最近、SNSで大きな話題にもなった飲食店に大打撃を与える客の「無断キャンセル」問題。経済産業省のレポートによれば、年間被害額は2000億円にも上るといい、到底看過できるものではなくなってきています。そのような状況にストップをかけるべく、次々と新サービスが登場しているようです。そんな話題の「飲食業界の救世主」を、ライターの本郷香奈さんがレポートしています。

テクノロジーが飲食店のアナログ流儀を変える

近年、飲食店における無断キャンセル対策が注目されている。インターネット技術の進展で、簡単に飲食店の予約ができるようになった一方、心ない無断キャンセルも増えており、飲食業界に深刻な影響を与えるケースも出ている。業界側も様々な方法で自衛策を講じるほか、そうしたキャンセルを出さない、あるいは出ても最小限に食い止めるような仕組み作りに取り組む動きも出ており、注目されている。

大人数が参加する歓送迎会などの幹事をやったことがある人はわかるだろうが、店を見つけて予約するのは結構な手間である。人数が増えれば増えるほど場所を見つけるのは手間取るし、店の側もリスクを抱えることになるので、なかなか予約を入れてくれない場合があるからだ。

問題なのはNo show(ノーショー)と呼ばれる無断キャンセルである。No showは予約しているにも関わらず、その日時になっても客から店に連絡がなく、あるいは店の連絡を無視して来店しないことをさす。電話などで人とのやり取りを介さなくてもネットで手軽に予約できるようになったことや、訪日外国人客の増加などで確認の不備や行き違いなどで無断キャンセルが起こっているのだ。

こうした事態を国も看過することができず、2018年11月秋、経済産業省の有識者勉強会が「No show 対策レポート」という大真面目な報告書まで出している。内容がすごい。

大学のサークルの飲み会で3,000円のコース50人分の予約を受けたが、当日に一人も来店せず、店には何の連絡もなかった。

個人客から4名で予約が入った。時間をすぎても来店がなかったため、担当者が携帯に連絡をいれたが「もうすぐ着く」という返答だったため席を空けて待ったが、閉店時間になっても来店がなかった。

といった事例がリアルに紹介されている。

あたりまえだが、No showが起きると、店が本来得られる利益が失われるだけでなく、食材費や人件費や光熱費なども損失になる。さらに、No showの被害を見込んで飲食店がメニューの価格に被害額を転嫁している場合もあり、他の客が本来よりも高い料金を払っている場合もあるという。飲食店のみならず、回り回って消費者にも損失を与えているのだ。

報告書によると、No showが飲食業界全体に与えている被害は年間で約2,000億円にも及ぶとしている。さらに通常の予約のうち、1日前、2日前に生じるキャンセルを加えるとその発生率は6%を超え、被害額は1.6兆円におよぶと推計されている。

店としては、キャンセルは困るが、前向きな集客は図りたい。消費者は、大人数の宴会でもスムーズに予約して気持ちよく利用したい。そんな双方のニーズを両立させるサービスがじわじわと人気を集めている。

そのひとつ「ビスポ!」という日本最大規模の即時予約ネットワークが注目されている。ビスポ!は2018年8月にLINE Venturesやサッカー本田圭佑選手の個人ファンドから出資を受けて誕生したシステムだ。

【参考】● ビスポ!

使い方はいたってシンプルで、LINEアカウント上で希望の条件や予約日時、ジャンルなどを飲食店にリクエストすると、予約の希望日時に空席を持っている飲食店だけに通知され、即座に飲食店とユーザーをマッチングしてくれる。最大48人まで予約が可能で、会社の歓送迎会など大人数、団体の予約にも対応できる。複数店舗に仮予約を入れる必要がないため、キャンセル忘れに起因するNo showを避けることができる。

このサービス、スタート当初はユーザーから予約が入った場合に、飲食店に費用を請求するサービスだったが、2月中旬以降は、完全無料となった。この結果、サービスに参加する店舗数が飛躍的に拡大し。都内だけで約1,000店舗に達し、ユーザーも3万人を超えたという。広告や各種プロモーションなどでの収益があるため、無料サービスが可能なビジネスモデルになっている。

操作が簡単で、いまや老若男女問わず利用者の多いLINEだけに、飲食店側には集客に活用でき、メリットが大きい。利用者の側も、LINEのチャット形式で簡単に予約できるというユーザーフレンドリーの仕組みがうけている。

ビスポ!は「2019年内中に全国展開し、2020年には参加店舗1万店、ユーザー数100万人を目指す」としている。今年3月からは実名グルメサービスRettyと提携し、利用者が飲食店に関するレビューを参照できるようにもなった。

一方で、急な仕事や病気、けがなどやむをえない事情によってキャンセルしなければならない場合もある。そうした場合に飲食店側と消費者側の双方にうれしい別のサービスもある。

クレジットカード大手のダイナースクラブ、LINE、レストラン予約・決済代行のポケットコンシェルジュが連携したサービス「ごひいき予約」だ。直前のキャンセルから生じる飲食店の機会ロスを救済する一方、人気店の直前キャンセルを把握して、普段はなかなか予約がとれない人気店に行きたい客のニーズをマッチさせる会員制サービスである。直前キャンセルという突然のピンチを、希望客に周知することで来店機会につなげるというチャンスに変える仕掛けを作り上げた。現在はいわゆる人気店とされる現在約70の店舗が参加している。

飲食業界は日々、多くの人が利用する一方で、集客やキャンセル、店舗評価など基本的な部分をめぐっては、昔ながらの流儀や方法をなかなか変えられないケースも多かった。しかし、IT技術の発展で、そうしたアナログの部分にもテクノロジーを導入することでソリューションを見つけることができるようになっている。飲食店検索で出た上位の店が、必ずしも消費者のニーズにあったものでないことは、多くの人が経験的に感じていることである。

真の消費者ニーズにあった隠れた優良店を見出し、店と客の双方が満足できるような仕組み作りは今後も模索が続きそうだ

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