大手広告代理店に勤務していた女性が、過酷すぎる長時間労働を原因に自殺した事件は大きな話題となりました。NY在住で『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者・りばてぃさんは、現在アメリカで進む在宅勤務などの働き方、いわゆる「テレワーク」こそ、日本の過労死を防ぐヒントがある、と持論を展開。アメリカの「働き方」の最新情報を紹介し、この動向から日本が何を学ぶべきかについて詳しく解説しています。

在宅勤務などのテレワークがアメリカでも増加中!? (1)仕事とプライベートのバランス

広告代理店の電通に勤めていた高橋まつりさん(24歳)の自殺が過労死であると労災認定されたニュースは皆さんも各種ニュースでご存じのことと思う。

日本の国立大トップの東大を出て電通に入社。わずか1年足らずで自殺するまで追い込まれてしまった痛ましい事件だ。

その原因は様々伝えられている。

生前に発信されたツイッターには、睡眠時間が2時間など日常的に長時間労働となっていたこと。

上司からのパワハラやセクハラなどについても触れられており、新入社員としての仕事の大変さ以外での苦しみが垣間見れるものとなっている。

そして2015年12月25日のクリスマス、電通の社員寮から飛び降りて亡くなった。

胸が痛む本当に悲しい結末だ。

このニュースを聞いて、いろんな人がいろんなことを考え、中には思い悩む人もいるだろう。

どうしたら良かったのか、どんな状況だったら彼女は死なずにすんだのか。

答えはない。本人が亡くなってしまった今となっては、彼女のように過労を苦にして死を選ぶ人や過労死自体をなるべく防いでいくしかない。

どうしたら過労死を防げるのか?

日本のニュースや話題を見ていると日々様々な議論がされているのが伝わってくる。

電通がいわゆる「ブラック企業」だとか、その一方で社員を大切にする「ホワイト企業」についての話題も出てきていたりする。

直近では、富士そばの会長の丹道夫(たん・みちお)さんへのインタビューが話題になっていた。とても興味深い内容なのでちょっとご紹介しよう。

富士そばは1966年創業。今年で50周年を迎える。1都3県の駅前の良い立地に100店舗以上を展開している立ち食いそばチェーン店御三家のひとつと呼ばれる老舗店。

創業年の1966年は昭和41年で日本では「巨人の星」が週刊少年マガジンで連載を開始した年で高度成長期後半頃のこと。

創業から6年後の1972年には、セブンイレブンよりも早く24時間営業を導入した。24時間営業を導入した理由が興味深い。

丹会長は若くして地方から東京に上京。当時はお金がなく宿泊に困った。安いアパートで暮らし始めてからも地方から上京してきた貧しい青年の夜は寂しい。

そういう経験から地方から都会に出てきた方々が頼れる、深夜でも誰もが立ち寄れるお店を作りたかったからだそうだ。

そのこだわりは今でも変わらず、24時間営業を続けている。

また、店内では演歌をかける。

丹会長曰く、「演歌がわかる人は他人の痛みがわかる人」だと思っているのだとか。

会長がお店回りをしていると従業員から「食べ終わっても歌をじっと聞いてる人が多いんですよ」との声もあるという。

このあたりのご指摘、日本国内にいたころに聞いたらあまりピンと来なかったかもしれないが、海外生活10年超となった今、とてもよくわかる気がする。ただ歳をとっただけかもしれないけど(笑)。

あと中には、実際に医師免許に3度落ちた女性が富士そばでかかっていた演歌に励まされ、試験に合格し医者になったという実話もあるのだそうだ。

富士そばは、お客さんだけでなく、従業員に対しても他の企業にはないような配慮がされている。

例えば、正社員やアルバイト関係なく、売上の良いときは給料に反映させている。

アルバイトであっても退職金を出すという。

従業員の生活が第一、そう丹会長は語っている。

(ご参考)
・ブラック企業は損 「富士そば」の超ホワイトな経営方針

高橋さんの自殺が「過労死」として労災認定されたことで日本では改めて仕事とプライベートのライフバランスを考えることが増えているようで、従業員の働き方を配慮した制度を設ける企業についてニュースが様々出ている。

例えば、トヨタやパナソニック、リクルート、住友海上などの大手企業がテレワークを推進しているというニュースだ。

テレワークとは、「遠方という意味のテレ」と「仕事のワーク」の造語で、会社のオフィスから離れた遠方で働くことを意味している。

ちなみにテレワークは和製英語で、英語ではテレコミューティング(Telecommuting)。

リモートオフィス(Remote Office)、
リモート・ワーキング(Remote Working)、
ワーク・フロム・ホーム(Work from home)
オフィスが無いという意味でオフィス・フリー(Office free)などとも表現する。

日本のテレワークには主に、
1.在宅勤務:自宅をオフィス
2.サテライトワーク:サテライトオフィスで勤務
3.モバイルワーク:場所を問わない勤務
・・・の3種類がある。

企業側にとっては、オフィススペースや交通費等のコスト削減になり、従業員にとっては通勤時間をセーブすることで余暇にあてたり、育児や介護といった私生活との両立をしやすいなどのメリットがある。

トヨタは今年6月、約2万5000人のほぼすべての総合職社員を対象として在宅勤務制度を8月にも導入すると発表。最低でも週1日、2時間だけ出社すれば、それ以外はテレワークでの勤務が可能だという。女性だけでなく男性の育児も後押しする目的もあるためか、かなりの数の社員を対象としており、日本では異例のことと伝えられている。

これに加えて、11月18日、トヨタは同社が愛知県内に開設予定の託児所と職場間を送迎する「送迎保育」の導入を検討しているとのこと。育児による離職を防ぎ、優秀な人材の確保につなげたい考えだそうだ。

(ご参考)
・トヨタ、総合職に在宅勤務 8月めど2万5000人対象

・トヨタが「送迎保育」導入へ 社員の子育て支援で

この他にも、以前から在宅勤務を推奨していた三井住友海上火災保険は、制限していた在宅勤務の日数を撤廃した。

(ご参考)
・在宅勤務、日数制限を撤廃=育児、介護と両立支援−三井住友海上

・リクルート、在宅勤務を全社員対象に 上限日数なく

(2)アメリカではどうなの?

ところでアメリカではどうなのか?

当然アメリカでも近年、自宅をオフィスにするなどテレワークを推奨している企業は増えている。IT化が進んでいる企業や、もともと出張の多い職種は早くから導入している。

実際、米系企業に勤務している複数の友人からも在宅勤務やリモートオフィス勤務については度々話を聞く。

特に勤続年数の長い人の場合は、世界1周旅行の休暇を取りながらリモートワークで一定量の仕事をすることで引き続き一部の給料をもらっている友人もいる。

また、出張が多い職種は、オフィス勤務ではあるけども自分のデスクは無く、私物は常にロッカー。担当するプロジェクトごとに社員が集まって仕事をするなど、これまでの一般的なオフィスでの働き方からかなり変化してきている。

経済紙フォーチュンは、11月15日の記事に、「予想:2017年に大企業はオフィスを持たない」という衝撃の見出しをつけている。

それによると、フォーチュン100社に入る大企業はこぞって2017年にオフィスを放棄し、日本でいうところのテレワークへの変更を決定していくというのだ。

これはフォーチュン誌が毎年年末に行う来年予想企画の1つで、少々、言い過ぎな感じもあるが、まぁ、その傾向は全社ではなくてもかなりの割合で進むことが予想されるのだろう。

すでに1年前の時点で、ニュージャージー工科大学が発表した調査結果でかなりの従業員がすでに在宅勤務などのテレワークで勤務していると出ている。

起業家が多いことも理由で、5300万人のフリーランス(含スタートアップ起業家)はテレワーク勤務となっている。

また、同調査のアンケートに答えた企業役員のうち34%はそれぞれの会社の正社員のうち半分は2020年までに在宅勤務になるだろうと回答している。

(ご参考)
・Prediction: Big Companies Will Start Giving up on Offices in 2017

・The rise of telecommuting: 45 percent of US employees work from home

調査会社ギャロップが2015年に出したテレワークに関する調査によると、アメリカでは37%の従業員が在宅勤務などのテレワークをしており、ここ10年ほどで推奨する企業が増えているしていることが伺えるという。仕事内容にもよるがその時々でフレキシブルに取り入れる企業はかなり多いようだ。

また興味深い・・・というか、この件に関連して極めて重要な発見は、そうしたテレワークをする従業員は、大学卒業以上の学歴を持つとか、年収が高い人(よりクリエイティブなお仕事についている人)に多い傾向があるという。

具体的には、テレワークをすると回答した大学卒業以上の学歴を持つものは55%で、大学卒業学歴を持たない人では26%。

年収7万5,000ドル以上は52%で、(1ドル100円換算で750万円)それ以下の年収は26%。

ホワイトカラー職は44%で、ブルーカラー職は16%。

ホワイカラー職には、役員や管理職レベル、専門職、技術者、セールスや総合職が含まれている。

さらに、テレワークの効率性に対する質問では58%が効率的と答え、仕事がより捗ると回答したのは16%、捗らないとの回答は20%と、効率が良いという回答のほうが過半数を超える結果となっている。

(ご参考)
・In U.S., Telecommuting for Work Climbs to 37%

インターネットが普及し、テレワークへの関心も高まっているアメリカでは、このあたりの調査にも様々なものが登場し、IT化やバーチャルデスクの推進に関する話題は尽きない。

また、知的労働が増え、多くの人々がよりクリエイティブにならなくてはいけなくなったことも、この背景にあるだろう。

さらにニューヨークでは、オフィス賃料の高騰からもシェアオフィスや、コワーキングスペース(Co-working space)の存在感が高まっている。

これについては、別途改めて特集したほうがいいぐらい大量の関連情報が出ているが、さわり程度に基本情報をお伝えすると、例えば、うちのブログで紹介しているシェアオフィスのWeWorkがパイオニア的存在。

様々な企画も実施しており、2012年には、飲料水メーカーのペプシがスポンサー企業となり、SOHOの好立地のスペースで独自のベンチャー企業支援を行っていた。しかも、ペプシ社員も入居し、スタートアップ企業との交流が彼らの仕事にもプラスになると伝えられている。

さらにWeWorkは名門大学のコロンビア大学とも提携し同大学の卒業生を対象とした起業家支援を実施。コロンビア大学の審査をパスしたスタートアップ企業71社が入居した。

(ご参考)
・NYの共有オフィスWeWork Labsでペプシが独自のベンチャー支援

・コロンビア大学がベンチャー企業支援のためNYに共有オフィスをオープン

このWeWorkに始まり、現在では、ニューヨーク市内各所やハドソン川を越えたニュージャージーの都市部にも新しいタイプのシェアオフィスが広まっている。

つい先日も、ニューヨーク市のウォール街から地下鉄(パストレイン)ですぐのニュージャージー州のオフィス街で一見するとギャラリーのようなシェアオフィスを発見。

イコール・スペース(=Space)というシェアオフィスで、受付の方にお話を聞いたところ、このシェアオフィスはオープンしてたったの2か月、ギャラリーやカフェスペースも内包する新たなタイプで、運営する会社自体も創業2年という新しい会社だった。

(ご参考)
・イコール・スペース(=Space)

他にも様々なシェアオフィスがある
・The 15 Coworking Spaces in NYC You Need to Know

日本では、従業員を取り巻く職場環境がブラックだとかホワイトだとか、トヨタなどの育児や介護との両立を配慮した働き方の導入事例などがこの手の話題の中心になっているようだが、アメリカでは、そもそもそこまで私生活を犠牲にしてまで働く人が少ないからなのか(例えば、過労死は英語でもKaroushi、欧米ではありえない現象なので翻訳できる単語が存在しない)、いかに効率的でクリエイティブに働けるかということが重視される傾向にあるような気がする。

この手の話題について日米の関連情報を調べていくと、いかに日本人が真面目で勤勉かがとてもよくわかる。

あとたぶん、日本国内では解決することが難しいと思われている諸問題も、アメリカの事例を参考に多面的に考えてみると、案外、すんなり解決の糸口が見えてくるかもしれない。

例えば、職場環境がブラックだとかホワイトだとか、育児や介護との両立をどうするかという諸問題についても、より知的労働がしやすい、よりクリエイティブになるにはどうしたら良いのかというアメリカで中心になっている考え方を参考にいろいろ考えてみるといいのかもしれない

image by: Shutterstock

 

『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』より一部抜粋

著者/りばてぃ

ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

出典元:まぐまぐニュース!