手製の顕微鏡で極小生物を発見した「微生物学の父」

人類は、ビールやワインなどのアルコール飲料やパン焼きなどで古くから微生物の恩恵には預かっていましたが、それが微生物の働きだとはまったく知りませんでした。人類が初めて微生物を見たのは、17世紀のことです。オランダのレーベンフック(Antoni von Leevenhoek;1632-1723)が微生物を観察した最初の人であると言われています。デルフトという港町の織物商でもあり、役人でもあったそうです。自分で約200倍程度の単レンズの光学顕微鏡を作製しました。この顕微鏡でさまざまなものを観察したと言います。

レーベンフックは、水たまり、雨水、スープ、ワインなどいろいろなものを観察しました。これらのなかに見たことがないような微小な動物を発見しました。彼は、アニマルクル(animalcule)と名付け、それが世界で初の微生物報告になるとされたのです。

レーベンフックは、観察した微生物の姿かたちをスケッチに残しています。また、ちょうどこのころ、イギリスに王立協会が設立され、レーベンフックは観察結果を王立協会に送り続けました。そうしてレーベンフックは、1680年に王立協会の会員になります。

レーベンフックが観察したものは、そのスケッチから、原生動物、藻そう類るい、酵母、細菌などさまざまであり、原生動物たちが、卵を生む様子も観察しています。こうした功績を持ってレーベンフックは「微生物学の父」と呼ばれているのです。

レーベンフックは、どんな人だったのでしょうか。実は、レーベンフックと画家のフェルメールは、ふたりともデルフトの出身で、フェルメールが亡くなったあと、レーベンフックがフェルメールの遺産の管理をしたと言われています。また、フェルメールの作品のなかに「地理学者」と「天文学者」という作品がありますが、この2つは、レーベンフックがモデルではないかと言われているそうです。よく見ると2つの作品の学者は同じ顔立ちをしています。

オランダのライデン大学そばのブルーハーフェ博物館には、レーベンフックの顕微鏡が展示されています。お土産でレーベンフックの顕微鏡のレプリカもありますよ。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 微生物の話』
著者:山形洋平  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1961年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒業。東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻(博士課程後期)修了。東北大学農学部助手、東京農工大学共生科学研究院准教授、東京農工大学大学院農学研究院准教授を経て、現在は東京農工大学大学院農学研究院教授。農学博士。趣味は、醗酵食品の食べ歩きと醸造飲料の飲み歩き。