生命進化の秘密を極限環境から探る

極限環境とは、温度やpH(酸性‒アルカリ性指標)、塩濃度、酸素濃度、圧力といった条件が、わたしたち人間を含めた多くの生命の生育可能範囲の限界ギリギリの環境のことです。こうした途方もない環境で生息する微生物(バクテリアなど)を極限環境微生物と呼びます。 また一定の条件を満たせば極限環境で生きられる真核生物も存在します。

たとえば生物の気配のない深海でも、海底から熱水や湧水が吹き出す場所にはメタンや硫化水素を栄養にする細菌がおり、その細菌と共生するハオリムシ(口や肛門もないゴカイの仲間)や二枚貝のシロウリガイが独特の生態系をつくっていることが知られています。

じつはいま、こうした極限環境に、生命の秘密を紐解くカギがあるのではないかと考えられているのです。

極限環境は生命進化に大きな役割を担っていたようです。そもそも、現存する生物のDNAに基づく系統樹から、生命は熱水環境で誕生したと考えられています。 さらに、最古の生命化石と考えられている35億年前の微生物状化石は、熱水由来の地層から発見されていたことがわかってきました。また、極限環境では微生物同士、微生物と動物による共生関係が結ばれることが度々(たびたび)あります。

熱水に住み微生物と共生するハオリムシは、海底に落ちたクジラの死骸に住む「ホネクイハナムシ」から、共生微生物の種類を変えながら進化したと考えられています。化石の証拠から、ホネクイハナムシは、クジラが出現する前の海では首長竜の死骸に生息していたことがわかってきました。

大きな生物進化をもたらす共生の進化の手がかりが、化石からも掴つかめてきているのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。