上座部仏教は南、 大乗仏教は北へと伝わった

戒律に厳しい上座部仏教と、大衆に受け入れられやすい大乗仏教―。それぞれは、どのようなルートを経て広まっていったのでしょうか。

上座部仏教は紀元前3世紀、インドからスリランカに伝えられ、王族の庇護を受けて大いに発展します。さらに、インド東部の陸路を経由するルート、スリランカから海路を経由するルートにより、ミャンマー、タイ、カンボジア、マレーシアなどの東南アジア全般に伝播しました。

これを「南伝仏教(なんでんぶっきょう)」と呼んでいます。

タイやカンボジアなどで、鮮やかな法衣(ほうい)を身にまとった僧が*托鉢(たくはつ)を行なう様子をよく目にしますが、彼らは出家主義と厳しい戒律のもとで修行する上座部仏教の僧侶なのです。

大乗仏教はまず、インド北部からガンダーラ地方(現在のパキスタン北西部)に伝えられます。ここは、現在では人口のほとんどがイスラム教を信奉する地域ですが、仏教に関連した遺跡もたくさん残っています。

ガンダーラから中央アジアの国々を経て中国に伝わります。中国は仏教国というイメージが強いのですが、伝来したのは紀元1世紀ごろとされています。

そして、朝鮮半島、日本、台湾などに伝播していきます。これを「北伝仏教(ほくでんぶっきょう)」と呼んでいます。

この一方で、仏教を生んだ国、インドはどうなのでしょうか。インドでは、ヒンドゥー教が仏教以前から盛んで、民族宗教ともいわれています。さらにほかの宗教からも圧迫され、現在では仏教徒は総人口の1%にも満たないほどです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。