3つの宗教から崇拝される聖典

ユダヤ教においては、今も旧約聖書が根本聖典となっており、ミクラー、またはタナハと呼ばれています。

ミクラーはヘブライ語で「読まれるもの」という意味で、タナハは律法・預言者・諸書を表すヘブライ語(トーラー・ネビーイーム・ケトゥビーム)の頭文字をつなげたもの(「Ta」「na」「kh」)です。

そのため、旧約聖書はユダヤ教徒を信仰の面ではもちろんのこと、生活の面でも規範となっています。

また、イスラム教でも旧約聖書は聖なる書と認めています。これは旧約聖書に対する信仰を基盤としてイスラム教が成立したからです。

それゆえ、ユダヤ教とイスラム教では共通点も少なくありません。たとえば、アダムとエバに始まる歴史観もおおむね同じです。

しかし、イスラム教はムハンマド(マホメット、570頃〜632年)が神から授かった啓典(けいてん)『クルアーン(コーラン)』を最後にして決定的な預言と考えるので、その内容に反することは旧約聖書の文言であっても否定されます。

キリスト教も旧約聖書を基盤として成立しました。そのため、新約聖書にはイザヤ書や詩編など旧約聖書の文が数多く引用されています。イエスやその弟子たちも旧約聖書に慣れ親しんで育ってきたはずです。

イエスは旧約聖書に説かれたことすべてを受け入れたうえで、神と人との新たな関係を提示してみせたのです。そして、その言動を記録したものが新約聖書なのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。