スポーツとスポーツに関するビジネスの発展を目差し、スポーツチームや企業が出展、セミナーも開催される「スポーツビジネス産業展」に参加したという、経営コンサルタントの梅本泰則さん。梅本さんは今回、自身の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』で、会場で実感した業界の熱意や実績を紹介するとともに、そこで見えてきたある課題を記しています。

スポーツ業界とデジタルマーケティング

2月5日から3日間、幕張メッセで第3回スポーツビジネス産業展が開催されました。私も最初の2日間訪問。第1回目、第2回目に比べると、少しずつ出展社の顔ぶれも変化してきています。それでも、相変わらず来場者はいっぱいで大混雑。スポーツ産業に対する関心と期待の高さを感じます。

私の訪問目的は、展示内容の視察というより会場で行われるセミナーの聴講です。スポーツビジネスに携わる中心的な人たちの話が一度に聞けます。それも、ほぼ全部のセミナーが無料。こんな機会は滅多にありません。

会期中に60のセミナーが開催されますが、全部を受講するのは無理です。私は、その中から9つのセミナーを選びました。そのタイトルと講演者だけを挙げておきます。

スポーツチームの経営ビジョンとスポーツビジネスの可能性
講演:鹿島アントラーズ、千葉ジェッツ 1試合に4万人を集客する名古屋グランパスのデジタルマーケティング
講演:名古屋グランパスエイト 成功するスポーツチームのグッズ戦略
講演:福岡ソフトバンク、浦和レッズ、宇都宮ブレックス 5Gで変わるスポーツビジネス
講演:NTTドコモ スポーツビジネス新時代─革新をもたらすスポーツICT
講演:富士通、NTT西日本 スポーツ×テクノロジーが導く新しいスポーツのあり方
講演:SAPジャパン 日本柔道の躍進を支えるITサポート
講演:全日本柔道連盟 世界のスタジアム・アリーナの最新事例について
講演:スポーツビジネス研究所、日本政策投資銀行 大学スポーツは新しいステージへ─UNIVASの取り組み
講演:大学スポーツ協会 デジタルマーケティング

このタイトルだけを見ても、聞いてみたい内容だとは思いませんか。第1回の展示会から毎回このようなセミナーが行われています。しかも、スポーツ庁が打ち出すスポーツ産業政策を反映した内容です。今回私が聞くことのできた政策テーマは、

スタジアム、アリーナの強化 プロスポーツビジネスの増大 大学スポーツの産業化 ITを使ったスポーツテクノロジーの進化

に関するものということになるでしょう。残念なのは、スポーツ庁の政策に入っている「スポーツ用品市場の拡大」というテーマでの講演者が一人もいなかったことです。話すべき材料がなかったのでしょうか。それとも、スポーツ用品業界がスポーツ庁の政策に無関心なのでしょうか。このままでは、スポーツ用品業界はスポーツ産業政策の蚊帳の外に置かれてしまいます。

それはともかく、今回のセミナーでもずい分と強調されたことがあります。それは「デジタルマーケティング」です。話を聞くことが出来たプロスポーツチームでは、当たり前のように「デジタルマーケティング」が進んでいます。

Jリーグの鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、浦和レッズ、Bリーグの千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス、プロ野球の福岡ソフトバンクのチームから、各社の「デジタルマーケティング」の事例を聞けました。

例えば、電子観戦チケットやファンクラブ会員から集まってくるデータを詳細に分析してチーム運営やグッズ販売に活用しています。そのようなことが出来ているのは、デジタルマーケティングに通じた人材がいるからです。

どのチームも、デジタルに強い人材を外部から引っ張ってきています。親会社がIT企業のチームなら、なおさら強いです。しかも、NTTドコモ、富士通、KDDI、ソニーといった大手企業とも手を組んでいます。

スポーツ用品業界

ですから、そのようなチームにとって、「デジタルマーケティング」はお手の物です。観客の年齢構成はどうなっているか、観戦の満足度はどうか、応援グッズは何が売れて、どんな人が買っているか、スタジアム周辺の滞在時間はどれくらいか、いろいろなデータを分析しています。

そして分析したデータをもとに、SNSを駆使して情報を流したりファンにアクセスをしたりしているのです。コアなファンを増やすことも大事ですが、新規のファンを増やすにはどうしたらいいかということもいろいろと考えます。各種のイベントを企画しては、また分析です。

このように、古い体質だと思われていたプロチームが一気に変革をしています。そのため、観客動員数も売上も年々順調に伸びているのです。今後プロリーグは、さらに収益を伸ばし発展をしていくでしょう。それもこれも、「人材」がチームに加わったからです。

また、大学スポーツの「UNIVAS」にも、優秀な人材が集まってきています。大学スポーツがプロスポーツのように変革をしていけば、アマチュアスポーツのあり方が変わっていくでしょう。当然そこには「デジタルマーケティング」が導入されます。そして、そこにはビジネスチャンスがありますから、スポーツ以外の企業も参入してくるに違いありません。

では、振り返ってスポーツ用品業界はどうでしょう。メーカーさんの多くは「デジタルマーケティング」の重要性を分かっています。しかし、プロスポーツリーグやチームのようにうまく活用できてはいません。

スポーツ用品業界には、POSシステムもあります。小売店さんには会員データもあります。デジタルマーケティングを行うための材料があるのです。うまく活用すれば、お客様を増やしたり、お客様に喜んでいただける商品やサービスを提供できるのではないでしょうか。

問題は「人材」です。デジタルマーケティングに精通した人材を登用する必要があります。そのためには、トップが本気になることです。ぜひ、外部から優秀な人材を探してきてヘッドにしましょう。優れたIT企業と手を組むことも必要です。

がんばれ、スポーツ用品業界。そんなことを感じさせられた第3回スポーツビジネス産業展でした。

■今日のツボ■

スポーツ産業は関心と期待を持たれている プロスポーツは「デジタルマーケティング」を駆使している スポーツ用品業界も遅れをとってはいけない

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