40年に渡ることになった荒野の彷徨

モーセとイスラエルの民たちはエジプトを出て3か月目にシナイ山の麓(ふもと)にたどり着きました。ここでモーセは1人で山に入って神に会いました。

神はモーセに対して十戒(じっかい=信者が守るべき10の定め)を教え、さらに祭祀や財産に関する規定も授けました。そして、神は十戒を2枚の石板に書き記してモーセに与えたのです。

ところが、モーセが40日40夜に渡って山に籠(こ)もっていたため、イスラエルの民たちはモーセがもう戻ってこないものと考え、モーセの兄のアロンに新しい神々を造るよう求めました。

そこでアロンは彼らの金の耳輪を集め、金の若い雄牛の像を造ってみせました。民たちは喜んでこの神を崇(あがめ)、その前で宴(うたげ)を行なったのです。

山から下りてきてこの様子を見たモーセは激しく怒って、神から授かった十戒の石板を打ち砕いてしまいます。 さらに雄牛の像も粉々に打ち砕きました。そして、偶像崇拝をしたおよそ3000人の者たちを殺させたのです。

モーセは再び40日40夜に渡って山に入り、改めて神との契約を結び、十戒の石板をもう一度授かりました。

一行の旅はさらに続きます。その苦しさに民はしばしば不平を言い、ついには神を怒らせてしまいます。神は彼らの不信を責め、「*乳と蜜(みつ)が流れる」カナンの地にたどり着くまで40年間、荒れ野をさまようことになったのです。

また、モーセにも、その約束の地を目前に死ぬ運命を与えたのです。

しかし、申命記は「イスラエルには、再びモーセのような預言者は現れなかった」と最高の表現で彼を褒(ほ)めたたえています。

用語解説 *乳と蜜が流れる 土地が豊饒(ほうじょう)であることを表す旧約聖書の慣用表現。旧約聖書全体で20回ほど使われている。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。