・地域から48カ国・地域へ。実に1・5倍の増加である。これによりアジアの出場枠は8・5にまで拡大される。1998年フランス大会から2018年のロシア大会まで6大会連続出場を果たしている日本にすれば、フリーパス同然の“広き門”である。

 日本中が息を凝らして見つめた“ドーハの悲劇”や“ジョホールバルの歓喜”のような壮大なドラマは、もうアジア最終予選では起きないと考えていいだろう。

 アジア最終予選では、監督解任劇も起きた。98年フランス大会出場を目指すアジア最終予選、敵地アルマトイに乗り込んだ日本は伏兵のカザフスタンにロスタイムで追い付かれ、勝ち点3を逃した。

 その夜、加茂周監督の電撃解任が決定し、岡田武史コーチが代表監督に就任したのだ。名付けるなら“アルマトイの政変”である。

 結果的には、この監督交代劇が成功し、“ジョホールバルの歓喜”を経て、日本は夢にまで見たW杯初出場を果たすのである。

 このようにアジアを勝ちぬくのは容易ではなく、茨の道をくぐり抜けることによって日本は成長を遂げてきたのだ。

 その意味で、大盤振る舞いのような26年大会からの“広き門”は、緊張感の喪失につながりかねず、手放しで歓迎はできない。また48カ国・地域がW杯の適正数だとも思えないのだが、これはもう決定事項だ。

 スリルこそがアジア最終予選の醍醐味だったのだが・・・。

(初出=週刊漫画ゴラク2022年1月14日発売号)

二宮清純
(にのみや・せいじゅん)

スポーツジャーナリスト。1960年愛媛県生まれ。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で幅広い取材活動を展開中。1999年6月より、インターネット・マガジン「Sports Communications」(http://www.ninomiyasports.com)を開設。 新刊『証言 昭和平成プロ野球 語り継ぎたいあの伝説と事件の真相』(廣済堂新書)が好評発売中。他に『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)、『スポーツを「視る」技術』(同)、『勝者の思考法』(PHP新書)、『プロ野球裁判』(学陽書房)、『人を動かす勝者の言葉』(東京書籍)、『歓喜と絶望のオリンピック名勝負物語』(廣済堂新書)など、著書多数。

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