強く洗うと皮膚常在菌のバリアが壊れ、病原菌の侵入を許す

人の皮膚には、皮膚常在菌と呼ばれる1000種類もの細菌が存在すると言われています。これらの細菌は、遺伝子配列を用いた解析によってほとんどがプロテオバクテリア門、アクチノバクテリア門、フィルミクテス門、バクテロイデテス門のどれかに属するもので、それぞれ90%、5.6%、4.3%、1%以下であると報告されています。

いままでは皮膚から採取された細菌としては、Staphylococcus epidermidis(スタフィロコッカス・エピデルミディス)とPropionibacterium acnes(プロピオニバクテリウム・アクネス)が主要であると報告されていましたが、新しい解析方法では、これらの細菌の存在割合が5%未満だったため、皮膚には通常の方法では培養できない細菌が多数存在することが指摘されたのです。

皮膚常在菌は、それぞれ生存する場所が分かれています。脂質の多いところでは、P.acnesなどのプロテオバクテリア門やS.epidermidisなどのフィルミクテス門の細菌が多く、湿ったところではフィルミクテス門のStaphylococcusやコリネバクテリウム属などが多く、乾いた皮膚にはプロテオバクテリア門のうち腸内細菌に共通するものやバクテロイデテス門のFlavobacterialesなどがそれぞれ一緒に棲んでいます。

これらの菌は皮脂を食べて脂肪酸を分泌し、皮膚を弱酸性に保つことで病原性菌の侵入を防いだり、抗菌性ペプチドを出してほかの細菌の侵入を防いだりします。そのため、皮膚を抗菌性の石鹸で洗ったりすると、常在菌が死滅してしまうのです。また、あまりゴシゴシ洗うと、常在菌たちがつくってくれた肌のバリアが崩壊してしまうことになります。

ですが、外出先から帰ったときに手洗いしても、洗っていない部分から常在菌は復活して新たなバリアをつくってくれます。ただし、ゴシゴシ洗い過ぎは、バリアを壊すだけでなく、皮膚の表面に傷をつけて病原菌の侵入を誘発することにもなります。全身を洗うときは適度な優しさで、刺激を減らすように洗うことが肝要です。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 微生物の話』
著者:山形洋平  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1961年生まれ。東京農工大学農学部農芸化学科卒業。東北大学大学院農学研究科農芸化学専攻(博士課程後期)修了。東北大学農学部助手、東京農工大学共生科学研究院准教授、東京農工大学大学院農学研究院准教授を経て、現在は東京農工大学大学院農学研究院教授。農学博士。趣味は、醗酵食品の食べ歩きと醸造飲料の飲み歩き。