日本を代表する経営者だった稲盛和夫氏。今も彼を崇拝する人は多く、彼に叱られたことを自慢する人も大勢います。今回、メルマガ『1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』』の著者、本のソムリエさんが紹介するのは、稲盛和夫氏に叱られた人たちがその内容を語り、そこからビジネスにおける重要なヒントを見出す一冊です。
【一日一冊】稲盛和夫に、叱られた! 38人の学びと喜び『稲盛和夫に、叱られた! 38人の学びと喜び』
出版文化社
2022年8月に稲盛 和夫氏が亡くなりました。この本では、直接稲盛氏から指導を受けた38人の経営者の思い出を収録しています。
稲盛 和夫氏の経営はアメーバ経営、フィロソフィー経営、利他の心などと表現されますが、こうした言葉だけでは真の稲盛和夫を理解することはできません。
例えば、毎日深夜まで残業しながら会社を上場させようと考えていた社長に稲盛和夫氏は「あんたの経営には愛がない。遅くまで働いてくれている社員に対し、頑張ってくれている女性社員を見て、よく頑張ってくれていると甘えているようでは、本当の経営者ではありません」と叱っています。
京都青年会議所の夕方18時からのセミナー講師として登壇したときは、「こんな時間に会社を抜け出して勉強会とはなにごとかだ。そんな暇があるなら会社に戻って仕事をしろ!帰れ!」と言って、自分も帰ろうとしたという。本田宗一郎も同じようなエピソードがあることを思い出しました。
「あの人は、いつ見てもかわいそうなぐらい頑張っているから、みんなで応援してあげようかしら」と思われるぐらい頑張れば社員はついてくる(p28)
また、家族経営で父親が会長、息子が社長の会社で、父親と息子の意見が対立する状況についてアドバイスを求められたとき、稲盛和夫氏は、「生意気言うんじゃねえ!」とすさまじい迫力で、怒鳴ったという。
血みどろの努力をしてここまで会社を大きくした両親に対し、苦労もせずその土台にただ座っている息子が何を言っているのだ、ということです。
この本を読むと、稲盛和夫氏は近い人には、徹底して本気で叱り、一方で勇気づけていたことがわかります。家族で父親が息子に対するように真剣ということなのです。そうすることが、相手のためであるから叱るのであって、それが「利他の心」であるというのです。
こうした人の心を大切にしながら、一方ではアメーバ経営で会社の状態をガラス張りにして、部下に数字の達成を求める厳しさのバランスの中で会社の経営がよくなっていくように感じました。
自分は優しいつもりかもしれないが、それはなれ合いや。優しく褒めることもできないし、厳しく叱ることもできないリーダー…優しいばかりでも、厳しいばかりでも経営はできない(p87)
理系の稲盛和夫氏は、何事に対しても「何のためにやるのか」の問いがあり、加えて、理解できないことがあれば「何でや」と聞いていたという。
稲盛和夫氏は、経営者としてなぜ叱るのか、なぜ褒めるのか、なぜ人は自分事として動くのか、ということを考え続けてきたのでしょう。
書籍を読んで姿勢を正したくなるのは松下幸之助と稲盛和夫氏くらいのものです。姿勢を正して読みましょう。
稲盛さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★☆(87点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)
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