弟子たちがブッダの言葉をまとめ文章にした

ブッダは、自らの教えを文字で書き残しませんでした。弟子たちがブッダの発する言葉を心にとどめ、それを仲間や新たな入信者たちに口伝(くでん)することで、教えは広まっていったのです。

ところがブッダの入滅後、弟子たちの解釈がバラバラで、違いがあることがわかってきました。

そこで、紀元前477年ごろ、500人ほどの弟子が集い、互いの記憶を確認しながらブッダの教えの統一をはかりました。これを「*結集(けつじゅう)」といいます。この合議の結果がまとめ上げられて文章となったのが、仏教における教典の最初です。

原初的な主要なお経(教典、経典)には、阿含経(あごんきょう)、法句経(ほっくきょう)、四分律(しぶんりつ)などがあります。

阿含経はブッダの教えが直接伝えられているお経です。法句経は423編からなる韻文詩(いんぶんし)です。四分律は、僧が日常守るべき規則をまとめた戒律集です。

ほかの宗教ではこうした段階のものが根本教典として崇拝の対象になりますが、仏教ではそうなりませんでした。第1回の結集から約100年後、再び結集が開かれました。この時代には教団内部の対立が深刻となり、二派に分裂することになったのです。

これ以降、枝葉が伸びるように分派が進んでいくことになりますが、仏教では、これらの各派がお経を注釈したものまで教典に含めていったため、その数が膨大になっていったのです。

ここがほかの宗教の経典・聖典とは異なるところで、その全貌は研究者の間でも把握しきれていないということです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。