石炭紀の森林を飛び交った超巨大トンボ

古生代の石炭紀という名称は、石炭が世界各地のこの時代の地層から出たことに由来します。

石炭紀には、低緯度地域を中心として、湿地に巨大なシダ植物などが生い茂る「森林」が広がりました。その植物が湖や沼に積み重なり、長い年月をかけて石炭という化石エネルギーになったのです。

地表に広がった太古の森林をはじめに謳歌したのは昆虫類でした。陸に上がりはじめたばかりの四足動物は、まだ空には進出していませんでした。飛ぶための翅(はね)を獲得した彼らは、天敵のいない空を中心に大繁栄しました。

現在まで続くトンボ類、バッタ類、カメムシ類といった有翅昆虫(ゆうしこんちゅう)の多くが、早くもこの時期に登場していたことがわかっています。

一方で、すでに絶滅した種も少なくありません。その代表がメガネウラです。形はトンボに似ていますが、スケールがケタ違いで、翅を開げた長さはなんと70センチに達したといいます。現在知られている限りで最大の昆虫です。

分類でもオオトンボ類という現生のトンボとは別のグループになっており、すでに絶滅しています。翅を羽ばたかせるのではなく、グライダーのように滑空していたとする説もあります。

ムカシアミバネムシ類という絶滅昆虫の一種であるマゾタイロスもメガネウラに匹敵する大きさの持ち主で、翅開長(しょうかいちょう)は約55センチでした。

ムカシアミバネムシ類は見た目がカゲロウに似ていましたが、この仲間にはトンボなどの昆虫にある2対の翅の前に小さい1対の「翅」をもつものがいました。石炭紀は酸素濃度が高く、昆虫類の飛翔に有利だったことも、巨大昆虫の増加につながったのでしょう。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。