効率を高めながらビジネスを広げるためには、異業種はもちろん同業他社とも「協調」できるところはしたいもの。大手キャリアKDDIの「協調」路線に注目するのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、KDDIがIIJの株式をNTTから買い付けて、同社とともに筆頭株主になることや、楽天とのローミング接続の見直しなど、競合と協調する動きを紹介。異業種では2025年春に高輪ゲートウェイへの本社移転を控えて、JR東日本との良好な関係に期待を示しています。

KDDIがIIJの筆頭株主に。競争と協調がさらに加速

KDDIの「競争と協調」が止まらない。2023年5月18日、KDDIはインターネットイニシアティブ(IIJ)と資本業務提携を締結したと発表した。IIJの発行済み株式総額の10.0%にあたる普通株式1870万7000株を総額512億円で日本電信電話(NTT)から買い付ける。これによりKDDIはNTTとともにIIJの筆頭株主となる。

IIJは世間からは「NTTの関連会社」というイメージで見られていたようだが、なかのひとに話を聞くと、そんな雰囲気は全くない感じがしている。逆にNTTが筆頭株主にいるというのを煙たがっている風にも見える。

IIJにとってみれば、KDDIも筆頭株主となることで、かなりバランスがよくなるのではないだろうか。それにしても驚きなのが、IIJの株式がNTTからKDDIに売られるという点だ。しかも、報道によれば田中プロが間に入っているという。KDDIがIIJの株を欲しがるのは理解できるが、一方でNTTがIIJ株をライバルのKDDIに売り渡してしまうのがイマイチ、理解できなかったりもする。

ここ最近、KDDIの「協調」っぷりが加速している感がある。先日は楽天モバイルに対して、ローミング接続の見直しを実施。楽天モバイルが飲める条件になった模様だ。高橋誠社長は「そんなに貸さないからね」と一言、筆者に語っていたことから、楽天モバイルのローミングが、KDDIと同等のネットワーク品質にならないとされる。あくまで99.9%の人口カバー率で圏外の場所がなくなるということに過ぎないようだ。

KDDIはソフトバンクに対しては「5G JAPAN」として5G基地局のシェアリングでタッグを組んでいる。KDDIはソフトバンクとシェアリングすることでNTTグループに対抗していくかと思いきや、NTTグループが注力しているIOWNのフォーラムに加入してしまった。まさかライバルであるはずの3陣営とうまいこと協調してしまうとは思わなかった。

また、今週、2025年春に高輪ゲートウェイに本社を引っ越すという発表があった。JR東日本が開発を進めるTAKANAWA GETEWAY CITYに本社を移転し、1万2000人の社員の人流データなどを収集し、デジタルツインで活用していく。

KDDIとJR東日本は、かつてUQコミュニケーションズを立ち上げるときには出資もしてもらっているし、アップルがiPhone7でモバイルSuicaに対応するという発表をした際には、なぜかKDDIの田中孝司社長の横にJR東日本の小縣方樹副会長がいたときもあった。

高輪ゲートウェイへの引っ越しはKDDIとJR東日本の仲の良さを改めてアピールした感がある。今後、KDDIがどこかの企業に対して巨額な資本業務提携を仕掛ける際、ひょっとするとJR東日本がサポートするなんてこともあり得るのかも知れない。

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