酸素をつくる微生物はシアノバクテリアだ

現在の地球の表面には、大気があります。この大気の組成は、窒素が78%、酸素が21%、炭酸ガスが0.03%などとなっています。ところが、原始の地球には酸素がほとんどなく、炭酸ガス、塩酸、亜硫酸ガス、窒素などが大気に含まれていました。

そんな地球にどうして酸素が生じたのでしょうか。答えは、いまから35〜27億年前に酸素をつくる細菌が生まれたから、というものです。そうしてこの細菌の働きで酸素が大気のなかに入り込み、ずっと後世になって私たちのような酸素を呼吸する生物が生まれたのです。

その酸素をつくる細菌がシアノバクテリアです。シアノバクテリアは、植物と同じように光合成をおこなって酸素を発生させることができる唯一のグループです。光合成をおこなうとともに、炭酸ガスを吸収して糖分を産生して自分の体をつくります。

光合成をおこなう細菌として、光合成細菌という酸素を発生させないグループもあります。シアノバクテリアは、これらとはまったく異なるグループであることが知られています。太古の海でシアノバクテリアは、浅い海中で日光を浴びて酸素をつくりながら光合成をおこない増殖していったのでしょう。このような状況が先カブンリア時代からずっと続いたと考えらます。

シアノバクテリアは、単細胞の生物ですが、いくつもの細胞が結合したまま増殖するものもあります。この結合したまま増殖してストロマトライトと呼ばれる塊(かたまり)を形成します。このストロマトライトにはそのまま化石となったものがあり、世界中のかつて浅い海だった場所から発見されています。シアノバクテリアの塊としては、現在でも西オーストラリアのシャーク湾には、生きたストロマトライトが存在し、1991年には、ユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されています。

酸素ができたおかげで、いろいろな変化が起きました。例えば、鉄鉱石は、海に溶けていた鉄分がシアノバクテリアのつくった酸素と反応し、酸化鉄となります。酸化鉄は錆(さ)びた鉄のことで、海中で大量に縞状(しまじょう)となって堆積しました。地殻変動でその堆積物が地上に現れたのが鉄鉱石の鉱山です。シアノバクテリアがいなければ、私たちは大量に鉄を手に入れることができませんでした。

現在の私たちは、酸素がないと生きていけませんが、大昔の海でつくられた酸素は、体のなかのいろいろな成分を酸化してしまう猛毒でした。この猛毒を無毒化するために多くの細胞は、酸素を取り込んで摂取した栄養を燃焼させ、炭酸ガスと水に変えてしまう、呼吸という機能を獲得したものと考えられています。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 微生物の話』
著者:山形洋平  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1961年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒業。東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻(博士課程後期)修了。東北大学農学部助手、東京農工大学共生科学研究院准教授、東京農工大学大学院農学研究院准教授を経て、現在は東京農工大学大学院農学研究院教授。農学博士。趣味は、醗酵食品の食べ歩きと醸造飲料の飲み歩き。