《落穂拾い》に秘められた嫁姑愛

麦畑で落穂を拾う3人の農婦を描いたミレーの《落穂拾い》(1857年)は、ミレーの農民画の傑作といわれています。

しかし、この《落穂拾い》はただの風俗画ではなく、ルツ記をイメージしたものなのです。

士師が世を治めていた頃、ベツレヘムにはエリメレクとナオミという夫婦がいました。彼らは飢饉から逃れるため*モアブに移り住み、ここで2人の息子を得ました。

エリメレクの死後、2人の息子はそれぞれオルパとルツという妻をめとりましたが、彼らも子どもを得る前にこの世を去ってしまいました。

異国で家族を失ってしまったナオミは、ベツレヘムへ帰ることにしました。当時、子どもを得ずに死んだ男の妻はその男の兄弟と結婚して子を産み、死んだ男の跡継ぎとする習俗があったため、2人の嫁もベツレヘムへ同行すると言いました。

しかし、ナオミは2人の嫁にそんな気遣いをする必要はないと言い、それぞれの故郷に帰るよう諭しました。オルパは泣きながら帰って行きましたが、ナオミを心配したルツはともにベツレヘムへ向かうことにしました。

ルツは朝から晩まで麦畑で落穂を拾ってナオミとの生活を支え、その献身的な姿はエリメレクの縁者で裕福なボアズの目にとまりました。

やがてボアズは清い心のルツに惹ひかれるようになり、ルツを妻に迎えることにしました。

ルツとボアズの間には男の子が生まれ、エリメレクの血筋は守られることになりました。

そして、その子孫からイスラエルの王となるダビデが生まれ、さらにはイエスの「父」ヨセフが生まれることになるのです。

用語解説 *モアブ 古代イスラエルの東側(死海東岸)にあった地域(国)。士師時代はイスラエルとしばしば紛争があった。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。