憎悪と敵対心が渦巻く終末思想と滅びの美学

ユグドラシルに支えられた世界が、なぜ壮絶な死闘の末に滅亡したのでしょうか。それは、オーディンが天地創造を成し遂げたときから徐々にはじまっていました。

巨人ユミルの死体で世界を創り上げたときから巨人族の恨(うら)みを買い、アース神族と巨人族との敵対関係はできあがっていたのです。

そして、ラグナロクで滅亡するという予言を受けてからは、戦死者をよみがえらせて戦闘力を強化したり、その戦死者を増やすためにわざと戦争を巻き起こしたりと、容赦ない手段で身を守ろうとするオーディン。

すべてはラグナロクでの滅亡に備えた策略ではありましたが、それによって神族、巨人、人間たちの間に憎しみと敵対心が膨らみ、大戦争へと突入していくのです。

こうした物語は、いにしえの時代に北欧の人々に生まれた終末思想と、悲劇さえも受け入れて生きようとする滅びの美学が反映されているといわれています。

物語では、ラグナロクで滅亡するものの、かろうじて生き残った少数の神々によって世界は再生され、人間も復活します。

枯れてもまた芽を出し、成長する植物とともに生きる北欧の人々の樹木崇拝も、ストーリーに活かされています。

*樹木崇拝:特定の樹木を神聖なものとして見なしたり、霊魂が宿っていると崇める思想。日本でも見られる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
著者:鈴木悠介  日本文芸社刊