古生代カンブリア紀最大の捕食者

古生代の最初にあたるカンブリア紀(約5億4100万年前から約4億9900万年前)は、現在存在する生物につながる遥か遠い祖先が多数誕生したとされる時期です。まだ陸上に緑はなく、その舞台は海でした。

アノマロカリス類は、カンブリア紀に築かれた生態系の頂点に君臨していたと考えられている生物のグループです。最大の特徴は、前部付属肢(ぜんぶふぞくし)と呼ばれる頭から伸びる2本の触手で、この器官を使って獲物をとらえる肉食の捕食者でした。円形の口は頭部下側にあり、一度獲物が捕まるとなかなか逃げ出せない構造になっていました。

代表的なアノマロカリス類として知られるのが、カナダの地層で見つかるアノマロカリス・カナデンシスです。

体長が数十センチから最大で1メートルあり、大付属肢(だいふぞくし)には鋭いトゲが並んでいました。この時代に生息していた三葉虫をはじめとする生物はみな小さく、大きくても数センチ程度だったので、十倍以上の巨体をもっていたことになります。三葉虫を食べていたともいわれていますが、硬い殻は噛めなかった可能性があり、脱皮直後のものに限られていたかもしれません。

アノマロカリス・カナデンシスには大きな眼もありました。じつは、これはカンブリア紀に登場した多くの生物に共通する特徴で、先カンブリア時代のエディアカラ紀の生物には眼にあたる器官はありません。

眼で「見る」ということができるようになった生物は、生存戦略がこれまでと大きく変わり、多様な進化を促したのではないかともいわれています。この仮説を「光スイッチ説」といいます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。