老化すると疲れやすくなり、回復力が弱まる

仕事や運動をし過ぎたあと、「疲れた」と感じますね。「疲労」とはいったい何か、について考えてみましょう。疲労を科学的に表すならば、「過度の肉体的および精神的活動、また疾病によって生じた独特の不快感と、休養の願望をともなう身体の活動能力の減退状態」であり、「作業能率や作業効率が低下した状態」とされています。疲労はまた「痛み、発熱とともに、身体に休息を促す生体防御機構」の1つです。

身体の生理的活動を調整しているのが“自律神経”。つまり、身体と精神を活発にする“交感神経”と休ませる“副交感神経”が、バランスをとって働いているわけです。ところが、過度な運動や精神的ストレスに襲われると、自律神経に負荷がかかって脳がダメージを受けてしまうのです。

近年、疲労の分子学的な仕組みが解明されつつあります。神経や筋肉が過活動することで産生される“活性酸素”が、SOD(スーパー・オキサイド・ディスムターゼ)などの抗酸化機構によって処理できなくなり、過剰な活性酸素が身体のタンパク質や細胞内の諸器官にダメージを与えるために疲労が発生する、という説です(下図)。

体に悪影響を及ぼす活性酸素

脳は疲労により萎縮してきます。自律神経の働きも鈍くなり、身体の調整ができにくくなります。つまり、神経にストレスがかかるのです。また、抗酸化作用のあるSODの働きは、成人以降に低下してくるので、“酸化ストレス”に弱くなります。酸化ストレスとは、「酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用」のことです。

老化によって身体活動の調整が不十分なために、神経や筋肉に負荷がかかり、生じた酸化ストレスによって損傷した体組織の修復力が弱くなるため、疲れやすく、疲れが取れにくくなる、と考えられているわけですね。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 野村義宏