以前掲載の「アベノミクスが6度目の挫折。政府文書からも「デフレ」が消滅」でご紹介したように、「アベノミクス」も、いよいよ瀕死の様相を呈しています。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、「これは日本に限ったことではなく、資本主義というシステムそのものに限界が来ている」と断言。さらに、次なる経済システムを予測するにあたってヒントとなるのが「日本の江戸時代」だと意外な見方を示しています。

資本主義経済から次の経済システムへ

金利ゼロ%で預金の魅力もなくなり、銀行も投資先を無くしている。中央銀行の量的緩和で、資産価値は上がり、貧富の差が世界的に拡大している。どうも資本主義経済の終わりに来たようである。それなら次の経済システムは何かを考察しよう。

量的緩和で資本主義の問題点が拡大

リーマンショックで、世界の中央銀行は一斉に量的緩和を行った。

この量的緩和で資産価値は上がり、資産を持つ富裕層はより富、資産がない中産階級以下の層は、より貧乏になり貧富の差が拡大している。資産価値はバブル期越えの状態であり、現時点非常に高い状態にある。

これを起こした原因は、量的緩和で中央銀行が資産を買い取り、資金を市場に供給するため、資産価値だけ上昇している。しかし、労働賃金は発展途上国並の賃金になる方向で、削減されている。これでは労働者は貧乏になる。このため、消費も伸びない。

とうとう、労働者は立ち上がり、選挙で政府を交代させ始めている。

このため、政府も選挙を意識して労働賃金を上昇させようとするが、自由経済市場では、企業は労働賃金を上げることができない。新興国企業に商品価格で負けることになるからである。ホワイトカラーの賃金も同様である。インドに会計士やプログラマーなどの職が移動していることでわかる。

もし、政府が強制的に賃金を上昇させるなら、労働賃金の安い新興国に工場や研究開発・設計などの職も移すことになる。製造業の多くが新興国や発展途上国に移っていくことになる。グローバル化により、移動が大変やりやすくなり、すぐに移動できる。

先進国に残るのは、ノウハウの塊である高機能部品やサービス業などだけであるが、サービス業は競争が激しく低賃金労働である。

政府はグローバル化した資本主義の世界では、多くの国民の利益を守れなくなっている。

このように、多くの中産階級以下の国民と企業や資本家の利益が相反した状態になっているのだ。

資本主義の限界

資本主義は、物がない時代には有効な経済システムである。拡大再生産して、どんどん製品を作ることができ、競争で製品の改良も進む。しかし、現状は物が溢れて、これ以上の物はいらない状態である。

新興国の需要も取り込んだが、新興国企業の生産が拡大して、世界的過剰生産になりデフレ状態になってしまった。新興国企業は労働賃金が安い分、先進国企業と比べて優位になっている。そして、これ以上の物が必要がない時代になり、また、先進国企業は新興国企業に駆逐されたことで、先進国には、投資先もなくなり、金利はゼロ%付近になり投資の拡大も必要がない状態になっている。

先進国は金融とIT産業にシフトしたが、雇用される労働者が少なく、高い能力も必要になり、世界から人材を集めることになり、先進国の多くの国民の利益になっていない。

先進国は、資本主義経済の限界に突き当たったと見るしかない。

米国と英国が最初に新自由主義という資本主義の原理主義を推し進めたが、皮肉にも最初に、世界に先駆けて脱グローバルであり、管理貿易という脱資本主義の方向に行っている。

それがトランプ大統領であり、英国のEU離脱である。

米国が管理貿易という方向になったことで、世界的に管理貿易の方向になる。米国への輸出が大きな中国が最初に対応処置をとることになるとみる。

ということで、今後、米国の管理貿易の方向に進んでいくことになる。

国家の目的は、国民の利益を最大化することであるが、その目的が見えなくなり、資本主義では国民の利益の最大化が難しくなってきたのである。新しい経済や指導原理が必要になってきたようだ。

次の経済システムとは

このグローバルとローカルの問題が日本に既にあり、東京と地方の関係と同じで、地方は新幹線などの交通インフラが整うと、東京に仕事を吸い取られている状況である。地方の衰退で、若者が東京に集まっている。

世界も同じようなことが起きているが、向きは違う。航空機やインターネットの発展により、仕事が米国など先進国から新興国、途上国にシフトしているのである。

この衰退の対策として、日本の地方は再活性化策として、地産地消の運動を展開している。これと同じ方向になる。自給自足経済、地産地消経済になる。

その地域や国で生産できる物をより多く生産して、余ったら世界に売る経済システムである。地域や国で生産効率の高いものから生産して、賃金の良いものに全員がありつけたら、後は外部から持ってくることである。

理念的な方向はそうであるが、なるべくエネルギー、食料、材料などの分野は自給することが求められる。この分野が自給されていると危機的な状態でも餓死することはない。ある程度、豊かな生活が送れることになる。

新しい江戸時代が始まるということは、このコラムでは複数回述べている。日本は明治時代に戻ろうという日本会議と私のように江戸時代に戻ろうという保守勢力がいる。

しかし、資本主義の限界になり、江戸時代に戻る方が今後の日本としては最適になっている。というより、世界が日本の江戸時代に戻ることが必要なのだ。世界が閉鎖的になり、フロンティアがなくなった時点で、拡大再生産システムは先進国では役割を終えたようである。昔の維持生産システムにシフトするしかないようである。

日本企業の役割

日本企業は、今までは新興国に技術を教えて、新興国企業の発展を助けているが、次の役割は、先進国の地産地消に協力することになるとみている。

米国の鉄鋼業界は、新興国の鉄鋼業に負けてなくなり、日本の鉄鋼メーカーが米国に進出して工場を維持している。自動車もトヨタを始め、米国に工場を立てて、米国の消費者に提供している。というように、相手国に工場を立てて、そこで生産した製品をそこで売ることになる。地産地消を助ける存在である。

工場を建てるとすると、市場規模がある程度大きくないと、効率的な生産ができない。このため、複数の国で統一する経済圏が、どうしても必要になる。その経済圏に工場を進出させることが必要になる。

ということで、EUのような経済圏構想が世界各地で出てくることになる。

中国は市場規模は10億人で、十分に大きい。米国は3億人で北米経済圏としてメキシコ、カナダとの経済圏を作るしかない。

日本は、1億人であり、台湾などと東南アジアとの経済圏が必要になってくる。

経済規模を大きくした複数の経済圏ができて、その経済圏は自給自足、地産地消の経済になるようである。しかし、安価で高機能な部品は、日本などの国で集中的に生産した方が良いので、高機能であるが安価なものは世界の供給を一手に引き受けることになる。

また、オーストラリアのように資源が豊富にある国は、その資源を輸出して、多くの物を輸入して成り立つことになる。

食糧、エネルギー、材料、部品などを大量に輸出する企業は世界的な存在として君臨できるが、汎用品などは地産地消になる。企業はグローバルに活躍するが、工場を世界展開して、そこで売る。経済圏同士で関税が高いので、経済圏をまたがる汎用品の貿易はなくなる。

このように、アベノミクスは限界にきたが、その理由は資本主義の限界と密接な関係があるからのようである。

さあ、どうなりますか?

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出典元:まぐまぐニュース!