〜カンブリア紀の生物多様化〜

カンブリア爆発とは、古生代カンブリア紀の5億4200万年前から5億3000年前の間に、生物種が爆発的に増えた現象のことです。なにしろ、爆発も爆発、それまで数十数種しかなかった生物が、突如この時期に1万種にも増加したのはなぜか? ということは、長年大きな謎でした。カンブリアの大爆発は、生物の進化は徐々に蓄積すると言うダーウィンの漸進進化説をも覆すような現象なのです。

カンブリア爆発の原因について、有力な学説はいくつかありますが、そのひとつに有眼生物の誕生があります。この時代、眼を持った生物・三葉虫が生まれています。眼を持つことは、捕食という観点から非常に有利です。目の優劣が生死を分けるような熾烈な生存競争の中で、多種多様な目が生まれ、結果、生物種が爆発的に増えたというわけです。

もうひとつ、スノーボールアース〈※1〉とその終結との関連性が唱えられています。8億年から6億年前の間、地球は氷で覆われていました。10億年前に誕生した多細胞生物は、この氷河期を海底の熱源近くの極限られた場所でようやく生き延びました。地理的な隔離は、ガラパゴス諸島を例にみるように生物の多様化を促進します。こうして多様化した生物の中には捕食のための原口(げんこう)を獲得したものがでてきて、生存競争が激化しました。さらに、スノーボールアース終結により地球が温暖化に向かうと、環境に適応する為の進化も重なり、カンブリア爆発を引き起こしたというわけです。カンブリア爆発によって、今日みられる動物の門(生物の分類のカテゴリーの一つ。)が出揃ったといわれています。

※1:雪球地球

生物の変遷【生物の話】

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。